社説
共通番号法案 疑問と不安がぬぐえぬ(3月13日)
利便性の向上と引き換えに、個人情報漏えいの危険が高まるようでは困る。
赤ちゃんからお年寄りまで国民全員に番号を割り振って、納税や社会保障の情報などを管理する共通番号制度(マイナンバー)法案のことだ。
法案は昨年の国会に提出されたが、政局の混乱で廃案となった。自民、公明、民主の3党協議で微修正され、今国会に再提出された法案は2016年1月の利用開始を見込む。
国民には番号通知カードが配られるが、仮にカードを紛失したり盗まれたりすれば悪用される懸念もある。外部からコンピューターのネットワークに不正侵入されれば、大量の情報漏えいを招きかねない。
18年後半をめどに、医療情報などへの利用拡大も検討するという。だが、個人情報の集積が進めば国家による監視が強まり、プライバシー侵害につながる恐れも増す。
疑問だらけの制度で、国会には慎重の上にも慎重な審議を求めたい。
共通番号は、かつては「国民総背番号」と呼ばれ、1980年以降、たびたび導入論議が起こったが、プライバシー保護の観点などから立ち消えになった。
今回は、民主党政権が消費税増税実施時の低所得者対策の一環で検討を始めた。減税と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」導入のために、所得を正確につかむ必要があるという理由からだった。
だが、自公政権が低所得者対策として現在検討しているのは、生活必需品などを対象にした軽減税率であり、もはや導入しなければならない根拠は乏しい。
政府は共通番号の利点として、複数の省庁が扱っている所得や年金、医療などの個人情報の一括管理で、年金や失業手当などの申請手続きが簡素化するとPRする。
問題は、個人情報の保護だ。法案は独立性の高い委員会の設置を盛り込み、個人情報を扱う行政機関などに不正があった場合、勧告や命令ができ、違反者には刑事罰も科す。
だが、これだけでは第三者の番号を不正使用する「なりすまし犯罪」やハッカー対策には不十分と言わざるを得ない。
共通番号と似た国民IDカード制を導入した英国では、約2500万人分もの情報漏れが発覚し、2010年に同制度を廃止している。
政府が導入を急ぐ背景には社会保障費の不正受給を防ぎ、給付を抑制する狙いがある。
しかし、システムの構築に2千億円以上、毎年度の運用コストも数百億円かかり、費用対効果も疑問だ。国民の納得のいく説明ができない限り、導入は見送るべきだ。
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