現在、月組は『ベルサイユのばら』ーオスカルとアンドレ編ー東京宝塚劇場公演の真っ最中です。
約1ヶ月の大劇場公演を経て、改めて東京のお客様にご覧いただくということで、最初は緊張しました。オスカルを演じる初日も、すごく久しぶりだったので緊張感がありました。
これまでも1つの公演で2役を役替わりで演じてきた経験はあったのですが、その役と役同士が台詞を交わしたりすることはそんなになかったんです。だから、動きを気を付けることと気持ちの切り替えだけが必要でした。でも今回のオスカルとアンドレは、常に一緒に行動していて、台詞も掛け合いで、動きも対になっていることが多く、先程まで自分が演じていた役として接しないといけないので慎重にしています。
そのためにも、毎回始まる前に完全に気持ちを切り替えることと、幕が開いたらその役にのめり込めるだけのエネルギーをきちんと作り出すようにしています。それに、演じる人が変わることに対して、一緒にお芝居をする組子たちがすごく集中して、微妙な変化を敏感に汲み取ってくれているので、感謝しながら役替わりに挑んでいます。
1つの作品でも役によってこれだけ印象が変わるのかと、どの役替わり公演でも感じます。今回はそれに加えて、自分だけでやろうとしても台詞が混乱してしまうので、きちんと相手の台詞を聞いて、いつも以上に集中して相手が発信しているものを受け取ろうと心がけています。そうすると自然と自分の役の気持ちで話すことができますし、テンポや気持ちの流れなど、周りのお芝居の変化もすごく敏感に感じられるようになるので、改めてそういう心がけが大切だと学びました。
オスカルは、潔く、凛々しい雰囲気を出せたらと思って取り組みました。女性らしくなり過ぎず、男勝りな歯切れの良さを動作や口調で表現できたらと思います。もちろん、フェルゼンに接しているときや、母や姉などの家族、ばあやとの場面などは、オスカルのイメージを失わないようにしつつも、女性としての自分の感覚も生かしてその日に湧き出てきたものを素直に表したいと思っています。アンドレや家族、ロザリー、市民たちなどさまざまな人との絆があってすごく心を揺さぶられるので、最後まで新鮮に演じたいです。
一方のアンドレは、男役冥利に尽きる素敵な役。オスカルを経てアンドレとして舞台に立つときは、男役に戻ったことによる解放感のようなものを感じますし、アンドレとしての温かい気持ちが生まれてくるのがすごく面白いです。アンドレの全ての行動がオスカルへの思いの表れなので、オスカルの動きに対していま自分はどう思っているのかなど、細かく積み上げていく作業をしています。まさきさん(龍真咲)のオスカルを感じて、ちょっとした表情の変化を受け取り、銀橋でのソロや気持ちを吐露する場面に繋げるように意識しています。
あと、この2役は特に、語り継がれてきた名台詞が満載。これまでいろいろな方が演じられてきましたが、「あの名台詞ね」というだけで終わってしまうのではなく、本当にその瞬間に思いを形にして言葉にしていると思っていただけるようにしたいです。
東京公演では残念ながら演じないのですが、大劇場公演では1週間ほどベルナールも演じ、すごくいい経験になりました。市民役はわりと下級生が多く、一緒にお芝居してとてもパワーを感じましたし、市民側の気持ちをより身近に感じることができて、オスカルを演じるうえでも勉強になりました。それに、ちゃぴ(愛希れいか)とも夫婦役ができました。彼女とは、バウ公演『アリスの恋人』や『ロミオとジュリエット』でも組んでお芝居してきて、繊細な芝居心のある娘役さんだと感じています。短い期間でしたが、月組最後の作品で夫婦役で一緒にお芝居を作れてうれしかったです。
それにベルナールのときは、花組の蘭寿とむさん、雪組の壮一帆さんが特別出演でアンドレを演じられていました。お2人それぞれで台詞の言い方が違うのはもちろん、アンドレとして醸し出す雰囲気がまったく変わってくることに驚きましたし、間近で拝見することができてとても勉強になりました。