【ＷＢＣ】マー君で世界一！大震災から２年侍の誓い

練習前、東日本大震災の犠牲者の冥福を祈り、黙とうする田中（左は杉内、右は涌井）

　侍ジャパンの田中将大投手（２４）が、１９日（現地時間）の決勝戦に進出した場合の先発筆頭候補であることが１１日、分かった。２日の開幕戦、ブラジル戦（ヤフオクＤ）で２回４安打１失点で降板し、中継ぎに回ったが、徐々に復調。３連覇がかかる大舞台で大役を任される可能性が高くなった。東日本大震災から２年が経過したこの日、右腕は「野球を通じて明るい話題を送りたい」と３連覇を誓った。また、山本浩二監督（６６）が被災地にメッセージを送った。

キャッチボールで調整（左は与田コーチ）

　練習前の午前１１時。侍ジャパンの選手、スタッフが東京Ｄの右翼の定位置付近に集まった。一つの輪をつくり、約１分間の黙とうをささげた。田中も静かに目を閉じた。「３月１１日にお亡くなりになられた方にお悔やみを申し上げたいです」。東日本大震災から丸２年。「ＪＡＰＡＮ」のユニホームを着て野球ができることに感謝し、特別な思いでグラウンドに足を踏み入れた。

　あの日、楽天は兵庫・明石でオープン戦を戦っていた。田中は試合後、第二の故郷の変わり果てた光景をテレビで見て声を失った。２年たったが、復興は思うように進んでいない。「僕たちは普通に生活できていますけど、まだまだ前の生活に戻れていない方はたくさんいる。震災が風化していくのが一番怖い」。仙台に本拠地を置くチームの一員として訴えかけ、そして、サムライの一人として続けた。「野球で明るい話題を送りたい」。ＷＢＣ３連覇を成し遂げることを、改めて誓った。

　自らの手で、その偉業をつかみ取る。決勝に勝ち進んだ場合、先発としてマウンドに上がる可能性が浮上した。山本監督は、準決勝の先発には前田健の起用を既に公言。その後の大一番に、田中を送り込むプランだ。２日のブラジル戦で開幕投手を務め、２回２３球で降板。不振のため中継ぎに回ったが、６日のキューバ戦で２回６奪三振。８日の台湾戦も３イニング目に失点したが、最初の２回は完ぺきに抑えた。与田投手コーチが「２イニングは素晴らしかった」と絶賛したように、首脳陣は田中への信頼を取り戻している。決勝Ｒは能見、杉内、内海はリリーフが濃厚。準決勝は総力戦で田中もブルペン待機するが、勝てば大一番を任される可能性は高い。

　この日、田中は中距離ダッシュなどで汗を流した。前日（１０日）のオランダ戦で５回１安打無失点と好投した前田健について「本当にすごいと思う。完ぺきですよね。刺激になる」と闘争心に火がついた。「自分自身のできることをやって、しっかり試合に臨めるように準備したい」。強い気持ちで米国に行く。日の丸を背負って、世界の頂点を取りにいく。

　◆マー君と被災地　震災後、募金活動を行うなど積極的に支援。今年１月には前田健、坂本ら１９８８年度生まれの同級生に声をかけ、仙台市内で被災した野球少年との交流イベントを開催。東北３県の少年野球２９チーム、３５３人に野球教室を行った。ＷＢＣ決勝Ｔの準決勝で前田健、決勝で田中が先発して好投すれば、８８年コンビによる被災地への大きな支援メッセージになる。

　◆山本浩二監督のメッセージ「東日本大震災から丸２年が経過しても、被災地の復興は十分には進まず、被災地の皆さんはまだ大変な思いをされていることと思います。被災地の方々にとって、これからも厳しい日が続くと思うと心が痛みます。今現在、我々、日本代表チームができることは、一生懸命プレーすることと祈ることです。侍ジャパンの戦いぶりを見ることで、被災地の皆さんが少しの間でも辛い思いを忘れ、笑顔を取り戻せてもらえるのであれば幸いです。そして、２年前の震災を忘れることのないよう、チーム関係者一同、お祈りを捧げます。被災地の皆さんの決して諦めない強い心を見習い、日本代表チームは明日からも懸命に戦っていきます」