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それは、とても長い明日
作者:エビ

 夜の高速道路は美しい。

 見果てぬ道を駆け抜け、ヘッドライトで暗闇を切り抜き、涼やかな音を聞く。
 そんな時間が私にはたまらなく美しく思えてならない。これで雨が降っていたならもっと素晴らしいだろう。
 オレンジの明かりの中を潜り抜け、どこまでも走って行く感覚。最初から用意されている道を駆け抜ける感触というのは、不思議と絶対的な安心感を私に与えてくれる。
 どんな事があっても、そうたとえどんな事があっても道を外れる心配はない。安定している道を、誰よりも早く走れるように思える。
 そんな安心感に酔いしれる。私はこの道が好きだった。
 艶やかに磨き上げた車のボンネットが、オレンジの光を反射してなんとも言えないコントラストを生み出している。私はタバコに火をつけた。
 仕事を始めたばかりの頃は、憧れですらあったこの車が、今は月に二台は買えるだろう。それだけの地位も、名誉も、財産も、私は手に入れた。
 仕事は好きだ。世界を股にかける行事を行い、人々の中に経済効果という幸福の渦を巻き起こすことは、私にとってなによりの喜びだ。
 ただ金のために好きでもない仕事をやっている老害とは違う。私はこの仕事が好きであり、それにより満たされる人々が増えていくことが好きなのだ。
 それなのに、満たされる人々は増えていくというのに、私ときたら。
 好きな仕事をして、好きなように生きて、求めた物はほとんど手に入れたというのに満たされない。心が落ち着くのは、こうして夜の高速道路を1人で走っている時だけときた。
 妻も子供もいて、何もかも持っている私が、だ。
 なんとも情けないというか、脆弱と言うか。いったい何がこれほど満たされないと言うのか。
 私は、残念ながら高速道路を走る車とは違う。用意された道をただ高速で走るのではなく、道をそれて、人が通らない方を通って、そうやって上手くやってきた。
 だからなんだろうか、そんな生き方に嫌気がさしているのかもしれない。だから、用意された道を走るこの今が、好きになったのかもしれない。
 私にとっては過ぎた事なのだが……。
 オレンジ色の街頭はひたすら流れていく。私の車もどんどん進んでいく。
 何も起こらない。何も感じないこの時間。タバコを灰皿に乗せると、私は少し、車を加速させた。

 また長い明日が待っている。オレンジ色の、長い長い明日だ。速く進まなければ。どんどん加速しなければ。
 これで雨でも降っていたならもっと素晴らしいだろう。
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