(cache) SS投稿用スレ（蟻蜂フリーク）

SS投稿用スレ（蟻蜂フリーク）

1 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:33:49

とりあえず、専用スレ立てて投下します

2 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:35:17

「ソルジャードール列伝　バンパイアマリオン」

【東京　千代田区丸の内　東光商事本社】
日本一の売上高を誇る超一流商社に一般職で採用された小倉美貴は投資金融事業本部でアシスタント業務をしていた。
明路大学法学部卒業後、入社してから２年が過ぎようとしている。
「おい、小倉君、これコピー７部たのむ。」
課長の武井がPCの画面を見ながら、書類を持った左手を軽く挙げて振っていた。
「はい、課長。」
書類を受け取って、コピー室へ向かった。
「あら？小倉さんじゃない、元気？」
通路で声をかけられた。声の主は同期で秘書室に配属されている杉山美咲だった。
彼女は総合職で入社し、国立の御茶乃水女子大文教育学部英文学科卒の美人である。
ただ、彼女は一流大卒を鼻にかけた嫌味なところがあり、美貴は正直なところ彼女を嫌っていた。
「ああ、杉山さん・・・お疲れ様。」
「コピー取り？一般職ってラクでいいよね～。知ってる？ウチも一時期、一般職の採用しなかったんだって。派遣社員とかのほうがコストが
安いからね。まあ、最近、うちらが新卒の時、一般職採用、復活したみたいだけど。儲かってるってことなのかな？天下の『商事』だしね。」
自分をはじめ、一般職を見下した態度・・・・・相変わらずだなと美貴は思った。
「それにしても小倉さん、運よかったよね。一般職で採用してもらえて。明路から体育会系の男子はともかく普通の女子が総合職なんて
逆立ちしても無理だもんね。結婚までの腰掛にはここって最高の場所だよね。」
美咲は完全に自分を見下していた。
「仕事がんばろうね～　じゃあ。」
・・・・・・本当にムカツク女だ。美貴は気分を損ね、膨れっ面でコピーを取った。

3 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:36:36

【アジト　研究室】
「骸教授様・・・・なぜ私にはプペロイドを配下としてもらえないのですか？」
バンパイアマリオンが骸教授に自分だけが配下のプペロイドをつけてもらえないことに抗議していた。
その声には現在の処遇への不満がありありと現れていた。気の強い勝気な性格だけは改造後も変わっていなかった。
骸教授はそんな態度を冷ややかに眺めつつも、面白そうに口を開いた。
「バンパイアマリオンよ。何故だか教えてやろう。お前には他のソルジャードールと違う極めて特殊な能力があるのじゃ。
お前はまだ気づいてないじゃろうがのぉ～　ホッホッホ」
「特殊な能力？他のソルジャードールと違う？？」
バンパイアマリオンの険しい顔が緩み、どこか得意げな表情に変化した。
骸教授の言葉は、バンパイアマリオンが下等動物だった頃から引き継いでいた高い自尊心を刺激したからである。
「他のソルジャードールにない、私だけの能力。それがあるからこそ、私には配下のプペロイドがいない。
・・・・いや、必要ない。そう理解してよろしいのですか？」
「飲み込みが早いのぉ。左様、お前には秘められた能力があるのじゃ。・・・・ふむ、ぼちぼちその時期が来たと考えてもよかろう・・・・。
よし、お前のその能力、これより解放してやろう。ホッホッホ」
バンパイアマリオンの顔がパッと輝いた。自分は冷遇されていると思っていたが、それは実は自分が他のソルジャードールにない能力を
持っているためだった。いわば自分は『選ばれし』者なのだ。そんな意外な喜びが彼女の心を満たしていた。
「本当ですか！お願いします！！」
「よし、では早速始めるか。プペロイドR-02108号！準備しておった『アレ』をもってくるのじゃ」
R-02108号と呼ばれた女性型プペロイドは指令を受け、ソルジャードール用エネルギー充填ノズルと、見たこともない機械を運んできた。
「エネルギーの充填でしたら、今朝行ったばかりです。・・・あ、それとも何か特別のエネルギーの注入が必要なのでしょうか？」
バンパイアマリオンは首を傾げながら言った。

