広島セミナー駆け足レポートコーナーbyけん玉ちゃん
                  〜3日間の総参加人数1630名〜
   “共に生きる21世紀の「性と生」を見つめ直す
        〜ヒューマンな性を育む・家庭、学校、地域で〜”
  8月8・9・10の3日間、穏やかな瀬戸内海の浜辺に建つ「広島プリンスホテル」で、21回目の全国セミナーが開催されました。久々のホテル貸し切り型のセミナーで、今回の参加目標は1200名、うち宿泊者800名以上と聞いた時には、えらいこちゃと思いました。  結果は心配の声を吹き飛ばす、参加者1630名を集めました。素敵なセミナーの3日間をさらっと報告します。

第1日目(8月8日)全体会
 ♪☆♪記念講演;大林宣彦『明日へのメッセージ〜愛、性そして教育へ〜』
  受付業務の関係で、アトラクションなど見られず、講演もお話の後半しか聞けなかったのですが、大林監督は実に良い声でしっとりと心にしみいる感じでした。きっと季刊『セクシュアリティ』誌上(エイデル研究所発行)に講演録が載るはずですから、お楽しみに。
  監督の最新作『なごり雪』は、昨年の「9・11」テロ後の報復戦争に直面し、報復の連鎖を断つ方向性を、映画人として示すにはどうしたらいいのか考え、その一つの結論をこの映画に込めたとのことでした。兵庫でこの映画の鑑賞会など企画してはどうでしょうか。
 
  ◎▲◇トーク&トーク;スピーカー:
 大月純子(日本基督教団・広島古市教会牧師。「わたしのたちの性と生を語る会・広島」代表。
 北山翔子(保健士。『神様がくれたHIV』(紀伊国屋書店)著者)。
 虎井まさ衛(作家・FTM日本主宰。『ある性転換者の幸福論』(十月舎)等の著者)。
 司会:浅井春夫(代表幹事)

 大月さんは「性はタブー」のキリスト教の世界で、本当に聖書ではそうなかという問い直しを、HIV感染者や同性愛者の友人との出会いを通して始めたそうです。彼女の発言をメモった中で目を引かれるの言葉は「共にいること」。
 北山さんは、医療ボランティアとしてタンザニアにいた時、HIVに感染。詳細は著書を読んで下さい。彼女の言葉では「あたり前の思いやりに支えられている」が気になりました。私にとっての「あたり前」と妻の「あたり前」の違い気づいてどきっとすることのある今日この頃です。
 虎井さんの話を初めて聞いたのは、何年か前の理論と実践講座でした。彼の著作は私の授業でも利用させてもらっています。今回、彼の落ち着きと自信のようなものをしみじみ感じました。このトークも『セクシュアリティ』誌上に登場するはずです。乞うご期待!

  ☆★☆900人の大交流会〜横浜の敵を広島で〜
 セミナー第一日目の締めくくりは、900名を越える参加者の大宴会でした。昨年の第20回記念セミナー(横浜)の記念レセプションに参加した人は、余りの料理の少なさにプンプン状態でした。まぁ豪華な会場を押さえたからだったのでしょうが・・・。その点今回は結構多品種を食べれました。昨年の11月特別例会にお招きした宮崎留美子さんとも再会、いっそう美しくなったその足に皆声を失っておりました。

  第2日目(8月9日)模擬授業(21本)/分科会(20本)

  模擬授業・高校(保健科):性感染症
      〜「使った方が気持ちイイ」コンドーム実習〜
授業者;楢原宏一(東京・吉祥女子中学高等学校)。

 参加していた現役の高校生(女性3人)にも好評の模擬授業でした。授業者はレジュメにこう書いている「コンドームを性交時に付けられるようになるには2つのスキルが必要となる。一つは正確に、有効に装着できるマニュアルスキル。もう一つは性交する時にコンドームを装着する合意がなされるためのコミュニケーションスキルである。」
 高3の性交体験率が40%を超え、クラミジア感染などのSTIが10代に激増している。その原因は性交時のコンドーム装着率の低さといっても過言ではない。ならば、具体的な力をつけるための学習をと言うことになる。
 楢原実践は、“プレーの一つとしてコンドームを紹介”“使った方が気持ちイイ”“変わり種コンドームの入手方法も”とコンドーム装着率を上昇させるための実戦的内容満載であった。コンドームを使用しなかった理由で、男子に多いのは「買い忘れた」「買うのが面倒だった」「コンドームが嫌い」「快感が損なわれる」。女子は「買い忘れた」「コンドームが嫌い」「言い出せなかった」。性感染症の問題を押さえた後で、具体的なコンドームの入手方法や様々な実物(快感が損なわれる→スキンレスの極薄有り。早いのが気になる男の子にはGOKUATUもある。ゴムのにおいのない無臭タイプ、レモン味やチョコレート味などオーラル用向きなどなど)を紹介。
 男の子には、女の子が性交時に気にしていること(妊娠の恐怖がオーガズムが得にくい理由など)示す。女の子には、「愛しているから大丈夫」と押し切られそうになったときの対処法。もし無しでしてしまったり、破れたりした時はの対処法(緊急避妊ピルなども)も提示。授業の最後は、模擬生徒がお好みのコンドームで装着実習。私はGOKUATUというのを使ってみました。確かにしっかりしてました。
 コンドームをもっと知りたい人は、以下のHPへどうぞ。
http://www.okamoto-condoms.com/  http://www.condomania.co.jp/

