社説
<大震災から2年>エネルギーの将来 原発依存に後戻りするな(3月11日)
原発は安全でもなければ、安価でもない。重大事故は起こり得る。
東京電力福島第1原発事故が地域社会を無残に破壊した2年前のあの日まで、国民の多くは、こうした警告に耳をふさいできた。
電気を与えられるままに浪費する生活を見直し、原発に頼らず自由に電源を選べる社会にしたい。
福島の惨事がそんな意識を広く芽生えさせたからこそ、意見聴取会などの国民的議論を経て脱原発の民意が鮮明となった。「原発ゼロ目標」は民主党政権の思いつきではない。
自民党の政権復帰で電力の将来像は混沌(こんとん)としてきた。原発依存度の低下を目標に掲げながら、早々と原発再稼働を容認する姿勢を示し、新増設にさえ含みを持たせている。
原発問題への関心が薄れつつあるとはいえ、まるで事故など起きなかったかのような態度ではないか。破綻した核燃料サイクル政策や、処分のあてのない放射性廃棄物の問題も棚上げにされたままだ。
2年が経過した今も、炉心溶融を起こした原子炉の状態すら把握できず、事故原因の究明は途上だ。何より15万人を超える住民がいまだに避難生活を余儀なくされている。
福島の現実から目をそらし、なし崩しに旧態に戻すのは許されない。
*地域独占体制の弊害
福島の事故は、驚くほどずさんな規制の実態をはじめ、隠された負の側面の数々を明るみに出した。電力供給体制のもろさもその一つだ。
各地の原発が停止したことで電力不足が懸念され、電力各社は利用者に節電を要請した。道民は泊原発抜きの夏と冬を乗り切った。
電力会社は供給責任を果たすための目安として、8〜10%の供給予備率が必要と主張している。
裏を返せば、電力会社の言う安定供給とは、各社のエリアで常に1割程度の発電所が待機する状態だ。
しかも、全体の発電能力は、夏の午後か冬の夕方の年間数十時間にすぎない最大需要に合わせている。
各社が個別に目いっぱい発電所を建てるより、限られたピーク時には連系線を使って互いに電力を融通し合う方がはるかに合理的だろう。
こういう発想は地域独占の企業には生まれようがない。設備投資からオール電化住宅の広告費まで、一切合切を電気料金に転嫁できる総括原価方式があるからなおさらだ。
現実に電力は足りた。連系線を強化し、送電網を広域的に運用すれば、もっと楽だったはずだった。
送電網の問題は、再生可能エネルギーを主力電源に育てる上でも避けて通れない。
*発送電分離が必要だ
道内は太陽光、地熱、バイオマスなど多様な再生可能エネルギーの宝庫だ。最も有望な風力は道北だけで泊原発3基のほぼ3倍に当たる600万キロワットの潜在力があるとされる。
だが、北海道電力は風力発電の電力購入量を現行の36万キロワットから20万キロワット増やすにすぎない。
北海道と本州を結ぶ北本連系で首都圏と電気をやりとりし、不安定な風力の出力変動を抑制することで、この増枠はようやく実現した。
道北の送電網と北本連系が拡充されない限り、大幅な増加は見込めない。これでは宝の持ち腐れだ。
政府は風力発電事業者に道北の送電網増強の特別目的会社を設立させ、費用を助成する方針だ。北電も北本連系の容量を拡大する予定だが、スピード感に欠ける。
過去の経緯を見れば、地域独占に安住してきた電力会社が、地域間競争にもつながる連系線強化や、新規参入を促す送電網の公平な運用に本気で取り組むか疑わしい。
だからこそ、送配電部門を中立的な公共インフラとして、電力会社から切り離す必要がある。
*下川町が示すモデル
上川管内下川町は、木質バイオマスの熱電供給プラントにより2018年度末までにエネルギー自給を実現する方針を表明した。
特産の木材を活用した循環型エネルギーシステムで雇用を生み、災害にも強いまちを目指すという。
再生可能エネルギーの地産地消、供給基地の両面で北海道は大きな可能性を秘めており、エネルギーの自立は夢物語ではない。
時間はかかっても、こうした取り組みを広げていくことが、原発に頼らない未来への道を開く。
あれだけの深刻な事故を経験し、私たちはエネルギー政策を政府や電力会社に任せきりにしてきた過去の反省を迫られた。誰もが原発依存の仕組みを変えたいと思ったはずだ。
「電気料金値上げか、原発再稼働か」という電力会社の言い分をうのみにするのは、次世代への責任を放棄するに等しい。
危険に気づかぬふりをして安易に原発を使い続けた事故以前の状態に後戻りすることはできない。
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