東京電力福島第1原子力発電所の事故による避難者の早期帰還のため、政府は居住者向けの放射線量の安全指針づくりに着手する。現在は長期的な除染目標の「年間積算線量1ミリシーベルト以下」を参考値としているが、実現は難しいとの見方が多い。帰還の判断を切り離す形で基準を緩める見通しだ。国際基準に照らしながら現実的な数値を改めて設定する。
東日本大震災から2年が過ぎ、原発事故に絡み前民主党政権の対応を再検証する動きが広がっている。安倍晋三首相は11日、避難した住民の帰還の見通しを今夏をめどに示す考えを表明。政府はインフラ復旧の度合いや医療・福祉の体制を中心に点検し「いつまでに住めるようになるのか」をはっきりさせる構えだ。これと並行して居住を念頭に置いた放射線量の新基準を検討する。
早期帰還の対象となるのは、原発周辺の避難指示区域で年間積算の線量が20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」。1ミリシーベルト以下を目指して環境省が除染を進めているが、作業は遅れ気味だ。
政府は7日、住民帰還について「今後1、2年」を目標として具体策を検討する方針を示した。しかし除染の完全な終了を待つ姿勢だと、早期帰還はのぞめそうにない。佐藤雄平福島県知事は「達成できる数値を示してほしい」として国に対応を要望してきた。
首相をトップに関係閣僚で構成する政府の原子力災害対策本部が、近く作業部会を立ち上げる。同本部は復興庁や原子力規制委員会、環境省などと協議したうえで年内にも具体的な指針を示す。菅義偉官房長官は11日、この問題で「関係省庁と協力して議論していきたい」と述べた。
原発周辺では一度の除染で5~10ミリシーベルトまで放射線量を減らした後に作業を繰り返しても、1ミリシーベルトまで低減させるのは困難なことがわかってきた。1ミリシーベルトまで除染するのは「大変な労力がかかり、コストがかさむ」(環境省)とみられる。
1ミリシーベルトの目標は、前民主党政権が国際放射線防護委員会(ICRP)が示す1~20ミリシーベルトの下限を採用した経緯がある。一方で放射線の影響による発がんリスクは、100ミリシーベルト以下なら喫煙に伴う発がんリスクと差はない程度とされる。
環境省は当初、原発周辺の除染目標として5ミリシーベルトを想定していた。しかし「安全面で問題がある」などと批判を浴び、1ミリシーベルトと厳格にした。
2011年秋に開いた政府の放射線審議会基本部会は、年間被曝(ひばく)限度について1~20ミリシーベルトの間で「中間目標」を設けることを検討したが、結論は出なかった。この際、審議会委員の専門家の一人は「1ミリシーベルトが絶対基準のように浸透しているのは問題」と強調していた。
帰還線量の新指針に併せて、除染目標の見直しも課題に浮上しそうだ。ただ中長期的な被曝限度を巡る科学的な知見は世界でも十分とはいえない。リスクの線引きに関して専門家の間では「国によるトップダウンでなく、当事者が納得する議論の場が必要」との声も出ている。
東京電力、福島第1原子力発電所、安倍晋三、佐藤雄平、菅義偉
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