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2013.03.11

新聞社(というか記者)は死んでいないという話

 ここのところ、立て続けに大手新聞社にお勤めの方と仕事の件でお話をする機会が増えております(アブラハムとかの件じゃないよ)。

 その中で、ふとした折に「デジタル対応」の話が出る機会が多く、個人名や、取材班の名前でご出版までされている、その方面では大御所の記者の方までもが「デジタルよう分からん」というお話をされます。これからはデジタルなんだろうけど、今までのことを考えるとどう対応したらよいのか悩ましいということだろうと思いますし、社としても個人としても皆さんかなり頑張って対応されようとした経緯はあるでしょうから、その成功、失敗を思い返すに、なかなか想定したとおりにはならないとお考えのようではあります。

 ただ、ずっと野良で調べものをしたり、デジタルの仕事をしてきた私どもからしますと、ぶっちゃけ新聞社にお勤めの方のほうが、その数倍も良質な記事を書くことができる蓄積がおありだろうと思うのです。取材の仕方から裏の取り方から、さまざまなところでやはり新聞記者の方が持っておられる「基本動作」は素晴らしいものがあるわけです。

 それがデジタル時代で生きないと嘆くのはまた別の話でありまして、平たく言えばデジタルで頑張ったところで新聞社でもらえる給料と同等の稼ぎを得ようとしたら無理、というだけのことです。幾ら貰ってるんですか?という話をして、1,800万と答える人が、デジタルに出てきちゃいけません。ぜったい、貴方のその良質な記事をネットに投げたり電子書籍でばら撒いたところで、都合、年間で5,000万近い売上が上がらないと貴方の給料にはならないのです。

 いやほんと、無理ですから。

 そう遠くない将来、新聞というジャーナリズム保護区はなくなってしまうかもしれないけど、その最後のバリヤーが崩壊するまでは、そこにいたほうが彼らのアドバンテージであることは間違いないのです。ネットの連中はマスゴミだなんだと批判するでしょうが、新聞という仕組みと紙のパッケージのビジネスモデルの秀逸さを考えたら、何の保障もないネットやデジタルの世界がいま流行しているからといって身を投げ込むほど良い環境かというとそうではないのです。

 先に、通信社や雑誌社がおかしくなるのでしょう。まず、彼らが給料体系を維持できなくなって、リストラをし、デジタル対応をどのようにすればいいのかを教えてくれる日がくるんじゃないかと思います。給料、半分になるでしょう。でも、その給料はネットで週何日も徹夜している人たちの二倍の給料だったりするのですよ。800万に下がった、と嘆いている出版社のデジタル担当の人、貴方たちは泣くほど恵まれているのです。

 そういう高いところからイット業界を見ているハイランダーな皆さんからすると、人間界は何と下賎で詰まらない世界と思うかもしれません。でも、私らからすると神々の時代は終わり、やがてエルフも西方に去って、人間の時代がやってくるのです。豪腕だ魔法だという世界から、殴る蹴るの時代がやってきます。そして、神を崇める人もいなくなって、神話は忘れ去られるのでしょう。

 でも、報道っていうもののスキルは脈々と生き続けると思うんですよね。そういう伝承をしなければならない時代になってから、身の振りを考えるということでも遅くないんじゃないでしょうか。中には神すぎて、訳の分からない宣託を書き綴る馬鹿もいますけど、ネットには馬鹿がいるのと同様、神にも馬鹿がいるのでしょう。

 なもんで、デジタルについてもちょっとずつ対応していけばいいんじゃないでしょうかね。そんな儲かりませんよ、デジタル分野は。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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