中国:海洋局の権限強化 尖閣にらみ組織統合 政府、全人代に提示
毎日新聞 2013年03月11日 東京朝刊
【北京・成沢健一、井出晋平】中国政府は10日、北京で開かれている全国人民代表大会(全人代=国会)に対し、国家海洋局の権限強化や鉄道省の解体などを盛り込んだ機構改革案を提示した。海洋に関する重大事項を調整する「国家海洋委員会」を新設する方針も示しており、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)や南シナ海の島々を巡り、日本など周辺国との対立を念頭に置いた統一的な体制構築・強化の狙いが鮮明に表れている。
改革案では、海洋監視船「海監」を保有する国家海洋局の下に、農業省の漁業監視部門や公安省の海上警察部門などを統合する。これまでバラバラだった海洋部局の指揮系統を一本化し、体制強化を図ったとみられる。
パトロールなど監視活動は、警察権限を付与され、公安省の指導を受ける「中国海警局」名で活動する。日本の海上保安庁などの活動への体制強化を狙ったとみられ、今後、尖閣周辺での監視活動が活発化し、周辺国と摩擦が強まる可能性もある。
鉄道省の解体は「政府と企業部門の分離」が主眼で、鉄道建設計画や政策立案部門を交通運輸省に編入。同省の下に安全管理を担当する「国家鉄道局」を新設し、実際の鉄道運行や建設は企業として新設する「中国鉄道総公司」が担う。
鉄道省は、政策立案から鉄道運行までの権限を一手に握り「独立王国」と呼ばれていた。11年7月に浙江省温州市で40人が死亡した高速鉄道事故後は、ずさんな管理体制や「腐敗の温床」と呼ばれる閉鎖的な体質を批判された。鉄道省と関係が深いとされる江沢民(こうたくみん)前国家主席の影響力低下もあり、再編にこぎつけたとみられる。
改革案ではこのほか、マスコミ管理部門を統合した「国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局」の設立も盛り込んだ。大規模な機構改革は08年以来。