電気料金高騰で内閣総辞職のブルガリア

電力自由化がもたらすもの


山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)  富士常葉大学教授

京都大学卒業後、住友商事入社。地球環境部長などを経て2008年から10年までプール学院大学国際文化学部教授。10年4月より現職。近著に『脱原発は可能か』(エネルギーフォーラム新書)がある。

World Energy Watch

迷走を続ける日本のエネルギー政策。海外の事例をもとに、問題の本質と解決策を導いていく。

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ブルガリアは東を黒海に接し、西をセルビア、マケドニア、南をトルコ、ギリシャと北をルーマニアと接する人口700万人の国だ。日本ではヨーグルトで知られている程度かもしれない。そのブリガリアでは2月上旬、電気料金高騰に抗議する街頭での活動が始まり、2月17日には全国20都市以上に広がった。

 18日には混乱の責任を取り財務大臣が辞任したが、抗議活動は収まらず、19日夜の首都ソフィアのデモでは警官隊との衝突があり負傷者が出る騒ぎになった。20日になりボイコ・ボリソフ首相が内閣総辞職の申し出を議会に提出した。21日の議会では209対5という圧倒的多数で総辞職が認められ、総選挙が4月あるいは5月に行わるとの観測が広がっている。

 ブルガリアで2007年に行われた電力自由化がこの料金高騰の遠因としてある。ブルガリアの電力市場自由化により発生した問題点は、いま日本でも議論されている電力システム改革を考える際の参考になる。ブルガリアと日本では経済情勢など異なる点が多い、しかし対岸の火事とばかり言えない身につまされる点も多い。電気と言う特殊な商品を市場に任せるリスクはどの国でも同じだ。

欧州委員会から問題の指摘も
ブルガリアの電力事情

 2007年1月に欧州連合(EU)に加入したブルガリアは、2003年のエネルギー市場自由化に関する欧州委員会の指令に基づき2007年7月に電力市場を自由化した。当初国内の供給は海外企業4社が行っていたが、現在では次の3社が行っている。

 首都ソフィアを含む西部:CEZ(中欧で最大のチェコ企業。プラハ、ワルシャワで上場。2原子力発電所、18石炭火力発電所、35水力発電所などを保有。発電、配電、トレードなどをチェコ、ブルガリアなど8か国で展開)

 北東部:Energo-Pro(自社の水力発電所からの電力供給を主体にするチェコ企業。ブルガリアでも8水力発電所を保有。5カ国で電力事業を展開)

 北西部:EVN(オーストリア企業。電力供給に加え、ガス、熱、水などの供給事業、廃棄物処理事業も展開。14カ国で事業を展開しているが、電力についてはブルガリア、マケドニアが主体)

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山本隆三(やまもと・りゅうぞう)

富士常葉大学教授

京都大学卒業後、住友商事入社。地球環境部長などを経て2008年から10年までプール学院大学国際文化学部教授。10年4月より現職。近著に『脱原発は可能か』(エネルギーフォーラム新書)がある。

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