三菱航空会長:MRJ開発に円安追い風-年内初飛行へ
3月11日(ブルームバーグ):三菱重工業 傘下の三菱航空機は、現在開発中の国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)の今年下期の初試験飛行に向けて着々と準備を整えているが、このところのドル高円安傾向が追い風になっている。
三菱航空機の江川豪雄会長兼最高経営責任者(CEO)はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで「そもそも円の購買力として1ドル=80円は高すぎ。現在の円安水準は歓迎であり、正直うれしい」と述べた。航空機の値段はドル表示が標準だとし「その意味では対ドルで円安になれば、われわれの手取りが増える」という。収益増を背景にMRJのプロトタイプ機体の完成や型式証明の取得、量産体制の確立への流れがスムーズになることが期待されている。
為替相場は8日には一時、1ドル=96円55銭を付けるなど昨年1年間の平均値79円84銭から2割近く円安傾向に振れている。96円台は09年8月13日以来となる円安水準。江川会長は、MRJの開発初期段階の07年ごろの為替相場は1ドル=110円程度だったと指摘し、「相場があまり荒れて欲しくない。為替がいくらかよりも、希望は相場が長期に安定していることだ」とも語った。
MRJのカタログ価格は90型(92座席)で1機約4200万ドル(約40億円)。同会長によると、MRJは部材コストベースで約6割がドルによる海外からの調達、残りの約4割が日本の製品になるという。最大のサプライヤーは米国で、その他海外の一流メーカーからなる。円安は部材コストのアップにつながるが、可能な限り国内で製造する方針であるため、円安は確実にプラスと説明する。
江川会長は、MRJ開発について「予定のスケジュールに沿っている」とし、10月から12月の間に計画している初の試験飛行については実現できるとの自信を示した。現在は、プロトタイプ1号機の機体組み立てに取り組み始めているところだと述べた。初飛行に向けた体制強化の一環として、1月に江川氏が会長兼CEOとなり、川井昭陽副社長が社長に昇格した。
ライバルは2強MRJは国産として戦後初のYS11以来約50年ぶりに開発される旅客機。炭素繊維複合材料を活用し、最先端の素材や技術による工夫で、従来の同型機より約2割以上燃費を向上させる。製造工程や開発の遅れなどで計画が遅延し、初納入を15年度の半ばから後半にずらしている。
全日本空輸 や米トランスステーツ、米スカイウエストの3社でオプション購入を含めて計325機の受注を獲得している。現在、小型ジェット機の国際市場はカナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルがほぼ独占。ライバルメーカーの新型機開発も進み競争が激化する中で、計画をこれ以上は遅らせられないとして、万全の体制で取り組む方針。江川会長は「ロシアや中国も小型機はあるが、やはり直接のライバルはカナダとブラジルだ」と語った。
江川会長は、民需の営業を積極的に進める一方で、官需の期待も期待しているという。現在の政府専用機2機はボーイング747。MRJは航続距離は約3300キロで、ニューヨークまで飛べるB747の代替機にはならないが、国内やアジア諸国向けの飛行では、効率の良さで活躍できる余地はあると強調する。
江川氏は「沖縄を含め国内そして近隣の中国や韓国などへ飛ぶ場合にはぴったりの飛行機であり、首相や閣僚に使ってもらいたい。自衛隊の連絡機や海上保安庁の沿岸警備などにも活用してもらえるはず」との考えを示した。
日本初の航空機YS11は、航空自衛隊や海上自衛隊、海上保安庁などが購入している実績がある。三菱航空機は今後20年間で小型ジェット機1500機の受注を目指している。
B787のトラブルは驚きB787のバッテリー問題について、江川会長はMRJは不具合の出ているリチウムイオン電池ではなく、ニッカド電池を使用する計画と指摘。「ニッカド電池は、もう航空機でも30年以上使われている技術だ」と説明した。
その上で、「私個人として今回のB787のバッテリー不具合は信じられないことだった。部材はそれぞれ十分な時間をかけて検査されていたはず。詳細は分からないが、あのボーイングのことであり、きっと解を見つけることだろう」とエールを送った。
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更新日時: 2013/03/11 13:31 JST