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2013年3月12日(火)付

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被災地の復興―スモールビジネスを力に

 東日本大震災の被災地で、復興に欠かせない「働く場」をどうつくっていくか。

 事業所の再開や新たな企業の誘致を、財政面や規制緩和で後押しすることは必要だ。

 ただ、被災地の多くはもともと過疎化と高齢化が深刻で、そこに震災が追い打ちをかけたという厳しい現実がある。

 小さくても長続きする事業を起こし、補助金などに頼らず、地域の中でおカネを回す。

 そんな「スモールビジネス」への挑戦が始まっている。

■助成金頼みでなく

 宮城県石巻市で活動する非営利団体「ぐるぐる応援団」は、仮設住宅の住民向けに買い物バスを運行する一方、定食やラーメンを出す小さな店「いしのま☆キッチン」を営む。

 主宰するのは、鹿島美織さん(36)。リクルート社に10年勤めた後、東京で独立した。大震災後、ボランティア活動がきっかけで、宮城と東京を往復する生活が始まった。

 「頼みの助成金がなくなると事業も終わり、ではダメ。あくまでビジネスとして定着させたい」。モットーは「小さなリスクで小さな挑戦」である。

 店員は10人あまり。子育て中の30歳代の主婦から、震災前は飲食店を経営していた60歳代の女性までさまざまだ。働ける時間帯が限られる人、体力が衰えてきた人たちの力も集めてやりくりする。

 今はお昼時の3時間の営業を延ばし、店員を3倍にすることが目標だ。

 「社会的起業」への関心が強い若者や、活動領域を広げるNPOの力も生かしたい。

 加藤裕介さん(25)は、東京の大手コンサルティング会社を1年で退職し、若者の起業を支援するNPO法人「ETIC」(東京)が手がける被災地への派遣事業に応募した。

 派遣先として選んだのは、福島県でNPOへの支援活動をする一般社団法人「ブリッジ・フォー・フクシマ」。ここで仕事をしながら起業を目指す。

■被災者と二人三脚

 手応えを感じたのが、被災地の事業者から話を聞く旅行ツアーだ。地元の旅行会社と組んで年明けに2回、首都圏から客を約30人ずつ集め、津波と原発事故に直撃された相馬市と南相馬市を1泊2日で案内した。

 水産加工の経営者やみそ・しょうゆ店の店主に「語り部」を依頼した。ツアーの参加者に、現状を知ったうえで飲食やおみやげ購入を通じて支援してもらうのが狙いだ。

 今月4日、東京証券取引所。被災地の起業家と企業を引き合わせる催しに、宮城県南三陸町の主婦、阿部民子さん(51)と同町の非営利団体「ラムズ」事務局長の白石旭(あきら)さん(31)の姿があった。

 阿部さんの夫は漁師で、小舟1隻を残してすべて津波に流された。昨年秋、主婦2人で地元海産物の通信販売を始めた。事業計画やインターネットのホームページ作り、スマートフォンによる情報発信などを指南したのがラムズだ。

 東京を拠点に、中小企業の経営指導で生計をたてる白石さんは、ボランティア活動が縁でラムズに加わった。「すべての作業を被災者自身にやってもらうことが、自立へのノウハウの蓄積につながる」と話す。

■多様な民間の参加を

 とはいえ、社会インフラの復旧に比べて産業復興が遅れているのが現実だ。

 「復興には、もっと多様な民間の力が欠かせない」。藤沢烈(れつ)さん(37)は各地での講演会やインターネットを通じて、そう訴え続けている。

 社会的事業の経営コンサルタントであり、被災地での街づくりなどにかかわる一般社団法人の代表。震災直後から政府のボランティア支援にかかわった縁で、国の復興庁の政策調査官の肩書も持つ。

 復興にかかわる調整役を務めながら、こう痛感している。

 政府や自治体といった「官」が「公(おおやけ)」の仕事を独占する時代はとうに終わっている。「民」がしっかりかかわり、官と連携することが大切――。

 既存の企業、とりわけ経営資源に恵まれた大企業の役割は大きいだろう。

 多くの会社が資金や物資の提供、社員のボランティア派遣などを続けてきたが、震災から2年がたち、限界も見え始めた。株主への配慮などと両立させながら、どう被災地にかかわり続けていくか。

 一部の企業が掲げ始めたのが「本業を生かして被災地の課題解決にあたり、新たなビジネスの芽も見つける」ことだ。少子高齢化や産業空洞化への対応、防災・減災対策の強化は日本全体が直面する問題でもある。

 起業家やNPO、企業など多彩な「民」が復興にかかわり、官と力を合わせて難題に挑んでいく。被災地を舞台にそんな姿が描ければ、日本の明日も見えてくる。

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