東日本大震災2年:福島第1原発事故 福島県立高 避難長期化で生徒減 サテライト校、岐路に
毎日新聞 2013年03月13日 東京朝刊
サテライト校設置の目的はこの二つが大きな柱だ。事故直後の11年度は最大で10校が23カ所に設置、在籍予定だった10校の計約3400人のうち転校希望を除く約2000人が学んだ。2年目の12年度は避難区域解除で2校が本来の校舎に戻り、一部は集約され8校9カ所になった。
背景には学習環境上の制約がある。設備不足で部活動や学校行事を自由にできない上、手狭な間借りのため同時に一つの教室で2学級の授業をした時期もあった。
長引く避難が拍車をかける。避難先の暮らしになじみ、最寄りの高校に進む生徒が増えている。特に14年度の新入生は事故当時、小学生。「当時中学生だった子とは古里への思い入れが違う」と県高校教育課はみており、サテライト校を選ぶ理由はますます薄れる。
「地元」の生徒がいなくなった例もある。東西に広い浪江町西部にあった浪江高の分校の津島校は11年5月、西へ約30キロの二本松市の仮設教室に移った。その前月に入学した今の2年生は11人中7人が地元中学出身だったが、12年入学の1年生15人ではゼロ。事故前は約8割を占めた地元の生徒が集まらず、分校の存在意義が失われつつある。
代わって増えたのが同市など県北部地方の生徒。また、特別支援学級からの入学者も2割程度に増え、生徒間の学力差が広がるなど校内の雰囲気も変わった。3部屋だけの仮設校舎、8人しかいない教員では個別指導にも限りがある。古川直樹分校長は「学校がここ(二本松市)にある以上、入学したいという生徒は受け入れるしかない。浪江に戻る日まで、空白の期間はつくりたくない」と話す。
一方で、サテライト校ならではの成果も。浪江高は、避難で急激に進む地域の高齢化に対応したキャリア教育に力を入れ、津島校を含め26人がホームヘルパー2級の資格を取得。同課は「細かい指導で、進路希望達成率が上がった実感もある」と話す。
◇急造「校舎」「寄宿舎」に不備 6畳に2人で生活
サテライト校の「校舎」や、通学が難しい生徒のための「寄宿舎」は急ごしらえだけに施設の不備もあった。
双葉、双葉翔陽、富岡の3高校が集約された、いわき市の施設では当初、上水道と下水道の配管が間違ってつながれ、蛇口をひねると下水が出てきた。「子供たちが気の毒だった」。3校の約40人が暮らす寄宿舎の管理人の一人で、双葉高PTA会長の小野田浩宗さん(51)は振り返る。