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高橋、浅田らがソチの前哨戦に挑む! フィギュア世界選手権の見所、全紹介。

Number Web 3月13日(水)11時31分配信

 3月13日から、カナダのオンタリオ州ロンドンで2013年世界選手権が開催される。五輪がない年にはもっとも重要であるこの大会で、いよいよ役者が出揃うことになった。ソチ五輪の出場枠がかかっているこの大会に向け、すべてのトップ選手は万全に調整をして挑んでくるに違いない。

 日本は男女ともに、余裕で3枠を保持できると予想されるが、きっとレベルの高い白熱戦になることだろう。

■地元の盛大な応援が、現王者パトリック・チャンの後押しを!

 男子は、現タイトル保持者のパトリック・チャンが、高橋大輔、羽生結弦、ハビエル・フェルナンデスらの挑戦を受けてたつことになる。

 ロンドンはチャンの育ったトロントから車でわずか2時間の距離。さぞかし盛大な応援に囲まれることになるだろう。シーズン前半を通し、特にGPファイナルではかなり不調だったチャンだが、今後トレーニングの本拠地にすることも考えているというデトロイトで調整も終え、今では4回転も絶好調と聞く。今シーズンはまだ彼らしい演技を見せていないとはいえ、本来実力があるチャンだけにロンドンでは本領を発揮するのではないだろうか。

■四大陸での屈辱を晴らしたい高橋大輔。

 その意味では、大阪で開催された四大陸では不調でまさかの7位に終った高橋大輔も同じことが言える。

 彼ほどの経験と実力がある選手なら、この大会に向けてどう調整していくか、コーチ勢と緻密に計画を立ててやってきたに違いない。一度悔しい思いをしたことが、彼にとって新たなモチベーションになったはずだし、作り直したSP「月光ソナタ」も滑り込んで仕上げてきたことだろう。

 手痛い経験を経ては、さらに一回り成長して不死鳥のように戻ってくるというのをこれまでも何度も繰り返してきた彼だけに、ロンドンでも必ず高橋大輔らしい演技を見せてくれるだろう。

■羽生結弦とJ・フェルナンデスが今大会有利な点とは?

 羽生結弦にとっては、昨年の3位以上の結果を狙う新たな挑戦の場となる。

 今シーズンSPで歴代最高点を出し全日本タイトルも手にした彼は、昨年のニース世界選手権で3位に入賞した当時より一回りも二回りもスケールの大きな選手に成長した。その若さと才能のすべてをぶつけてくるに違いない。

 彼と同じくブライアン・オーサーの元でトレーニングするハビエル・フェルナンデスも忘れてはいけない。

 ザグレブの欧州選手権ではフリーで4回転を3度成功させて、史上3番目に高いスコアを手にした。普段の練習から羽生と刺激しあい切磋琢磨してきている彼が、ロンドンでどこまで実力を発揮できるかが見ものである。

 羽生、フェルナンデスともに現在トロントでトレーニングをしているだけに、移動の体の負担もなく、地元の応援も後押ししてくれることだろう。

■その他……脇役とは言い切れない実力派揃いの注目選手たち。

 また無良崇人、フランスのフローラン・アモディオ、ブライアン・ジュベール、チェコのミハル・ブレジナ、そして米国の新チャンピオン、マックス・アーロンらも、上位に食い込むことを狙って全力を尽くしてくるに違いない。

 四大陸で予想外の優勝を果たして波にのっているケビン・レイノルズも、目が離せない選手である。

 さらにロシアの若手、17歳のマキシム・コフトゥンがトップ10位に食い込んでロシア男子に五輪2枠をもたらすことができるかどうかにも注目したい。

■3度目の世界女王を狙う浅田真央。

 一方女子は、さらにエキサイティングな戦いが予想される。

 浅田真央、欧州チャンピオンのカロリナ・コストナー、そして2年ぶりに復帰してくるキム・ヨナの3人が、今シーズン初めて顔を合わせることになるからだ。

 四大陸選手権では、今シーズン初めて試合で3アクセルに挑戦し、SPでは完璧に決めた浅田真央。総合205.45という今季の女子でもっとも高いスコアを手にしたが、あれからさらに技術、表現ともに完成度を高めてきていることだろう。今シーズンのプログラムはSP、フリーともに評価が高く、彼女がロンドンで本来の実力を出し切ったなら、3度目の世界タイトルを手にすることも十分可能だ。

■メダル候補としてのC・コストナー、そしてキム・ヨナ。

 現世界チャンピオンであるカロリナ・コストナーもSP、フリーともに素晴らしいプログラムを揃えてきた。

 GPシリーズこそ休んだものの、欧州選手権、その後また小規模な国際試合に出てしっかり整えてきている。ジャンプの難易度はまだそこまで詰め込んだ内容ではないものの、スケールの大きな美しいスケーティングが何より武器の彼女。ノーミスで滑ったら、ジャッジもさぞ高い点数を出すことが予想される。

 2年ぶりに世界選手権に出場するキム・ヨナは、本大会のダークホースになる。

 12月に出た国際大会の映像を見ると、特にフリー後半ではミスが目立ち、まだ試合に向けての仕上がりができていない印象だった。あれから国際試合には出ていない彼女が、どこまで調整をしてきているのかは、現地に入ってみないとわからない。

 もっともあの男子並みの3+3は健在であり、実力も経験もあるだけに、メダル争いに加わってくることは間違いない。

■鈴木明子らその他のメダル候補選手たちの現状は?

 さらに今シーズン、試合ごとに演技の質を上げてきている鈴木明子も2年連続の表彰台を狙う立場にいる。

 スケーティングに伸びが加わり、5コンポーネンツの点もぐっと伸びるようになった。ベテランながら年々着実に進化していく彼女が3度目の世界選手権でどのような演技を見せてくれるか、楽しみである。

 全米チャンピオンのアシュリー・ワグナーも、忘れてはならない。

 GPファイナルではフリーで2度転倒し、左の脚の付け根を傷めた。全米選手権ではタイトルは守ったが決してベストな演技ではなかった。それだけに今はモチベーションを高めて、万全の態勢で初の世界メダルに挑戦してくることだろう。

■ソチ五輪へ向けて、注目すべき各国若手のホープたち。

 こうしたベテラン勢たちに、今シーズン初出場の若手たちがどこまで追い迫っていくだろうか。

 ロシアのアデリナ・ソトニコワ、エリザベータ・トゥクタミシェワ、米国のグレイシー・ゴールド、そしてカナダの新星、ケイトリン・オズモンドらはいずれも今シーズンがシニア世界選手権に初挑戦のティーンエイジャーたちである。

 特にロシアの2人は欧州選手権で2位、3位に入賞し、着実にシニアでのトップスケーターの地位を確保しつつある。まだ演技全体が安定しないが、ゴールドのジャンプの高さ、スピンの巧さにも要注目。すべてノーミスで滑ったらある日突然表彰台に立つことも可能な逸材だ。

 こうして新旧の強豪たちが揃った中で、昨年は5位だった村上佳菜子がどのような戦いぶりを見せてくれるのかも楽しみである。

(「フィギュアスケート、氷上の華」田村明子 = 文)

最終更新:3月13日(水)11時31分

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