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真珠の街・愛媛県宇和島市では、真珠を育てる母貝・アコヤ貝の貝殻の処理に悩まされている。一部は肥料になったり、ボタンの材料として韓国に買い取られたりしているが、この地域だけで、年間1千トンもの廃棄物となっている。
そこで、土居真珠の3代目、土居一徳(38)は、アコヤ貝を使って「宇和島パール」のブランド力を生かした商品を作れないか、と考えてきた。
そんななか、土居が目をつけたのは、アコヤ貝の内側に育つ真珠層に含まれる炭酸カルシウムとたんぱく質だった。美肌効果があると知り、貝を粉状にした「パールパウダー」をつくってみた。オイルやクリームと一緒に肌にすり込んではどうかと、知り合いのエステサロンに提案したり、化粧品の素材として化粧品会社に売り込んだり。土居や地元の美容業者らとつくる企業組合で化粧水やせっけん、クレンジングジェルなどを開発し、化粧品ブランド「花真珠」を立ち上げた。販路は着実に広がっている。
パールパウダーをつくるには、まず、専用のと石で岩のようにゴツゴツした部分を取り除き、真珠層だけ残す。機械を使いながらの手作業。1日1キロ分、100枚ほどしか作れないという。
その貝削りを担うのは、ひとりの女性だ。宮本春喜(65)。50年間、真珠養殖の仕事をしてきたが、4年前に土居から請われて、貝削りの専属となった。
貝を削るのは、貝を海から引き上げた冬の時期だけ。朝8時、機械の前に腰を下ろす。海辺に立つ工場は外と変わらないほど冷え込む。下着を重ね、ジャンパーを着込み、ストーブをたく。
手のひらほどのアコヤ貝をゴム手袋をした手でつかみ、洗面器に張った水につけながら貝の表面を電動のヤスリに当てる。細かい粉が舞うため、マスクは3重。寒さに加え、貝を削るときの焼けるような臭いが漂うなか、単調な作業を夕方4時まで黙々と続ける。帰るころには全身、粉まみれだ。
「でも、嫌いじゃないですよ」
宮本はこともなげに言う。モチベーションを支えているのは何か。
「これが、世の女性を美しくすると思うと、張り合いもあるの」
その宮本だけがもつ「貝削り」の技術は「化粧品」につづき、「リパール・プロジェクト」のアクセサリーにも生きることになった。(敬称略=つづく)
俳優、映画監督の伊勢谷友介が09年に株式会社リバースプロジェクトを設立。東京芸術大学の同級生らとともに、デザインで、社会的に利用価値が低いとされているものに新たな命を吹き込み、よみがえらせる「再生プロジェクト」を展開している。原発事故で見送られた卒業式を飯舘村の子どもたちにプレゼントするなど、社会貢献につながる「元気玉プロジェクト」なども活動している。
その正体は…卵の下部に磁石が内蔵された卵型のクリップホルダー
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