吉井和哉×美輪明宏
紫の記念日
'95 B:PASS
21歳の時に美輪明宏の自伝『紫の履歴書』を読み、その生き方と考え方に絶大な感銘を受けたというロビン。
雑誌の対談、ありましたんで、「毛皮のマリー」行かれる方も多いかと思うので、アップしてみました。
でも、長いからちょっと抜粋です♪

吉井「僕、“26歳で死ぬ”って言われたことがあるんです、昔・・・」
美輪「どういうこと?」
吉井「子供の頃、家にハンコ占いがやてきたんですよ。“あなたの姓名判断をしますから、縁起のいいハンコを買いなさい”
     っていう、あの胡散臭いやつが。で、どうせインチキだろうと思って話を聞いてたら、“あなたのお父さんは26歳で
     亡くなってますねって。当てられちゃったんですよ。しかも“あなたも26歳で亡くなります。”なんて言うもんだから。
     子供心に、妙な気持ちになっちゃいましてね。それ以来、そのことがずうっと頭のかたすみにひっかかってて・・・。
     いざ26歳を迎える前になって、もの凄く恐くなっちゃったんですよ。3年前の夏だったんですけど。で、丁度その頃、
     テレビの霊媒番組に出る機会があったんで、霊媒師の人に見てもらったんですね。そうしたら、僕のおばあちゃんが出て
     きて、“あなたは吉井家最後の男だから、私たちが守るから大丈夫よ”って言われて。それでちょっとホっとしたんですけど・・・・」
美輪「不思議ねぇ・・・。今、お話をうかがいながらあなたを見てたんだけど。大仏様がついてる人って、初めて」
吉井「えっ!?大仏様?」
美輪「えぇ。普通は、お釈迦様とか薬師如来とか・・・。まぁ、いっぱいあるんだけど。あなたの場合は、大日如来。いわゆる
      大仏様がついてるの。奈良の大仏とか、あぁいう感じ・・・。きっと、何か御縁があるんでしょうね」
吉井「へぇ、そうなんですか・・・。で、実はその時期に、いくつか因縁めいた想いが重なって・・・。たとえば、それこそ
     美輪さんの影響で、その頃女装して歌ってたんですけど・・・」 
美輪「完全な女装?それともユニ・セックス?」
吉井「最初はユニ・セックスだったんだけど、だんだんその女性になりきろうと思うようになっていって・・・。最終的に、
     そこで僕が演じてる女性は実は自分のおばあちゃんなんじゃないかって思い始めちゃったんです」 
美輪「それとも、あなた自身の前世だったかもしれないわね」
吉井「あぁ、そうですね・・・。実はそういう血筋みたいなことも、女装してる時に凄く感じちゃったんですよ」
美輪「血筋っていうと?」
吉井「父親が、チョンマゲ役者の旅芸人だったんです。子供の頃は、それが嫌で・・・。ロックを始めた頃も、なんで俺の父親は
     あんなことをやってたんだろうって。凄いコンプレックスに感じてたんだけど。でも今になって考えると、それが逆に
     ありがたかったんですよね。昔から、なぜかドーランの匂いのするものに惹かれたり、かぶくことに興味を持ったり・・・。
     すべて、父親から受け継いでるものなんですよ。今やってるロックも、結局そういう形のものに落着いちゃったし」  
美輪「お父さんの持ってたものが、自然とあなたの細胞になってたのね」
吉井「ええ。で、そのひょっとしたら自分のおばぁちゃんじゃないかと思った女性に、僕はマリーっていう名前をつけて、
      一つの物語を作ったんですよ。戦時中に何かの理由で引き離されてしまった、ジャガーという兵士と、マリーさんのラヴ・
      ロマンス。太平洋戦争で戦死したジャガーの魂が現代にタイムスリップして、彼は音楽をやってる。で、結末としては、
      ジャガーとマリーは1994年のクリスマスに出会って、また二人であの世に行くんだけど。実は、二人は同一人物だった
      という・・・。そんなストーリーのアルバムを作って、ライヴをやったりとかしてたんです」
美輪「おもしろい話ね」
吉井「ありがとうございます。でもそういう、男であるとか女であるとかっていうものを超えた発想が持てたのも、もとを正せば
     『紫の履歴書』に出会ったおかげなんですよ」
                                                          (中略)
美輪「吉井さんきっと、女装したから逃れられたのかもしれないわね。“26歳で死ぬ”っていう厄から」
吉井「えっ!?女装でですか?」
美輪「たとえば、よく小さい時にね。男の子に女の子の振り袖を着せて、女の子として育てるっていう風習があったの。そうやって
      女装させると、魔から取られないっていう。だから今の話を聞いてると、吉井さんもその時にね、吉井さん自身じゃなくなった
      わけだから。マリーさんになっちゃったわけでしょ。つまり、その時に吉井さんは一回死んじゃったの。だから魔が取りに
