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原発防災見直し 4割の自治体が終わらず
3月13日 17時56分

原発防災見直し 4割の自治体が終わらず
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おととしの原発事故を踏まえて、今月18日をめどに原発から30キロ圏内にある自治体が見直すことになっている地域防災計画についてNHKが尋ねたところ、「見直しが終わらない」と答えたのは、40%に上ることが分かりました。地域防災計画は国の防災指針が前提となっていて、自治体からは、指針の見直しをした原子力規制委員会に対し、作業の遅れや説明の不足を批判する意見が相次ぎました。

NHKは、今月18日をめどに見直すことになっている地域防災計画について、原発から半径30キロ圏内にある道府県と市町村のうち、福島県内の一部を除く149の自治体にアンケート調査を行い、148から回答を得ました。
まず、防災計画の見直しが今月18日までに終わるかどうかを尋ねたところ、「終わる」と答えたのが46%となった一方で、「終わらない」と答えたのが40%に上りました。
このうち、国内で唯一運転中の関西電力の大飯原発を抱える福井県内では、県と市と町の合わせて13の自治体すべてが「終わらない」と回答しました。
「終わらない」理由を各地の自治体に尋ねたところ、「国の防災指針の改定が遅れ、県や関係機関とも調整を図るため間に合わない(福井県おおい町)」、「具体的かつ実践的な計画を盛り込む必要があり、見直しには相当時間を要する(福井県高浜町)」、「国の指針では、住民避難などで従来と大きく異なる仕組みが取り入れられているが、詳細が示されていない(静岡県森町)」と、防災計画の前提となる、国の防災指針の見直しをした規制委員会を批判する意見が相次ぎました。
背景に、規制委員会が先月まとめた指針の見直しが当初の予定より1か月遅れたことがあるほか、規制委員会の説明不足を訴える声もありました。
また、防災計画の中で残された課題について複数回答で尋ねたところ、▽最も多かったのが、「高齢者など要援護者の避難支援」で59%、▽「避難の交通手段」が50%、▽「ヨウ素剤の対応」が45%となりました。
理由や具体的な問題を尋ねたところ、「要援護者は避難先の施設や病院との調整が必要で、1自治体で決められない(長崎県松浦市)」、「町民すべてが移動するための交通手段の確保が難しい(北海道倶知安町)」、「ヨウ素剤の配布や服用の具体的な手順などで未定なものが多い(石川県輪島市)」、といった厳しい現状を訴える意見が相次ぎました。
原子力規制委員会は、防災態勢の整備を、原発の運転再開の大前提としていますが、自治体からは、防災計画の実効性を疑問視する声も少なくなく、今後、国と自治体が協力し、住民を守る視点での防災計画の具体的な検証が求められます。

敦賀市長「国の指針は不明確な部分多い」

防災計画の見直しが「終わらない」と答えた福井県の敦賀市の河瀬一治市長は、「国が示している指針は、安定ヨウ素剤の配布方法や緊急時の国と地方の役割分担など不明確な部分が多く、期限までに実効性ある計画をまとめるのは難しい」と述べ、厳しい現状を訴えました。
そのうえで、「敦賀市には敦賀原発があり、毎年のように原子力事故に備えた防災訓練を行ってきたが、これまで原子力とは無縁の自治体は、計画づくりが大変だ」と述べ、国は地域の実情を理解したうえで明確な指針を示すよう国に求めています。

避難情報伝達が思うように進まず

13日、新たな地域防災計画をまとめた京都府舞鶴市は、万一の原発事故の際に、防災行政無線を使って避難などの情報を伝えることにしていて、原発事故に備えて台数を増やしていますが、思うように進んでいません。
福井県にある高浜原発や大飯原発の30キロ圏にある京都府舞鶴市は、防災行政無線を使って避難などの情報を伝えることにしていますが、これまで原発の5キロ圏内や、河川の洪水対策で重点的に配備してきたため、街の中心部には1つもありませんでした。
このため舞鶴市は、現在、街の中心部の学校などに防災行政無線を新たに39基、設置を進めていて、数はこれまでの2倍に増えますが、それでも9万人近い人口のまだ半分もカバーできません。
舞鶴市は、残る地域でも防災行政無線の台数を増やしたい考えですが、1基の設置にかかるおよそ500万円という財政的な壁が立ちはだかっていて、思うように進んでいません。
舞鶴市の担当者は「防災行政無線を増やすのは莫大な予算がかかるので、広報車とか電話連絡も含めて人手をかけて行っていくしかない」と話しています。

自力で避難できない人が1割

原発事故での避難では、対象となる範囲が半径30キロと広く、多くの人が車での移動を強いられることから、佐賀県伊万里市で住民が独自に調べたところ、車を持たずに自力で避難できない人が1割に上ることが分かりました。
佐賀県の防災計画では、こうした住民は「ほかの住民の車に乗って避難する」としていますが、具体的な支援が決まっておらず、新たな課題となっています。
九州電力玄海原発から25キロの伊万里市大川町では、原発事故の際の避難先がおよそ10キロ離れた武雄市となっていて、多くの人が車での移動を強いられます。
このため、住民が独自に調査したところ、車を持たずに自力で避難できない人が、人口およそ2600人のうち、1割を超えるおよそ280人に上ることが分かりました。
このうち、自力で避難ができないとされた78歳の女性は、ふだんの生活では徒歩や列車で移動し、支障はありませんが、車を持たず頼れる家族もいないため、車での避難ができない状態です。
佐賀県の地域防災計画では、半径30キロ圏内にいる病院や施設などの要援護者は、病院などが市や町と相談して支援の方法を決めますが、そのほかの住民は、「地域にある車で避難する」としています。
このため、車を持たずに自力で避難できない人はほかの住民の車に乗って避難することになりますが、誰が誰を助けるのかといった具体的な支援が決まっておらず、新たな課題となっています。
伊万里市大川町では、要援護者以外の自力で避難できないおよそ280人について、住民たちが個別の支援に向けて具体的なリスト作りを進めています。
佐賀県内の自治体は、玄海原発の30キロ圏内の要援護者をおよそ1300人と想定していますが、自力で避難できない人によって実質的に援護が必要な人が大幅に増える可能性があり、原発事故の避難対策の落とし穴になっています。
佐賀県伊万里市は、「地域で支援を必要とする人を確認していく民生委員にお願いすることになるが、個人情報保護の問題もあり、実態の把握が進んでいない」と話しています。

「完璧でなくても早急に」

原発の30キロ圏内にある自治体のうち40%が、「地域防災計画の見直しが終わらない」と答えたことについて、国の原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「できるだけ早急に作っていただきたい。完璧なものでなくても当面はしかたがないと思う」と述べました。
また防災計画の前提となる国の防災指針について丁寧な説明がないといった自治体からの批判に対しては、「確かに説明が足りないという面もあるかもしれないがどういうところの説明が足りないのか具体的に要請があればそれに対しては丁寧に説明していきたい」と述べました。

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