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声明

本日,東京高等裁判所第5民事部(根本眞裁判長)は,日中戦争中に日本軍によって性奴隷とされた元「慰安婦」4名の控訴人が,日本政府に対し各2300万円の損害賠償を請求していた事件の控訴審で,控訴人らの請求を棄却する不当な判決を下した。

本件訴訟は,日中戦争中の1942年頃,中国山西省盂県において,4名の控訴人が「性奴隷」として想像を絶する肉体的及び精神的苦痛を被り,日本兵に慰み 者にされた女性として戦後も失意の人生を歩まされて,あまつさえPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を呈して今日まで苦しみ続けてきたことについ て,日本政府に対しその損害の賠償を求めて1995年8月7日に東京地方裁判所に提訴したものである。

本判決は,この間なされた一連の戦後補償裁判の判決の潮流に反し,現在の法理論の水準を一切踏まえることなく,論証を欠いた旧来の形式的理論のまま国家無 答責の法理の適用,除斥期間の適用を認めることにより,控訴人らの請求を棄却したものであり,きわめて不当な判決である。

しかしその一方で,本判決は,日本軍によって「慰安所」が設置され,日本軍の管理下に女性を置き,日本軍将兵や軍属に性的奉仕をさせたこと,さらに北支那 方面軍が,同年から1942年にかけて徹底した掃討,破壊,封鎖作戦を実施し(いわゆる三光作戦),日本軍構成員による中国人に対する残虐行為が行われた こと,このような中で,日本軍構成員らによって,駐屯地近くに住む中国人女性(少女を含む)を強制的に拉致・連行して強姦し,監禁状態にして連日強姦を繰 り返す行為,いわゆる「慰安婦状態にする事件」があったとし,悪質極まりない加害事実を明確に認定した。

さらに控訴人らの被害事実に関し,たとえば控訴人劉面換については「上記の拉致・連行・監禁・強姦等により多くの傷害を負わされた。特に銃底で殴られた左 肩の傷はその後も治らず,そのため左右の手の太さや長さが違ってくるまでになったり,左手では物も持てない状態であるなどの苦しみが続いている。」と判示 し,控訴人周喜香についても,「今なお上記のような暴行・強姦による恐怖を繰り返し思い出すことを余儀なくされるなど,精神的に苦しむ日々が続いてい る。」と判示する等,現在に至るまでの後遺障害を含む極めて深刻な被害を詳細に認定した。

また,日中共同声明によって中国国民個人の賠償請求権が放棄されたかの争点に関し,本判決は,「文言上,中華人民共和国が個人の被害賠償まで放棄したとは 直ちには解し難いこと,戦争による国民個人の被害についての損害賠償請求権という権利の性質上,当該個人が所属する国家がこれを放棄し得るかどうかについ ては疑問が残る上,この声明によっても中国国民は戦争被害について何らの補償,代償措置を受けていないこと等を総合すれば,日本政府の認識がどうであるか にかかわらず,中国国民個人が被った損害についての被控訴人に対する損害賠償請求権が日中共同声明によって放棄されたとは解しがたいというべきである。」 とした。この判示は,これまで地裁,高裁によって繰り返されてきた判断を,改めて東京高等裁判所が明確にしたものであり,きわめて意義が大きい。

日本政府はこの司法判断を真摯に受け止め,直ちに控訴人らを含む中国人「慰安婦」被害者たちに対し,誠意ある謝罪を行い政治的解決をはかるべきである。

弁護団は,本件につき直ちに上告するとともに,本日の判決を契機にして,一連の戦後補償裁判での早期の全面解決をこれまで以上に強く求め,内外の世論と運 動を力にしつつ,一日も早く日本国がこれら被害者に対して,謝罪と賠償を行うべく,最後まで戦い抜く所存であることを表明し,本判決に対する声明とする。

2004年12月15日
中国人戦争被害賠償請求事件弁護団 団長 尾山 宏
中国人「慰安婦」裁判事件弁護団   団長 大森典子 

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