双葉町職員:12日間「放射能まみれ」…警戒区域の捜索

毎日新聞 2013年03月13日 02時31分(最終更新 03月13日 08時00分)

ある職員の足取り
ある職員の足取り

 福島県双葉町の職員3人が警戒区域での行方不明者捜索に立ち会った際、不十分な装備のまま線量計も装着せず、被ばく線量の記録もない状態に置かれていた。11年4〜5月に12日間にわたり警戒区域で作業した男性職員(41)が詳細を語った。【袴田貴行】

 男性職員は東日本大震災から約1カ月後の4月19日、上司から「行方不明者の捜索が始まるので、とりあえず行ってくれ」と言われ、同21日に役場機能が避難していた埼玉県加須市を公用車で出発。遺体安置所だった福島県相馬市の工場跡地にかっぱ姿で立ち寄った際、居合わせた警官に「そんな格好じゃダメだ」と言われ、余っていたLLサイズの防護服を分けてもらい、翌日から警戒区域で捜索に立ち会った。

 初日の22日は午前9時ごろ警戒区域内にある浪江町高瀬地区の集合場所に到着。警察や消防の職員、重機を動かす建設業者ら約130人が集結していた。いずれも防護服と長靴、放射性物質防護用マスクとゴーグルに二重手袋などの完全防備。胸元の線量計は、上からガムテープで固定されていた。

 一方、男性職員は前日譲られたぶかぶかの防護服のほかはゴーグルもなく、長靴と風邪用のマスクに軍手1枚だけ。線量計も持たされていなかった。県警の指揮隊長からは「えっ、そんなんで来たの?」と驚かれたという。

 その日は東京電力福島第1原発から約2.5キロの双葉町中野地区で捜索があり、付近で公用車で待機。震災前は住宅や松林で原発は見えなかったが、津波で遮蔽(しゃへい)物が全て流され、排気筒がくっきり見えた。行方不明者は見つからず、昼にコンビニエンスストアで買ったおにぎりを車内で食べ、午後3時半ごろ警戒区域を出た。

 捜索で出てきた位牌(いはい)やアルバムなどの流失物は公用車の中に積んでいたが、5日ほどで満杯になり、双葉町役場の倉庫に移した。着用済みの防護服は捨て場所が見つからず、おにぎりを買った際のポリ袋に入れて車の助手席に置いていた。男性職員は「放射性物質の知識が何もなかった。今思えば放射能まみれですよ」と肩を落とす。

 11年7月になって住民の一時帰宅が始まり、添乗する職員の被ばく線量を総務課が管理することになった。その際、「そういえばあの3人は……」と一時、男性職員らの「線量計不携帯」が取り上げられそうになったが、追跡調査などが行われることはなかった。

最新写真特集

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM