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【なつかしの健康法列伝：全身康】

　バブルがやってくるまだまだ前の１９７０年代中盤、１粒１万円もする漢方薬が静かなブームになった。台湾の著名な漢方研究家が作りだしたというその薬の名は「全身康」。そもそも、この研究家の生まれた村には代々伝わる秘薬があり、「８０歳の老人が後妻をもらって子供をつくった」という逸話があるほど精力絶倫の人だらけだったとか。

　その秘薬を元に１０年かけて開発された全身康は、全身の臓器の重要な働きをつかさどる「腎臓」に働きかけ、体力・精力ともに「１０歳は若返る」とされた。しかし、原料については一切秘密。「世界５～６か国から集めた天然食品３６種を原料とし、漢方の独特な製法である“月花”を利用して作り上げた」とだけ説明された。これだけならほとんど売れなかっただろうが、キックボクシングの元チャンピオンなど有名人が「効果があった」とうたったため、一気に火がついた。

　しかし、当時から医療関係者は「台湾に伝わるこの手の薬は精神的なものが大きい。向こうには『若い女の入った後の風呂に入ると、健康にいい』という言葉もあり、同様の自己暗示効果ではないか」と指摘していた。

　今では、不老不死どころか、この薬自体が“なくなって”しまったのは言うまでもない。