4 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:37:26

「充填ではないわい。これから『放電』を開始するのじゃ」
骸教授は冷ややかな声で言った。
バンパイアマリオンの顔がさっと青ざめる。
「ほ、放電！？エネルギーを吸収されるのですか？・・・それは、どの程度まで？」
「ほぼゼロに近い量までじゃ」
淡々と語る骸教授に、バンパイアマリオンは慌てて言った。
「・・・すみません。新しい能力など要りません！だから、放電なんて・・・放電なんてやめて下さい。・・・・し、失礼します」
一礼して研究室を出ようとした彼女の背後にはいつの間にかプペロイドR-02108号が回り込んでいた。
「オ許シクダサイ。ばんぱいあまりおん様」
プペロイドはバンパイアマリオンを特殊繊維によって全身を拘束した。
――拘束具そのものは、全エネルギーを解放すればどうにかなる。だがそれは、自らの肉体にも多大な苦痛をもたらす。
それに、基地内でそんな常軌を逸脱した行動をおいそれととるわけにもいかない――
バンパイアマリオンはそう考え、抵抗を断念せざるを得なかった。
黙ったままR-02108号に拘束されているバンパイアマリオンの両足を、骸教授が開いた。
そしてその間の、陰毛一筋ないスリットを左指で押し開く。暗灰色の外皮の内側に広がる、燃えるように真っ赤な肉質がむき出しになる。
骸教授は右手に持った細長い貝殻のような「放電器」をバンパイアマリオンの膣口にずぶりと挿入し、放電装置のスイッチを入れる。
「・・・・・う・・・・・・・く・・・・・・」
バンパイアマリオンの全身に、性行為直後の虚脱感から快楽の名残のみを差し引いたような、最悪の倦怠感が襲う。
そしてその体表組織の暗灰色が徐々に薄れ始める。
「・・・・あ、あ、ああ・・・・・」
ソルジャードールの栄養補給は通常の消化器からでも可能であるが、
ヘルマリオン基地では通常、性器からの「エネルギー充填」によってなされる。
電気エネルギーを変換し体内の「ハイパーグリコゲン嚢」に蓄積する。
そして同じ装置をある仕方で逆転させれば、体内に蓄積されたエネルギーを急速に消費させることもできるのである。
エネルギーの急速な消耗はソルジャードールの肉体を一種の危機的状況に追い込み、一定の防衛反応を引き出す。
つまり、エネルギー消費の高い改造細胞を休眠、縮小させ、その代わりにエネルギー消費の低い通常の人間細胞を急激に増殖させ、
全身を覆わせるのである。それは、ソルジャードールの肉体が一時的にであれ、無改造の人間に限りなく近い姿に戻ることを意味する。
「・・・ああ！いや！下等動物に戻るのはいや！！」
見る間に体色が薄れ、肉体の装飾が縮退していく様子を目にしたバンパイアマリオンは発作的な恐怖に支配され、絶叫していた。
ソルジャードールは「擬態」の能力によって無改造の人間に「化ける」ことができる。
しかし、今、彼女に起きているのは、それとは似て非なる変化である。
擬態能力によって変化するのはあくまで肉体表面の色彩や形状のみであり、
一皮剥けば、そこにあるのは依然として人にあらざる超生物の肉体だ。
セーブされた出力は随時に解放することができるし、人間の何十倍もの感覚能力も維持される。そもそも「擬態」の状態はソルジャードール
にとって、あくまで不自然な一時的状態であり、ある程度の修練を積まなければ維持し続けること自体困難なほどなのである。
しかし、現在、バンパイアマリオンが被っているのはそのような変化ではない。
それは改造細胞の休眠による、文字通りの「退化」の過程である。超感覚は鈍く不鮮明になっていき、全身にみなぎっていた活力が、
"かつて自分がそのような生きものとして十数年を過ごしてきたとはとても信じられないほどに衰える。
"
まるで肉体が狭い牢獄に閉じこめられていくような虚脱感が延々と彼女を襲い続ける。
そして彼女が誇っていたソルジャードールの「美しい」肉体は、いまやその内部までみすぼらしい「下等動物」のそれへと変容していく。
美しいビロードのような皮膚は生白い柔弱なそれに変ずる。頼りない弾力の乳房に赤黒い乳首。股間には不規則に生い茂る真っ黒な恥毛。
「いやっ！！」
バンパイアマリオンは途轍もない羞恥心に襲われる。この広い基地で、実験用捕虜を除けば自分だけが唯一の「下等動物」なのだ。
いますぐこの身を両手で隠し、誰もいない部屋に駆け込みたい！だがその肉体は無惨にも拘束され、露わにされ、
その全身を骸教授に舐めるように観察されている。
「・・・・ああ、教授・・・お願いします・・・もう・・・もう、やめて下さい・・・これ以上エネルギーが低下すると・・・・」
普段の勝ち気な彼女の姿はカケラもなくなっている。
「いや、まだ不十分じゃ」
冷淡に骸教授は返答した。

