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憲法改正要件―「3分の2」の意味は重い

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 憲法を改正しやすくするために、ハードルを低くする。

 そんな動きが強まっている。

 安倍首相は、憲法改正手続きを定めた96条を改めたいと意欲を示している。

 呼応する動きは野党にも広がる。民主党や日本維新の会、みんなの党の一部の議員らは一両日中にも、96条改正をめざす勉強会を発足させるという。

 96条は、衆参両院でそれぞれ総議員の3分の2以上の賛成で改正を発議し、国民投票で過半数が賛成すれば承認される、と定めている。

 首相らは、この「両院の3分の2」の要件を、「2分の1」に改めようというのだ。

 この改正論には反対だ。

 憲法は「不磨の大典」だから一切手を触れるな、と言いたいのではない。

 改正に高いハードルを設けるのは、世界的にみても当たり前のことであり、それ自体に意義があるからだ。

■各国も高いハードル

 まず、各国の憲法の改正要件を見てみよう。

 ふつうの法律と同じ手続きで改正できるのは、まとまった成文憲法を持たない英国など、ごく一部にすぎない。

 大多数の国は表の通り、厳しい制約を課している。国会で可決する要件をより厳格にする、国民投票をする、それらを組み合わせるといった方法をとる。

 なぜか。最高法規である憲法は、簡単に変えてはならない原則を定めるものだからだ。国民主権や基本的人権に関する条項は、その典型である。

 そもそも憲法は、権力を握る者が乱用しないよう、たがをはめることに意義がある。時の権力者の意向で簡単に改正できるなら、歯止めの意味をなさなくなる。

■幅広い合意が前提

 それだけではない。

 両院の3分の2の壁を乗り越えるには、多くの他党派の議員をふくむ幅広い合意形成が不可欠だ。それには国会で議論を尽くし、国民の多くにも納得してもらうことが必要となる。

 これが2分の1でいいというなら、国の骨格にかかわる議論が尽くされないまま、改正案がつくられる懸念もある。

 むろん、憲法の特質からすれば、望ましいのは前者である。

 96条の改正を主張する人たちは、最後は国民投票で主権者自身が決めるのだから、国会による発議はしやすくした方がいいという。

 首相も「国民の60〜70%が変えたいと思っても、国会議員の3分の1をちょっと超える人たちが反対すれば、指一本触れることができない。これはおかしい」と説く。

 もっともらしい意見だが、これには首をかしげる。

 憲法のどの条項をどう変えるかを提案するのは国会であり、国民が意思表示できるのは、それへの賛否だからである。

■96条批判は筋違い

 日本は戦後、いまの憲法を一度も改正したことがない。

 一方、海外に目を向ければ多くの国が改正を重ねている。

 その代表例は、機能不全に陥りがちな統治機構を手直しするための改正だ。

 欧州では、国家主権の一部を欧州連合(EU)に移し、EUや州、自治体との役割分担を見直す試みが続く。

 国のかたちを変える試みもしないまま、日本はグローバル時代に対応できるのか。そんな疑問を抱く人も、少なくはないだろう。

 だが、日本が憲法を改正してこなかったのは、本当に96条のせいなのか。

 同じように両院の3分の2という制約を持つ国が、それを乗り越えて改正している。米国は戦後6回、ドイツの場合は法律に記すような事項まで憲法に書くこともあって59回に及ぶ。

 国会や国民の納得を得るために、どれだけの政治的エネルギーを注いだか。その違いも大きいのではないか。

 問題点が浮き彫りになっている衆参両院の関係をどうするかなど、日本でも憲法に絡んで浮上している課題は多い。

 それを手直しする必要があるというなら、正面からその理由を訴え、3分の2を超える賛同を得る努力をすればいい。

 平和条項を盛った9条の改正で合意するのは難しい。だから、まずハードルを下げようというのだとしたら、邪道というほかはない。

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