大阪市住之江区にある市立海洋博物館「なにわの海の時空館」が10日、閉館を迎える。長く懸案だった入館者数は、ここにきて急増。今後の施設の活用策が不透明な中、メーン展示である実物大に復元した菱垣廻船「浪華丸」もこれが見納めになるかと、注目を集める。
10日で閉館するなにわの海の時空館=大阪市住之江区 |
同館は1983年、市制100周年記念事業として建設が決定。江戸時代に大坂−江戸の運輸を担った菱垣廻船を約10億円かけて復元し、クレーンで施設内部に搬入した上で、ガラス状のドームで外壁をつくり、2000年にオープンした。
年間の目標入館者数を60万人に掲げていたが、2000年が約20万人と出だしからつまずいた。外郭団体への委託から指定管理者制度の導入に切り替えるなど改善に努めたが入館者数は低迷、赤字が続き、昨年9月に市議会で廃止する条例案が可決された。
市によると入館者数は近年9〜10万人で推移していたが、本年度は増加傾向にあり、2月末時点で前年同期に比べ約7400人増の8万9927人。3月に入り1日平均700人が訪れているという。
初代館長で、退任した後も同館に足を運びボランティアで解説を行っているというエッセイストの石浜紅子さんは「最近は数が増えているだけではなく、こまめに写真を撮るなどしっかり見て、時空館を自分の記憶に残そうとしてくれている」と目を細める。
閉館後の施設の活用策については、市が新たな運営団体を公募したが手が上がらず、浪華丸の行方も含めすべてはいまだに「白紙のまま」(市担当者)。橋下徹市長も「よくこんなものを造ったものだ」と当時の行政判断を批判する。
ただ石浜さんは「大阪は笑いだけではない。港や海、船と育ってきた文化や歴史があり、自分たちの中に根付いている」と海洋博物館が大阪にあった意味を強調。閉館まで残りわずかだが、市民らに向け「展示内容などを心にとどめ、自分たちの町についてさまざまなことで関心をもってほしい」と話していた。
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