5 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:38:14

「・・・おお・・・これ以上低下したら・・・人工頭脳が・・・人工頭脳が停止してしまいます！・・お願いします！今すぐ放電を止めてください！！」
バンパイアマリオン・・・いや、もはや人間・舞島リカとしか呼びようのないその個体は、その目から遂に涙をこぼし懇願し始めた。
「やむを得ん処置なのじゃ。お前さんには一時的に狂ってもらうことになるわい」
「それだけは！それだけはご勘弁を！！」
「安心せい。溶解装置が作動しないよう、抑止因子を注入しておるわい」
人工頭脳の停止したソルジャードールは、ヘルマリオンの秘密を隠蔽するための溶解装置が動作し、跡形もなく消えてしまうのだ。
骸教授は、その溶解装置が抑止されていることを請け負っている。
だが、それを聞いたリカは、なおも懇願することをやめない。
「そんなことはどうでもいいんです！いえ！人工頭脳が停止するくらいなら、溶けて死んだ方がマシです！！」
リカの外見をした生きものの心を満たしているのは、溶解への恐怖ではなく、人形としての、
ヘルマリオンの支配から切り離されることそのものへの恐怖だった。
絶対安全な庇護と、絶対確実な命令の授与を停止され、不確実で、混沌として、敵意に満ちた世界に独りぼっちで放り出される。
しかも、虚弱極まりない「下等動物」の肉体という牢獄に閉じこめられて
――そんな状態に、たとえ一時でも送り込まれるくらいなら、溶解によって永久の死の世界へ送り込まれる方がはるかに幸せだ――
それが今の、もはや誰の目にも「舞島リカ」にしか映らない、哀れなバンパイアマリオンの偽らざる心境であった。
「こうやっての、お前さんの体内の特殊な器官を、一時的に極度の飢餓状態に追い込まねば、最終的な『覚醒』は生じんのじゃ。
なに、半日もかからんわい。それが済めば今度こそお前さんは完成体じゃ。ホッホッホ」
骸教授の最後の言葉は、恐怖と絶望のあまり気を失った、リカの姿をした生きものの耳には届いていなかった。
骸教授はぐったりとした白い裸身をしばし眺め、やがて計器を確かめると放電装置を引き抜いた。
それから女性型プペロイドに向かって言った。
「R-02108号よ、渋谷に向かい、バンパイアマリオンの『覚醒』のサポートを行うのじゃ！」
「ハイ。了解シマシタ！」

6 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:39:11

【東京　渋谷区　明治通り　渋谷駅付近】
「リカ！リカ！起きて！着いたよ」
「・・・ううん、ムニャ」
"舞島リカ・・・であるはずの少女が目を覚ましたのは、フカフカしたリムジンのシートだった。
"
横では聞き慣れた声の主が彼女を揺すぶっている。
目を覚ましたリカの横には、今風のギャルファッションに身を包んだ、短大生風の女性が座っていた。
「・・・ええと、どこなんだっけ？あなた誰？」
寝ぼけ声でリカが女性に声をかける。
「リカったら！ほんっとに寝起きが悪いのね。売り出し中の高校生モデルが、プロ失格だぞ！」
モヤのかかった頭が急速に晴れていき、今の今までなぜそんなことを思い出さなかったのか、といぶかしくなるほどに、
自分が今どこで何をしようとしていたのかを思い出した。
――そうだっけ。彼女の名は釜石マリ。モデル仲間の短大生。今日は大富豪である彼女の家のリムジンに乗って買い物するという
ゴージャスな企画で渋谷に繰り出したのだった。
だが昨晩の撮影が長引き、寝不足のあまり、フカフカのシートで熟睡してしまった。そうだっけ・・・・・・そうだよね？
二人でリムジンを降りた。
「電話したら、また迎えに来てちょうだい」
マリの言葉にドライバーの老人はうなずき、リムジンは去って行った。
「さて、どこにいこうかな」
そう言いながら二人は並んで歩き始めた。モデル二人の艶やかな姿に、道行く男性は思わず振り返らずにはいられない。
「ねぇ、ボクたち、会ったことあるよねぇ？どこでだっけ？」
ロン毛の男と短髪で髪を茶色に染めた男の、ともに20歳前後の2人組が声をかけてきた。ナンパである。
「はぁ？自分の顔、鏡で見なよ」
リカは足を止めることなく、その場を去ろうとした。
「ちょっと、まってよぉ～　これって運命の出会いじゃん。」
2人組は諦めることなく、ついて来た。
「うるせーよ。誰に気安く声かけてんだよ？キモロン毛！」
リカが怒って言った。結構、しつこい2人組みだった。マリももちろんだが、リカの容貌とスタイルは群を抜いている。
しつこくなるのも当然だった。
「おい、少し綺麗だと思って調子こいてるんじゃねぇぞ？」
茶髪の男がキレたようだった。

