何処に消えた５０億円!?

「マルチ商法のネットワークを使い未公開株を販売!!」――“鉄板”の構図を持つ未公開株詐欺事件として、本誌がいち早く配信（２０１２年２月７日、同２月２５日再掲）した「フューチャーズプラン」（本社・福岡市中央区）を舞台にした詐欺騒動が、ようやく事件化の様相を見せつつある。
　
　この事件の“主演女優”は、元幼稚園教諭で、巧みな話術に美貌を兼ね備え、本拠地福岡県のテレビ局にも出演、「屋上緑化のベンチャー企業・フューチャーズプランを成功させた女性事業家」と持ち上げられていたこともある井上加奈子女史(45)である。
　
　彼女の相方を務める“助演男優”は、証券界にあってここ数年、「資金力豊かな増資マフィア」として名を馳せていた「コスモ証券」出身の小谷昭徳氏(46)。かつて「マスター証券」（旧すみれ証券）の社長を務めていた同氏は「インスパイアー」、「NESTAGE」、「L’ALBAホールディングス（旧・LCAホールディングス）」といった怪しい著名銘柄を扱い、柴野多伊三元代議士の自殺につながった「日本中油」にも関与していた。
　
　タッグを組んでいたこの２人は、今、真っ向から対立している。
　
　井上女史は「集金や運用はコンサルタント会社（☛小谷氏が代表を務める『グランツインベストメントジャパン』）に任せており、資金は同社が使い切った。私も被害者だ」と言い、一方の小谷氏は「運用などをアドバイスしたのは事実だが、フューチャーズプラン社の井上社長が、出身金の大半を自らの関連口座に移し、流用した」と、反論する。
　
「フューチャーズプラン」は、前社名の「ウィルコーポレーション」時代の２００６年ごろから「株式上場のための出資金」を名目に約４０００人から約４０億円を集めた。その後、「フューチャーズプラン」が事業を承継、別の名目で資金調達した分もあり、最終的な資金調達総額は５０億円を超えると見られている。
　
　だが、一向に上場のメドは立たず、「株式交換によるアメリカ上場」など“迷走”を重ね、全国の被害者が「詐欺だ！」と、騒ぎ出したことで、井上女史は２０１１年１１月９日から１週間をかけて全国を回り、「投資家説明会」を行ったが、まるで説得力はなく、各地裁への民事提訴、都道府県警への刑事告訴の相談が相次いだ。
　
　その結果が今年に入って出始めている。
　
　福岡地裁は、「株式を上場すると、３０億円の出資金が１５００億円にもなる」と説明され、子供と合わせ約１１００万円の出資をした男性の訴えを認め、今年２月２６日、「実態のない未公開株の出資を勧誘した」として請求通り、約１１００万円の支払いを命じた。
　
　だが、おそらく井上女史は支払わない。「払うカネがない」というのがその理由で、そもそも争う気持ちさえなくなっている。
　
　３月５日には、熊本地裁で原告１２名の損害賠償請求訴訟の第１回公判が行われたが、井上女史と九州地区の販売パートナーとして訴えられている男性は、ともに出席せず、答弁書も提出しなかった。したがってこれで結審、次回は判決で、支払いが命じられる。
　
　一時は、東京・港区に本社を置いていたことがあるものの「フューチャーズプラン」の活動は九州が中心で被害者も九州に多い。
　
　既に九州地区ではマスコミの追及も始まっており、『朝日新聞』は１月２日、「少なくとも２０００人以上から総額約１６億円を集めており、出資者の一部は詐欺容疑で警察に被害届を出すことを検討」と、社会面トップで報じ、全国ニュースとしても流された。
　
　また、テレビ局などの報道も始まっており、熊本の地元テレビ局の取材に応じた井上女史は、屋上緑化事業を名目に出資金を集めたことは認めたものの、そのお金はコンサルタント会社などが持って行き、「もうありません」と、開き直っている。
　
　小谷氏は同女史の証言を否定しているが、痕跡は残されており、「インスパイアー」が０９年６月８日に発行した新株予約権を引き受けた「グランツ２号投資事業有限責任組合」の新株予約権の一部は、同年６月２６日、「フューチャーズプラン」に譲渡されている。
　
　結局、この手の詐欺事件は“仕掛け人”に「使い果たしました」と開き直られたら、それで終了である。カネは戻って来ず、恨みは刑事事件にして晴らすしかない。
　
　福岡県警は「フューチャーズプランは、投資は自己責任の域を超えて悪質だ」として、捜査を開始したが、小谷氏には「マスター」、「すみれ」両証券時代の“芳しからざる実績”もあり、今後の捜査の進展具合によっては、単なる未公開株詐欺だけではなく、上場企業までも巻き込むスキャンダルに発展する可能性もある。【鯛】