社説:震災から2年・危機と国家 民主主義力が試される

毎日新聞 2013年03月12日 02時30分

 危機においては、スピード感のある力強い政治のリーダーシップが欠かせない。ただし、それをどのように用いるかによって、民主主義は試される。国家という器の中で「今、目の前にある」暮らしの危機にもがき苦しみ、しかも忘れられがちな大勢の人々がいる。その人々を救うことが最優先でなくて、何のための政治か、何のための国家か、ということになりはしないだろうか。

 ◇「顔の見える」政治を

 その一方、被災自治体には、高台移転や防潮堤の設置の是非など住民の意見が分かれる問題で、首長が一人一人と粘り強く面談を重ねるなどしてコンセンサスを作ってきたところがある。福島県で自治体の復興支援を続けている関係者からは「アンケートで復興はできない」との声を聞いた。紙の上の数字ではなく「顔の見える」政治が、復興を前に進ませることができたのである。

 放射能汚染廃棄物の中間貯蔵施設や仮置き場の設置など、合意形成の難しい問題が山積している。さらには将来のエネルギー選択や社会保障制度の再構築、あるいは米軍基地の問題なども含め、利害が錯綜(さくそう)し、受益と負担のバランスを真剣に考えなければならない課題は多い。

 そうした複雑な問題に解決の糸口を見いだすため求められるのは、一方的に結論を押しつける「上からのリーダーシップ」ではなく、何度でも説明をして説得を試みる「丁寧なリーダーシップ」であろう。明快な答えのない政策課題に直面する日本社会の明日を考えた時、被災自治体のリーダーが示してきた忍耐強い合意形成力は、日本の民主主義の健全さの規範となるに違いない。

 震災の被災地はもともと高齢化・人口減が進んでいた農林漁業主体の市町村である。その過疎化の進行が震災によって10年も20年も早まったとされている。消費と利便性だけを求めた単なる都市化モデルでは、真の意味の復興にはならない。

 海や山、川、田畑など豊かで美しい自然に囲まれた被災地をどうやって立て直し、そこに生きる喜びを取り戻すか。それは、震災を機に大量生産・大量消費の生活スタイルから脱却しようと考えた私たち一人一人の生き方にもかかわる問題だろう。つまり、被災地の復興のあり方を考えることは、日本という国家の未来図を描く作業でもあるのだ。

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