焦点:北朝鮮が挑発する「核攻撃」、歴史が語る不吉な前兆

2013年 03月 8日 17:23 JST
 
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[ワシントン 7日 ロイター] 孤立を深める北朝鮮が外部に向かって「血の凍るような」軍事的脅威を発することは珍しくなく、世界はそうしたメッセージを「大げさなレトリック」としてまともに取り合わないようになっている。しかし、北朝鮮が時として何らかの行動に移すことも歴史は物語っている。

北朝鮮外務省は7日、米国に対する「核兵器での先制攻撃」にまで踏み込んだが、これについても専門家の間では、まだ技術的には不可能であり、実施できたとしても自殺行為だとの考えが支配的だ。米国務省のヌランド報道官は「こういった極端な言葉遣いは、残念ながら、北朝鮮に関しては珍しいことではない」とコメント。米国は北朝鮮のいかなる攻撃からも、同盟国である日本と韓国を防衛できると付け加えた。

今回の北朝鮮の「挑発」は、国連安全保障理事会が3回目の核実験を強行した同国に対する制裁決議を採択する数時間前に出された。

北朝鮮が譲歩の姿勢を見せてきた場合に関して言えば、彼らの言葉を額面通りに受け取るのは今や不可能に近い。朝鮮半島の非核化をめぐる過去20年の外交交渉では、約束や合意は何度も反故(ほご)にされ、北朝鮮は着実に核兵器開発を進めてきた。2000年に歴史的な南北共同宣言が締結された後には、韓国から北朝鮮に多額の支援が行われたが、その見返りとして韓国が得たものはほとんどない。

一方、北朝鮮からの軍事的警告に関して言えば、何らかの行動が伴う「実績」がある。2006年と2009年、そして今年2月の核実験は、国際社会が強く自制が求めたにもかかわらず実施した。過去2回の核実験は、国連安保理の制裁を無視する格好で行われたものだ。

<何らかの行動の前兆か>

米中央情報局(CIA)で北朝鮮担当分析官だったブルース・クリングナー氏は、北朝鮮が朝鮮中央通信社(KCNA)を通じてたびたび繰り返す軍事的警告について、「大言壮語であり、差し迫った武力攻撃を示唆するが、結局それは起きていない」と述べる。

韓国の国民や金融市場は、ソウルを「火の海にする」という北朝鮮の決まり文句を受け流すことにずいぶん前から慣れている。

7日の「核兵器による先制攻撃」についても、専門家や米当局者の間では、韓国や米国、そして中国を威嚇することが目的だとの見方で共通する。

グリン・デービース米政府特別代表(北朝鮮担当)は上院公聴会で、「国際社会が結束を強めて圧力をかけているという事実に対する北朝鮮の典型的反応という部分が大きい」と述べた。

また、アジア協会のマット・シュトゥンプ氏は、もし北朝鮮の目的が米国を核交渉のテーブルに復帰させることだとすれば、その狙いは失敗だと指摘。「一連の危機を通じ、米国、韓国、日本、中国の見解がどれほど変わったかを北朝鮮は見過ごしている」とし、「過去には有効な戦略だったかもしれないが、北朝鮮が真の変化にコミットしていることを見せない限り、(米国などに)交渉への意欲はほとんどない」と語った。

米議会調査部は、先月の地下核実験後に発表した報告書で、北朝鮮が少なくとも核兵器6個分のプルトニウムを保有していると推測されるが、弾頭の小型化なしに米国への核ミサイル攻撃は不可能だと結論づけている。

ただ、前出のクリングナー氏は、「北朝鮮の脅しを簡単に排除することはできない。実行に移されることもあるからだ」と警鐘を鳴らす。

同氏はその例として、2010年の延坪島砲撃事件と韓国哨戒艦沈没事件を挙げる。北朝鮮は哨戒艦沈没への関与を否定しているが、両事件の前には韓国の李明博政権(当時)を強く非難し、攻撃も示唆していた。

現在は米ヘリテージ財団に所属するクリングナー氏は「北朝鮮の新たな脅しは、過去の多くの場合そうだったように今回も実行に移されないで終わるのか、それとも、これから起こす行動の前兆だろうか。常に難しい問題だ」と語っている。

(原文執筆:Paul Eckert、翻訳:宮井伸明、編集:梅川崇)

 
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