  分科会・地域メディアができること;
☆★☆彼・彼女らに教えられたこと〜地方放送局制作者が出会った性教育〜 
   報告者;高知性教協会員(TVディレクター)
  この分科会のコーディネーターを引き受けていたのですが、今回、一番期待していたプログラムです。「メディアを批判的に読み解く」活動に関わる者としては、作り手の話を聞けるというのは願ってないことです。
  高知県は若年者の人工妊娠中絶率が全国でも高く、「妊娠実態調査」(24歳以下対象)が実施された。この報道に関わることになった報告者は、紋切り型の番組づくりを指示する上層部(男社会にどっぷり使った人たち)とぶつかりながらも、夕方の5時台に性をまともに考える番組を放映した。その番組には、現役の高校生たちが出演し、その思いをある程度語っている。この番組での討論に参加した高校生の中から、生徒会を動かし自分の学校で性を考える講演会を企画した者や、放送部で性を考える作品を作ったりする者が現れ、それがまた新たな番組として放映された。
  分科会では、高校生の討論番組の一部と高校生の活動をおった番組を見ながら、制作現場の裏話を聞き、意見交流を行った。
  メディア・リテラシーという言葉は最近かなり定着し、メディア・リテラシー教育ということで、学校現場の取り組みも報告され始めているが、日本ではまだかなりマイナーである。  メディア・リテラシーというと「批判的に読み解く」活動とならんで「メディアを使いこなす」活動がある。カナダなどこの分野で先進的な活動をしている国の中には、市民が一定の放送枠を確保できるように放送局に義務づけているという話も聞くが、日本ではそう簡単では無いと思う。
  しかし、今回の報告を聞く中で、改めて「メディアとの共生」ということを考える必要があると思った。長引く不況の中で、制作現場は経費削減、人員削減で大変なようである。一方で、テレビの地上波のデジタル化が現実のものになりつつある。金もないし人もいないけど、番組だけはこれまで以上に作る必要が出てきたのである。市民がボランティアで番組を作ろうと言い出せば、きっと放送局は乗ってくるはずである。「科学・人権・自立・共生」の豊かな性の文化を育む番組を自らつくり電波に乗せる。そんな活動を視野に入れる必要があると思う。

  第3日目(8月10日)理論講座
   ※ワンポイントだけです。詳細は季刊『セクシュアリティ』でどうぞ!!

  『十代の受診から 性教育への提言』;
     河野美代子(河野産婦人科クリニック院長)
 
  開業以来10年間のデーターを紹介して、これからの性教育は『性の自己決定』(・幼児期からの課程での性教育・義務教育のうちの学校での性教育・大人自身の性意識の再構築を!)との提言がありました。

  『性の自己決定を育てるとは』;村瀬幸浩(代表幹事)

  自己決定力を成り立たせるのは“予知力”と“交渉力”。交渉力の中でも社会に対する問題対応力、解決力をつけるために、現実の問題に具体的に対応できるためな情報提供と情報収集の活動を支援する必要がある。

 ☆♪♪♪〜最後に、とても快適なホテルでした。来年は静岡で会いましょう。

  おまけで〜す!!!季刊「セクシュアリティ」の今後のラインナップ
    まだ定期購読者になっていない人はすぐに申し込んでね!!
            宣伝・拡大もよろしく。
第8号(2002.10) 特集;性・ジェンダー情報を読み解く
             第2特集;広島セミナーの全体会報告
第9号(2003.1)  特集;思春期の性と自己決定
第10号(2003.2) 特集;前進する性の教育bP
              〜全国セミナー(広島)の収穫〜
第11号(2003.4) 特集;しょうがいとともに性を生きる
             第2特集;総合学習と性教育V(高校)
第12号(2003.7) 特集;生命をみつめなおす
第13号(2003.10)特集;生涯の性  第2特集;静岡セミナー全体会報告

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