本来は太平洋や瀬戸内海に注ぐ川に生息する魚でありながら、福井県内渓流で長年続けられてきたアマゴの放流が、一部河川を除き廃止となる見通しであることが28日分かった。今年9月に迎える10年に1度の漁業権切り替えに合わせ、ほとんどの内水面漁協がアマゴの漁業権を“返上”。同じサケ科の在来種ヤマメへの放流に全面移行する。
この日に開かれた県内水面漁場管理委員会で、次期漁業権に関する内水面漁協の意向が紹介された。渓流を持つ13の内水面漁協のうち、今年8月までの現在の漁業権では、アマゴ、ヤマメのうちアマゴのみを漁業権対象種としているのは4漁協、両方の魚を対象種としているのは9漁協。2009年度から自主的にアマゴからヤマメへ切り替えた若狭河川漁協などを除き、ほとんどの漁協がアマゴを放流していた。
しかし、9月からの次期漁業権では、1漁協が経営への影響が大きいためアマゴ、ヤマメ両方を漁業権対象種とする方針だが、ほかの12漁協はアマゴの漁業権を放棄し、ヤマメのみを対象種とする意向を示している。
九頭竜川水系でアマゴ放流が行われるようになったのは昭和初期。養殖技術の確立や稚魚の価格の安さなどにより、昭和40年代には本格的に移入されるようになった。本年度はヤマメの約700キロ(9漁協)に対し、アマゴは約813キロ(同)放流されている。
足羽川漁協代表理事組合長を務める同委員会の江川正生会長は「自組合の役員会では昔の自然に戻そうということで、全会一致でヤマメへの全面切り替えを決めた。県内全体でもヤマメに統一されていくだろう」と話していた。
次期漁業権の漁場計画案は18日の次回会合で諮問され、委員会が主催する2度の公聴会を経て知事に答申。5月末までに決定する。