東京電力福島第一原発 現場を行く3月5日 19時22分
おととしの原発事故からまもなく2年になるのを前に、NHKは、東京電力福島第一原発で単独の現場取材をしました。
事故現場は、今なお、放射線量が高く、津波や爆発の被害も多くが当時のまま残されていて、40年かかるとされる廃炉に向けた厳しい道のりが改めて浮き彫りになりました。
福島第一原発の現場取材は、これまで、報道機関が共同で行ってきましたが、今回の単独取材は、NHKの働きかけによって実現したものです。
5日は午前10時ごろに福島第一原発の敷地に入り、まず、水素爆発を起こした原子炉建屋がカバーで覆われている1号機の周辺を訪れ、これまで放射線量が高いためにバスの車内からしか取材できなかった場所で、放射線の管理を厳重に行うことを条件に、報道機関として初めておよそ10分間歩いて取材しました。
1号機の周辺では、メルトダウンで溶け落ちた核燃料を冷やすために事故当時、原子炉への注水で使われた消防車のホースや、津波で流され壊れた大型のタンクが、そのまま放置されています。
現場で放射線量を測定したところ、1時間当たり100マイクロシーベルトと、一般人の1年間の限度とされる量に僅か10時間で達する値でした。
作業が行われている現場には、地面に沈着した放射性物質による放射線から作業員を守るために、地面の至る所に厚さおよそ4センチの鉄板が敷き詰められていました。取材のなかで放射線量が最も高かったのは、事故で最も多くの放射性物質を放出したとみられる2号機と3号機の前をバスで通りすぎたときで、1時間当たり300マイクロシーベルトを超えていました。
水素爆発した4号機では、廃炉に向けた最初の工程として、ことし11月に計画されている使用済み核燃料プールからの燃料の取り出しに向けて、多くの作業員が鉄骨製の巨大なカバーの建設に当たっていました。
また今回の取材では、汚染水の浄化設備を動かす制御室に初めてカメラが入り、長時間の滞在ができるよう空調システムが整っているなかで、マスクで顔を覆っていない作業員が、モニター画面に映し出されるさまざまな設備の運転状況を確認していました。
敷地内には、汚染水をためるためのおよそ930のタンクが設置されていて、高さ11メートルの水1000トンをためる巨大なタンクは、僅か2日半でいっぱいになる勢いで汚染水が増えているということです。
事故からまもなく2年を迎える福島第一原発では、収束作業のための新たな設備や施設が建設される一方で、放射線量が高い現場や津波や爆発の被害が今もあちこちに残されていて、40年かかるとされる廃炉に向けた厳しい道のりが改めて浮き彫りになりました。
最初は4号機の燃料取り出し
40年かかるとされる、世界でも過去に例のない福島第一原発の廃炉の作業では、メルトダウンによって溶け落ちた核燃料を、冷却しながら外に取り出したあと、原子炉建屋を解体する計画です。
その最初の工程となるのが、ことし11月から始まる予定の、4号機にある使用済み核燃料のプールからの燃料の取り出しです。
政府と東京電力が工程表にまとめた福島第一原発の廃炉の作業では、メルトダウンによって原子炉内や格納容器に溶け落ちた1号機から3号機の燃料を、循環させる水で冷却しながら、20年から25年後までに外に取り出したあと、最長で40年かけて原子炉建屋を解体する計画です。
この廃炉に向けた最初の重要な工程として、ことし計画されているのが、4号機にある使用済み核燃料プールに保管された燃料の取り出しです。
4号機は、水素爆発で使用済み燃料プールがある原子炉建屋が大きく壊れているうえ、福島第一原発で最も多い1533体の燃料が保管されていることから、東京電力は、できるだけ速やかに燃料を取り出す考えです。
このため東京電力は、燃料の取り出しを1か月早めてことし11月中旬から始め、取り出しを終える時期は1年早めて来年12月になるとしています。
また燃料の取り出しに向けて、壊れた原子炉建屋を高さ53メートルのカバーで覆ったうえで、燃料をつり上げるクレーンを設置する予定で、ことし1月からカバーの建設作業が続けられています。
汚染水との戦いが喫緊の課題
福島第一原発では、増え続ける汚染水を保管するためのタンクの置き場が2年半後にはなくなることから、汚染水との戦いが喫緊の課題となっています。
福島第一原発の原子炉建屋やタービン建屋などの地下には、放射性物質に汚染された水が、およそ10万トンたまっていて、建屋の外から地下水が流れ込んでいる影響で、1日に400トンのペースで増え続けています。
汚染水は、放射性物質のセシウムを取り除いたあと、一部は原子炉の冷却に使われますが、海や大気中などの環境に出さないようするため、その大部分は敷地内に設置したタンクにためて管理しています。
タンクは、原子炉が立ち並ぶ海沿いから山側に進んだ場所に並べられていて、大きいもので、高さ11メートル、直径12メートルもあります。
現在設置されているタンクはおよそ930台で、その容量をすべて合わせると、およそ32万トンに上り、このうちおよそ75%が汚染水でいっぱいになっています。
東京電力は、今後2年間かけてタンクを、70万トンにまで増やすことができるとしていますが、タンクの置き場が2年半後にはなくなることから、汚染水との戦いが喫緊の課題となっています。
また東京電力は、汚染水から、これまで取り除けなかった放射性ストロンチウムなど62種類の放射性物質を除去する装置を設置し、近く、汚染水を使った試験を始める計画で、タンクから漏れ出た場合でも環境への影響を抑えたいとしています。
しかし、この装置では、「トリチウム」という放射性物質を取り除けないことから、汚染水の問題を抜本的に解決する見通しは立っていません。
東京電力は、汚染水の増加の原因となっている地下水を井戸を掘ってくみ上げて建屋への流入を抑える対策を進めることにしています。
東電常務「汚染水処理の将来まだ分からない」
東京電力の小森明生常務は、「汚染水の処理を、将来、どうするのか、まだ分からないが社会にしっかりと状況を説明し解決策を探していきたい。
事故から2年がたつが、事故を起こした責任を胸に刻み1歩ずつでも廃炉に向けた作業を進めていきたい。
今後、使用済み核燃料や溶け落ちた燃料を取り出すとなると、もっと高い放射線量での作業になるので、遠隔操作の装置やロボットなどを開発し課題を解決していく必要がある」と話していました。
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