7 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:40:21

「マジでウザイなぁ～、この下等動物が・・・・・・・」
リカは思わず口走った自分の言葉に軽い違和感を覚える。気の強いのは普段からだが、「下等動物」なんていう変な罵倒文句、
普段の自分はまず使わない・・・・。
挑発された気の荒そうな２人組はリカに詰め寄り、一人は胸ぐらに手を伸ばしかけていた。
リカは一歩も引かず、２人をにらみつける。
そのときだった。マリがリカの前に歩み出て、ものすごい速さで腕を前に差し出し、２人の男の鼻を指ではじいた。
はた目にはごく軽微な打撃である。だが、２人の男はぎゃっと悲鳴を上げてのけぞり、両手で鼻を押さえてその場にうずくまった。
大げさなリアクションをする２人に対して通行人が半ば嘲笑気味に通り過ぎる。
「ぐぅぅぅ・・・・・・・・・」
だが、すぐそばで見ていたリカには、２人の打撲が軽微なものではないことがわかった。
鼻が明らかに変形し、裂けた肉の間に何か白いものが覗いている。そしてその傷口とひしゃげた鼻の穴からドクドクと赤い血が流れている。
一体マリは何をしたのか？いぶかるリカは、しかしその直後、その赤い液体を見た瞬間、まるで吸い込まれるように魅入られ、
放心状態になりかけた。そんなリカの耳には背後で密かに発された、マリの無機的なつぶやきも入ることはない。
「第一ノ刺激入力完了シマシタ。任務続行シマス・・・」
リカの放心状態はマリの手によって直ちに破られ、リカは現実に引き戻された。
「リカ、何見てるの？行くよ！」
マリに手を引かれ、リカも足早にその場を立ち去った。うずくまる男たちが尋常でない深手を負っていることが明らかになり、
大騒ぎが始まる頃には、２人の女性の姿は消えていた。

8 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:41:03

【東京　渋谷区　道玄坂】
別の通りを歩きながら、リカはただごとでない変調を遂にマリに訴えた。
「ねえ、マリ、まだ11時前だよね・・・ちゃんと朝ご飯は食べたのにおかしいなぁ・・・無性にお腹が空いちゃったんだ。どこかに入らない？」
マリは何故かうれしそうに返事する。
「いいよ！何食べる？イタリアン？フレンチ？和食？それともエスニック？」
聞き返されたリカは妙なことに気付いた。リカは普段、マリから今のような質問をされれば、どれもおいしそう、何を食べよう、
と迷うに違いないのだ。だが、今日に限っては、そのどれもが食欲をそそらない。
中華、甘味、その他の定番のメニューのどれも、今の自分にはピンとこない。かなりお腹が空いてるのに。
・・・・・・おかしいなぁ。
首を傾げながらリカは言った。
「うーん、何か変だけど、どれもピンとこないんだよね…」
話しながら２人は信号待ちの人混みの最後尾まできて歩みを止めた。
「だと思った！いいわ。わたしがいいトコ教えてあげる！」
マリがニコニコして言った。そして彼女がそう話しながら信じられない動作を行ったようにリカには見えた。腕を一瞬信じられない角度に曲げ、
前に立っていた華奢な青年を持ち上げ、空中高く放り投げたのである。
・・・・いや、そのように見えた。少なくとも、ニコニコして自分に話しかけているマリの前の男性は一瞬後には空中に飛び上がり、
次の瞬間には地面に叩きつけられていたのは明らかな事実だった。
ドンッ！
男の肉体は走ってきた車に衝突し、バウンドして隣の車線に落下して、別の車に轢かれた。
偶然なのか、２人が信号待ちをしていた場所からは、その様子が逐一目に入った。
リカ以外、この事故とマリの動作の結びつきに気付いた者はいなかったようで、野次馬の注目がこちらに向くことはなかった。
見れば、明らかに事切れている男性の遺体、あるいは半ば肉塊と化しかけた物体から、夥しい血がドクドクと流れ出している。
リカはその真っ赤な液体を目にして、二度目の、先ほどよりもさらに強烈な放心状態に陥った。
その様子をじっと見ているマリはリカの背中に手をかざし、それを奇妙な仕方で動かしている。
リカの体内から出てくる何かを受け止め、調べている、という形容が当てはまりそうな不思議な手の動きだった。
短くない時間、放心状態のリカの「検査」を行っていたマリは何かを小声でつぶやき、こくりと頷くと、リカの肩に手をかけ、声をかけた。
「リカ、行くよ！とびきりおいしいごちそうを食べさせてあげる！」

