ウルトラセブン 序論

 私の幼児期は、『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』は既に再放送世代でした。5円引きブロマイドやソフビなどは既存商品として成熟した市場があり、怪獣図鑑などでの情報も整理されていました。
 その頃の私にとっての『ウルトラセブン』という作品は、「宇宙人が出てきて怪事件を起こし、ウルトラセブンが解決してくれる」という程度の認識でした。しかし、'86年に深夜に泉麻人さんがナビゲーションしていた『ウルトラ倶楽部』という、『ウルトラQ』と『ウルトラセブン』を一挙に2話ずつ再放送してくれる番組と出会ってから、そのテーマの重さに気付いたのでした。しかしそれでも、子どもの頃に味わった、地球に侵略その他の理由で攻めてくる宇宙人とウルトラ警備隊・ウルトラセブンの攻防に、単純にワクワクして見入ってしまいます。

 私が感じる『ウルトラセブン』の魅力は、『ウルトラマン』では描かれきれなかった防衛軍の描写とスーパーメカの活躍です。中でも私は、一般に人気の高い航空戦闘機の「ウルトラホーク」よりも、潜航艇「ハイドランジャー」、地底戦車「マグマライザー」、偵察車両「ポインター」に魅力を感じます。特にハイドランジャーの発進シークエンスと、必ず2艇で行動する描写に、何ともいえないリアル感を感じています。
 これらのメカの色彩設計ですが、「ウルトラホーク1号」から「同3号」までの航空戦闘機、そして「ポインター」は全て、ブルーグレイメタリックで塗装されています。これはウルトラ警備隊のユニフォームの色と呼応していて、戦闘機とそれを操縦するパイロットの一体感が感じられます。一方で、ゲストメカ的な扱いの「ハイドランジャー」「マグマライザー」はダークグリーンを基調としているのが面白いです。ここに何か意図するものがあったのでしょう。
 地球防衛軍極東基地内の描写も秀逸で、『ウルトラマン』では科特隊作戦司令室の外廊下は登場しませんでしたが、この『ウルトラセブン』では何とも近未来的な廊下が登場します。第4話冒頭の描写が秀逸です。

 『ウルトラマン』では各隊員の個性も充分に描かれなかったと感じられます。イデ隊員の科学者としての側面は強調されていましたが、アラシ隊員の射撃の腕前は後期のエピソードまであまり登場しませんでした。(「撃つな!アラシ」という名エピソードがありますが。)その点ではアマギ隊員、ソガ隊員が中心になるエピソードが続出する『ウルトラセブン』の第13話以降は、大人の鑑賞にも堪える名エピソードが多く存在します。私はV3のクラタ隊長が大好きでした。

 怪獣のデザインに関しては、他の番組とは一線を画した『ウルトラマン』の個性的な怪獣をさらに一歩進めた、他の番組(さらに劇場映画)では真似のできないバラエティ豊かな「宇宙怪獣」と「宇宙人」が魅力的です。初期の怪獣・宇宙人と、ウルトラ警備隊のユニフォーム、スーパーメカ、作戦司令室などのデザインは、『ウルトラマン』に引き続き成田亨氏が手掛けました。しかし番組途中で離れることになり、第31話以降は池谷仙克氏が引き継いでいます。造形はほとんどの怪獣・宇宙人は高山良策氏が担当されました。(他は円谷プロの美術部が造形しました)

 他の制作スタッフも、ほとんどが『ウルトラマン』から続いての登板です。円谷一氏、飯島敏宏氏、実相寺昭雄氏らのTBS出向組の監督は途中から他の番組に移ったために、満田かずほ氏、鈴木俊継氏がローテーションの要となり、野長瀬三摩地監督とともに硬質で独特な世界を描ききりました。
 音楽の冬木透氏は弦楽器を効果的に使い、現代音楽の小品とも呼べる印象的なスコアを残しました。『帰ってきたウルトラマン』以降の第2次シリーズも手掛けられ、この『ウルトラセブン』の完成度の高い楽曲を流用されています。

 私は、一般的な評価ほどこの『ウルトラセブン』が特別なものだとは感じていません。この項では、あくまで「懐かしのヒーロー番組」というスタンスで取り上げていきたいと思います。


  監修:円谷英二
  プロデューサー:末安昌美
  特殊技術:高野宏一、的場徹、有川貞昌、大木淳
  美術:岩崎致躬、成田亨、池谷仙克、深田達郎
  撮影:永井仙吉、福沢康道、逢沢譲、佐川和夫、鈴木清、中堀正夫
  照明:新井盛、小林哲也、小林和夫、安藤正則
  機電:倉方茂雄
  光学撮影:中野稔
  怪獣造形:高山良策
  音楽:冬木透

  モロボシ・ダン隊員:森次浩司
  キリヤマ隊長:中山昭二
  フルハシ隊員:石井伊吉
  ソガ隊員:阿知波信介
  アマギ隊員:古谷敏
  友里アンヌ隊員:菱見百合子
  タケナカ参謀:佐原健二
  マナベ参謀:宮川洋一
  ステーションV3クラタ隊長:南廣
  ヤマオカ長官:藤田進
  ウルトラセブン:上西弘次  (声)森次浩司
  ナレーション:浦野光

