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作品解題:「ソルジャードール列伝 バンパイアマリオン」
【執筆の経緯】本作への関わりのきっかけは2ちゃんおにゃ改スレが色々ともめていた時期で、蟻蜂フリーク様より、もう筆を折ろうかと思うので、よければ書きかけの作品をmaledictの手で完成させられないか、という主旨のメールと共に本作の草稿を頂いたことに発しています。「断筆」ではなく、せいぜい活動休止の方向で、と説得しつつ、当方もこれはこれで面白くなり、自分勝手な改稿案を提示したところ、蟻蜂フリーク様としては改めて創作意欲が湧いてきたとのことで、断筆は見合わせ、maledictの改稿部分を取り入れつつ、自分の作品として完成させたいとのお返事を頂き、最終的にmaledicted
BBSでの投下に至った、という流れです。蟻蜂フリーク様はその後もいくつか作品を執筆されましたが、現在は休止中の模様です。また復帰される日を楽しみにしています。
【分担など】元々の蟻蜂様の草稿と本作の大きな変更点は主に前半、骸教授とバンパイアマリオンの会話からバンパイアマリオンの覚醒シーンまでです。草稿ではバンパイアマリオンの覚醒の経緯がもっとあっさりしていました。つまり、
専用プペロイド不在のバンパイアマリオンが骸教授に不平を言いに行く→人間態になって街に潜伏するといいことがある、という指示を受けて、首をかしげつつ渋谷へ→渋谷でちんぴらにからまれ、ギャル風の人間に擬態したR-02108号が秒殺。血を見てむらむらする→偶然交通事故を目撃し、またむらむらする→六本木でクロアゲハマリオンからコップ入りの血液を渡され、それを飲んで覚醒
だいたいこんな感じの展開でした。岡目八目というか、他人の創作に文句や不満を言うのは簡単、ということでしかないのですが、自分的にはちょっと萌えない、直せるものなら直したい、と思えるポイントがいくつかありました。
例えば、まずは、コップ酒ならぬコップ血液一気飲みでの覚醒。これは直接吸血することでの覚醒に変えたい。
この辺までは修正案がさらっと浮かんだのですが、他が難しいと気付きました。吸血鬼の能力をもっている少女が、自分の隠された本性に気付く、というシークエンス。これが多分前半の萌えのポイントだろうと思ったのですが、ソルジャードールにそれをやらせるのは実は難しい。すでに心身共に完全に異形化しているわけなので、「吸血」の能力が覚醒しても、それは「バージョンアップ」に過ぎなくて、異形化の恐怖やおののきは期待できない。うーん…ということで、バンパイアちゃんが一時的に記憶と特殊能力を失ってただのリカちゃんに戻ってもらう、というアイデアが浮かびました。
これが我ながらおいしいと思ったのは、ソルジャードールが「下等動物」に変えられる(…本来ならば「もとの人間に戻れる」と言うべきなのに、もうそういう風には思えないように改造されてしまっている(涙 )、というシチュエーションに怯え、抵抗し、絶望する、という極めて倒錯し屈折した「改造シーン」が演出できるじゃないか、と思い至ったときです。そればかりか、退化形態からの復旧シーンでもう一度擬似改造シーンをもってこられる(実のところ改造手術はとっくに終わっていても、本人にとって今が「そのとき」であれば十分に「改造の恐怖」は演出できる…というのは今気付いたらすでに「追憶の改造手術室」や「アンチショッカー同盟仙台支部」の第一話でやっていたことでした)。ただもちろん、こっちについては純然たる「改造」ではなく、「覚醒」でなければいけませんが。またついでに言うと、「本物の改造ではない」という言い訳があったせいか、あるいは「他人名義の作品だからいいや」という思いがあったのか(←ひでえ)、普段なんとなく抵抗のあった「あからさまにレイプの隠喩」な改造シーンを上記二回でやっちゃっています。
バンパイアの記憶喪失、という設定変更に伴い、R-02108の役割が大きくなり、「釜石マリ」という人間名とその架空のプロフィールが出てきました。「釜石マリ」は偶然にしてもよくできた名前のような気がします。アナグラムどころか、「かまいしまりかまいしまりか」と書いてみれば分かりますが、よく見たら舞島リカの「カ」を頭にもってきただけで出来上がる名前なんですね。ついでに、交通事故をR-02108の仕業に変えたり、喧嘩や自動車事故のグロ描写を増やしたりなど、脚色者の人徳の程が知れるいやな改筆もこの辺は多いです。
バンパイアの覚醒後、「糸がつながる」までのわずかの空白期間を挿入したんですが、これは以前読んだ洗脳SSの名手Enne氏の作品にそういうシーンがあって、その未決定でふわふわした感じが何だかとてもよかったので、真似させてもらった部分です。ちょっとちぐはぐだった感じもありますし、できればサラリーマンのあんちゃんではなく、美少女二人にやらせたかった気もしますが、読み手の感情移入を考えるとこれはこれでありかもしれません。
後半の襲撃シーンはまるまる蟻蜂フリーク様の原案どおりです。こういうシーンは氏の独壇場だな、と思います。自分では書きたくとも書けない部分を書いて頂きつつ、好きなところを好き勝手改作する、という機会を頂けたのは思い返すとやはりとてもありがたいことでした。ありがとうございました。
実は原案ではこのあと美貴さんの改造完了のシーンが出てきて、その後が未完、という構成だったのですが、メールのやりとりの中で、そちらはまた続編の違うSSとして氏がまとめる、ということになりました。たしか、続きの部分はまだ形になっていなかったような気がします。蟻蜂様の復帰に期待です!
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