9 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:41:35

【六本木ヒルズ　Dr.ボーンズ・ファンド】
骸教授たちが去った後も、Dr.ボーンズ・ファンドはヘルマリオンの拠点の１つとして機能していた。
ちなみに社員はすべて財テク専門プペロイドEタイプと偵察・諜報用プペロイドRタイプで編成されている。
バンパイアマリオンもここを潜伏中の活動拠点にするように命令された。
中で誰かと熱心に電話をしているのは、２０歳前後のファンドのスカートスーツが似合っている女社長、
経済部門を担当するクロアゲハマリオンである。
その人間態、屋島綾香はT大の準ミスに輝いただけあってかなりの美人であった。
改造後も社長業以外に文科Ⅱ類の学生として最高学府T大に潜伏し、学生企業家として世間の脚光を浴びていた。
綾香の姿をしたクロアゲハマリオンは、妖しい笑みを浮かべ電話の主と話している。
「・・・は。それでは、バンパイアマリオンが？・・・商談とタイミングを合わせて到着？…は。了解しました。例の装置は稼働可能です。
・・・では、手はず通りに・・・・」

【東光商事本社】
オフィスは慌しく電話が鳴り、各社員のPCには頻繁に社内外からメールが送られてきた。彼らは皆、それらの対応に追われていた。
もちろん美貴も例外ではなく毎日忙しかった。
「ねえ、小倉君、六本木ヒルズのDr.ボーンズ・ファンドって会社が新規でうちにベンチャー･キャピタルを依頼してきて、審査の結果、
うちと取引することになったんだ。それで、明日、その打ち合わせに同行してくれないか？いつもオフィスに１日中缶詰だろ？
たまには気分転換もかねて外回りにつれてってあげるよ。」

美貴より5つ年上の営業マン、玉木が話しかけてきた。
「えっ！行きたいですけど、よろしいんですか？私なんか連れて行って・・・・・・」
「ああ、課長の許可いただいてるから問題ないよ。それに向こうの社長さん、まだ20歳なんだ。参っちゃうよ。若すぎるよなぁ～
ほら、最近、何かと話題な準ミスT大の女子大生社長の会社だよ。年の近いコも連れて行ったほうがいいんじゃないかなって思ってさ。」
「あぁ、知ってますよ。そこって、あの会社だったんですか？」
「そう。そういうことで、ひとつよろしく！」
玉木はそう言って美貴の肩をポンと軽く叩き、外回りに出かけて行った。
・・・・やったぁ！明日は外回りだ。社長さんってテレビか新聞でしか見たことないけれど、どんな人なんだろう？
私より4つ年下なのにえらいよね～
美貴は早く明日にならないかと楽しみになっていた。

