吉川英治:旧邸の梅、伐採へ 寄り添う夫婦に見立て愛着 青梅で句募集
2013年03月10日
「宮本武蔵」などで知られる作家、吉川英治(1892〜1962)が旧吉野村(現・青梅市柚木町)の旧邸の庭で特に愛し、歌にも詠んだ紅梅と白梅の2本がウメ輪紋(りんもん)ウイルスに感染し、25日に伐採されることになった。旧邸を生かして整備された吉川英治記念館は惜別の思いを込めて梅を題材にした俳句を募集している。
吉川は1944年3月、当時でも築100年近かった農家の屋敷を買って赤坂から移り住み、53年まで暮らした。庭には梅の木があり、吉川自身も追加で植え、現在は83本を数える。ウイルスに感染したのは移住前からあったお気に入りの2本を含めた24本で、2回に分けて伐採されるという。
<白梅は紅梅に倚(よ)り
紅梅は白梅に添ひ
双照(ならびてらし) 双映(ならびはえる)
いよいよ白く いよいよ紅(あか)し>
記念館の片岡元雄事務長(学芸員)によると、吉川がこの歌を詠んだ時期や状況は不明だが、幹同士が支え合うように伸びる紅梅と白梅を夫婦に見立てているあたりに、2本への愛情がうかがえる。
俳句募集の他、青梅市内の彫刻家が伐採した木で作品を制作する計画もある。俳句の締め切りは今月31日。館内の投句箱か郵送で受け付ける。応募作品は4月27日〜6月2日に展示。来館者の投票で上位の句の作者には記念品を贈る。問い合わせは記念館(0428・76・1575)。【横井信洋】