基調講演I:生活習慣病としての糖尿病、その成り立ちと予防
東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科助教授
門脇 孝 先生
太りやすく、糖尿病になりやすい体質の日本人には、
お米を中心とした食生活が最大の治療法であり、予防法。
 日本には現在700万人以上の糖尿病患者がおり、そのほとんどがインスリンが出にくいこととインスリンの効きが悪いこと(インスリン抵抗性)による2型糖尿病です。日本人には、小太り程度の肥満でも糖尿病を発症しやすい傾向がありますが、近年の研究でそのメカニズムがわかってきました。日本人はもともと、インスリンを出しにくい体質をもっています。これは数千年にわたって、その代謝にそれほどインスリンを必要としないお米を中心とした食生活を営んできたためだと考えられています。さらに日本人の大部分は、倹約遺伝子と呼ばれる脂肪を蓄積しやすい体質を持っています。これは、飢餓状態でも生き残るためには有効なものでしたが、現在のような脂肪中心の欧米型食生活と運動不足の環境においては、そのまま肥満につながります。

 健康な脂肪細胞からは、脳の視床下部に作用して食欲を抑制し、エネルギーを消費するよう信号を送るレプチンや、脂肪の燃焼を促す作用のあるアディポネクチンという物質が分泌されています。しかし高脂肪食をとった時や脂肪細胞が肥大した場合は、アディポネクチンが出にくくなり、レプチンの働きが抑制され、さらにインスリン抵抗性を高める物質も分泌されます。また、日本人にはアディポネクチンを出しにくい体質(SNP276遺伝子G/G型)も多く見られます。このような体質が、日本人の肥満や糖尿病の発症に大きな影響を与えているのです。

 脂肪を消費するための運動を取り入れ、本来のお米中心の食生活に戻すこと。これが日本人にとって最大の生活習慣病治療法であり、予防法であると言えるでしょう。


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