制作 サブタイトル 放映順 放映日 登場宇宙人・怪獣 脚本 監督
湖のひみつ 昭和42年10月15日 ピット星人
エレキング

ミクラス
金城哲夫 野長瀬三摩地
緑の恐怖 10月8日 ワイアール星人 金城哲夫 野長瀬三摩地
ダーク・ゾーン 11月5日 ペガッサ星人 若槻文三 満田かずほ
マックス号応答せよ 10月22日 ゴドラ星人 山田正弘
金城哲夫
満田かずほ
姿なき挑戦者 10月1日 クール星人
ウィンダム
金城哲夫 円谷一
消された時間 10月29日 ヴィラ星人 菅野昭彦 円谷一
怪しい隣人 10 12月2日 イカルス星人 若槻文三 鈴木俊継
宇宙囚人303 11月12日 キュラソ星人 金城哲夫 鈴木俊継
遊星より愛をこめて 12 12月17日 スペル星人 佐々木守 実相寺昭雄
10 狙われた街 11月19日 メトロン星人 金城哲夫 実相寺昭雄
11 アンドロイド0指令 11月26日 チブル星人
アンドロイド・ゼロワン
上原正三 満田かずほ
12 魔の山へ飛べ 11 12月10日 ワイルド星人
ナース
金城哲夫 満田かずほ
13 V3から来た男 13 12月24日 アイロス星人 市川森一 鈴木俊継
14 闇に光る目 16 昭和43年1月21日 アンノン 藤川桂介 鈴木俊継
15 空間X脱出 18 2月4日 ベル星人
グモンガ
金城哲夫 円谷一
16 地底GO!GO!GO! 17 1月28日 ユートム 上原正三 円谷一
17 ウルトラ警備隊西へ(前編) 14 1月7日 ペダン星人
キングジョー
金城哲夫 満田かずほ
18 ウルトラ警備隊西へ(後編) 15 1月14日 ペダン星人
キングジョー
金城哲夫 満田かずほ
19 プロジェクト・ブルー 19 2月11日 バド星人 南川竜 野長瀬三摩地
20 地震源Xを倒せ 20 2月18日 シャプレー星人
ギラドラス
若槻文三 野長瀬三摩地
21 海底基地を追え 21 2月25日 ミミー星人
アイアンロックス
赤井鬼介 鈴木俊継
22 人間牧場 22 3月3日 ブラコ星人 山浦弘靖 鈴木俊継
23 明日を捜せ 23 3月10日 シャドー星人
ガブラ
南川竜
上原正三
野長瀬三摩地
24 北へ還れ! 24 3月17日 カナン星人
ウィンダム
市川森一 満田かずほ
25 零下140度の対決 25 3月24日 ポール星人
ガンダー
ミクラス
金城哲夫 満田かずほ
26 超兵器R1号 26 3月31日 ギエロン星獣 若槻文三 鈴木俊継
27 サイボーグ作戦 27 4月7日 ボーグ星人 藤川桂介 鈴木俊継
28 700キロを突っ走れ! 28 4月14日 キル星人
恐竜戦車
上原正三 満田かずほ
29 ひとりぼっちの地球人 29 4月21日 プロテ星人 市川森一 満田かずほ
30 栄光は誰れのために 30 4月28日 プラチク星人 藤川桂介 鈴木俊継
31 悪魔の住む花 31 5月5日 ダリー 上原正三 鈴木俊継
32 散歩する惑星 32 5月12日 リッガー
アギラ
原案
 虎見邦男
上原正三
山田正弘
野長瀬三摩地
33 必殺の0.1秒 36 6月9日 ペガ星人 山浦弘靖 野長瀬三摩地
34 侵略する死者たち 33 5月19日 上原正三 円谷一
35 蒸発都市 34 5月26日 ダンカン 金城哲夫 円谷一
36 月世界の戦慄 35 6月2日 ザンパ星人
ペテロ
市川森一 鈴木俊継
37 盗まれたウルトラ・アイ 37 6月16日 マゼラン星人マヤ 市川森一 鈴木俊継
38 セブン暗殺計画(前篇) 39 6月30日 ガッツ星人
アロン
ウィンダム
藤川桂介 飯島敏宏
39 セブン暗殺計画(後編) 40 7月7日 ガッツ星人 藤川桂介 飯島敏宏
40 勇気ある戦い 38 6月23日 バンダ星人
クレージーゴン
佐々木守 飯島敏宏
41 ノンマルトの使者 42 7月21日 ノンマルト
ガイロス
金城哲夫 満田かずほ
42 水中からの挑戦 41 7月14日 テペト星人
テペト
若槻文三 満田かずほ
43 第四惑星の悪夢 43 7月28日 ロボット長官 川崎高
上原正三
実相寺昭雄
44 円盤が来た 45 8月11日 ペロリンガ星人 川崎高
上原正三
実相寺昭雄
45 恐怖の超猿人 44 8月4日 ゴーロン星人 上原正三
市川森一
鈴木俊継
46 ダン対セブンの決闘 46 8月18日 サロメ星人
ニセ・ウルトラセブン
アギラ
上原正三
市川森一
鈴木俊継
47 あなたはだあれ? 47 8月25日 フック星人 上原正三 安藤達己
48 史上最大の侵略(前編) 48 9月1日 ゴース星人
パンドン
金城哲夫 満田かずほ
49 史上最大の侵略(後編) 49 9月9日 ゴース星人
パンドン
金城哲夫 満田かずほ