      来ても、吉井さんはもういないよーって。きっと自分でも知らないうちに、魔から命を逃れるために、そういう手段をとって
      たんじゃないかしら」
吉井「確かに、凄く衝動的だったんですよね。なんで俺、こんな帽子かぶってドレス着てるんだろうって・・・」
美輪「それはだから、あなたのおばあちゃんとか血筋とかじゃなくてね。あなた自身の前世が、その女性に生まれ変わってたのよ。
      もしかしたら吉井さん、前世でフランスの娼婦だったこともあったかもしれないわね」
吉井「えーっ!?娼婦ですか!?(笑)」
美輪「マリーっていうのは、フランス人の名前でしょ。娼婦にも多い名前よ。だから、その前世のマリーの物語を、吉井さん、
      自分で知らないうちに作品にしたのかもしれないわね」
吉井「それって、実はたまに・・・。一瞬ふと思うことがあるんです。でも、そういうことって実際あるものなんですかねぇ・・・。」
美輪「もちろん、あるわよ。それと、あなたに女装をさせたのは・・・。もしかしたら、お父さんが守ってくれてるのかもしれないわね」
吉井「そういえば、僕は中学生になるまで、父親の仏壇に手を合わせることをしなかったんですよ。ただ、毎年8月になるとけがを
      するんで・・・。それも、自分が転落したり、何かが落下してきてっていうケガばっかり。で、父親も8月に死んでるし・・・。
      だから、26歳になる前の夏が恐かったんだけど・・・。ちょっと手くらい合わせてみようかなって思って。そうしたら、だんだん
      ケガするようなこともなくなってきたんですね。まぁそういう話って、信じない人は信じないかもしれないけど・・・。僕は、
      けっこう信じちゃう方なんですよ」
美輪「信じてる方が、本当は進んでるのよ。なぜ、年寄りの人間が信心深くなるかわかる?世の中がわかってきて見えてきて、
      理解できるようになってくるからなの。でも、若いうちはまだモノを知らないから、そういう人たちのことをバカにしちゃう
      でしょ。だけど、バカにする人たちの方が、実は愚かでバカなのよ」
                                   (中略)
吉井「美輪さんを見てて凄いなって思うのは、いつの時代も率先して新しいことをやってこられてるでしょ。終戦直後だっていうのに
     髪の毛を紫色に染めて町中歩いちゃったり。昭和30年代には、もう女装しちゃってたし。自分で作詞・作曲して歌うっていう
     スタイルも、日本では美輪さんが最初ですよね。その感覚というか、勇気みたいなものはどっから来るのかなって思うんですけど」
美輪「元祖が好きなだけなのよ(笑)。だからデヴィッド・ボウイやボーイ・ジョージがお化粧して出て来た時も、な〜んにも
      驚かなかったわ。アンタたち、もう古いわよって(笑)」
吉井「やっぱり、常に意識の先端みたいなものを感じ取ってるわけですか?」
美輪「いいえ、逆よ。私、新しいことをやろうなんて思ったことないの。っていうのはねぇ、新しいものなんて、もうどこにも
      ないのよ。1920年〜1950年の間に、すでに全部出しつくしちゃてるから。」
                                   (中略)
吉井「美輪さんよく、“ロックは嫌いだ、ロックを聴くとバカになる”っておっしゃいますけど・・・」
美輪「そうね。でも、ロック全部嫌いなわけじゃないのよ。たとえば、ビートルズは好きだし。彼らの音楽はバロックが基盤に
      なってるでしょ。あの人たちの前世は、もしかしたら15〜16世紀の吟遊詩人じゃないかしら。ヘア・スタイルも、あの時代だしね。
      あと、聖飢魔Uなんかも聴けるのよ。いつかテレビでしゃべってるのを観てたら、デーモンさんもクラシックをやって 
      たんですってね。ただ、ほら、よくあるでしょ。ヒーッって叫んでるだけみたいなやつ。あぁいうのは、ダメ。あんな音楽は
      耳からウンコ食べてるみたいなもんだって、よく言ったのよ(笑)。でも、そのくせなぜか、ロックやってる人のファンが
      多いのよね。だから、ロックの割悪口ばっかり言ってると申し訳ないんだけど(笑)」
吉井「イエロー・モンキーの音楽は、どうでした・・・?」
美輪「吉井さんの声がいいわ。男っぽい、ちょっとしゃがれた声で。ロックを歌うんなら、やっぱり吉井さんみたいな声がいいわね。
      変な外人かぶれの巻き舌にもなってないし。私、あれをマジでやられちゃうのも嫌なのよ。サザンみたいに、サウンドの一部
      になっちゃってるんならいいんだけど」
吉井「よかったー。それを聞いて、ちょっと安心しました(笑)」
凄いですよね、美輪さん。私はまだ『紫の履歴書』読み終わってないんですけど、
これからきちんと読もうかと思ってます。



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