10 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:42:32

【六本木ヒルズ　Ｄｒ.ボーンズ・ファンド】
翌日、玉木と美貴はＤｒ.ボーンズ・ファンドを訪問した。
2人は応接室のソファーに並んで座り、向い合って座っている社長の『屋島綾香』と商談もそこそこに世間話をしていた。
「すごいですね～、その年で成功するなんて。私が20歳の頃なんて、サークルだとかで遊んでばかりでしたよ。ははは」
横で玉木が愛想よく話しているのを営業マンではない美貴は微笑んで聞いているだけだった。
玉木からも必要なこと以外、何も喋るなと言われていた。
「小倉さん、でしたっけ？お綺麗ですね。『商事』さんは美人ぞろいとは聞いていましたけど、噂はほんとうだったんですね。」
綾香が美貴に話しかけた。
「い、いえ、美人だなんて・・・・屋島社長さんこそ、準ミスＴ大で・・・・私なんか全然です。頭も悪いし・・・・・・」
「あら？そんなことないですよ。立派なソルジャー･ドールになれますよ。」
「ソルジャー・ドール？」
何のことだろう・・・美貴は思った。
「そう、ヘルマリオンの改造人間にね・・・・・・・フフフフフ」
綾香は怪しげな表情になった。
「改造人間ですか？いや～なれるもんならなりたいですね～。24時間働いちゃいますよ。ハハハハ」
玉木は綾香の様子がおかしいのに気づきながらも、場の空気を変えようと試みた。
「残念ながら、男は知力か体力が飛びぬけてないとなれないの・・・・・・あなたみたいな中途半端はダメね」
綾香は玉木に真顔で冷たく言い放った。
「あちゃ～。これはキツイなぁ・・・・・社長、せめて戦闘員にはなれないですかね？特撮、お好きなんですね。アハハハハハ」
「戦闘員になりたいの？」
「え？はい、なってみたいですね。『イーッ』なんて絶叫しちゃったりして。アハハハ」
「よかった・・・・ちょうど、ウチも実験がてら1匹欲しかったんですよ。」
・・・・・ジョークに乗ってくるか・・・本当に特撮好きなんだなぁ、この社長さん。今度アキバで何かご機嫌取りに何か買って送ろうか・・・・
玉木にはビジネスのことしか頭になかった。
「社長、戦闘員っていっても、すぐやられるのは無しですよ。アハハハハ」
「きっと、強くなると思うからから大丈夫よ。」
綾香は不敵な笑いを浮かべて言った。玉木は苦笑する。変わった持ちあげ方をする人もいたもんだ。

11 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:43:09

そのときだった。応接室の窓越しに、オフィスに高校生くらいの少女と、もう少し年上の若い女性が入ってきたのが玉木の目に入った。
どちらも相当の美貌とスタイルを誇り、特に高校生らしい方は飛び抜けた水準だ。
玉木は思わず目を見張り、突然の闖入者を観察していた。高校生の方は怪訝な顔をして、連れに話しかけている。
「・・・マリ？レストランに行くんじゃなかったの？何なの？ここは」
キョロキョロとあたりを見回す高校生を、年上の方が手を引き、玉木たちの方に近づいてきた。
年上と思しき女性の導きで、２人はとうとう応接室の中に入ってきた。２人を確認した綾香が、謎めいた微笑を浮かべ、玉木を見つめて言った。
「まずは、この少女が人間の姿を失う様子をじっくりご覧なさい」
その言葉と共に、玉木たちは信じがたい光景を目にすることになった。
はじめに、年上の女性が高校生の少女の背後に回り、彼女を羽交い締めにした。
そして、その華奢な体からは信じられない力を発揮し、少女の下半身をソファーの背もたれに載せる。
ソファに座っていた屋島社長はテーブルの脇にあったアタッシュケースを開いた。
そして中から、細長い貝殻のような部位のついた、どことなく卑猥な器具をとりだした。
続いてそれを片手に持つと、背もたれの上に乗った少女のスカートをまくり上げ、
むき出しになった水色のショーツを一気にずり下げて床に捨てた。
少女は突然の出来事にしばらく声を出すのも忘れている様子だった。だが、ショーツに手がかかったあたりで我に返り、わめき始めた。
「いや！マリ？何のまね？それにあなたは誰なんですか？何なんですか？わたしに何を？いや！やめて！」
気の強そうな少女は、それでも目に涙を浮かべながらもがき続けた。しかし両腕はびくともせず、足をばたつかせるのみだ。
やがて片手で二本の腕を拘束し始めた年上の女性の腕に、片足を固定され、もう一本の足を屋島社長の左手で拘束された。
屋島社長の腕力も並の人間のものではなく、今や哀れな少女は、玉木と美貴の真正面で両足を大きく広げ、
そのピンク色の秘部を露わにさらす姿勢にされている。
玉木も美貴も、事態の急激で常軌を逸した展開に半ば茫然自失となっていた。
屋島社長は少女の固定が済むと先ほどの怪しげな機械を取り出し、その突起を高校生の少女の局部にズブリと挿入した。
「うぐっ…」
少女はうめき声を上げ、やがて挿入された突起の周囲からじわりと血がにじみ始めた。
それから、不気味な音を立てて機械が動作を始める。
「ぎゃあああああああああああ」
少女は絶叫した。ただのバイブではなく、何か電気のようなものを流されているらしい、と、玉木は混乱しかけた頭でどうにか判断する。
・・・・・・何なんだ？・・・たしか,部下のキモヲタが酒の席で「改造手術って,あれはレイプの隠喩なんです」とか言ってたっけ。
さっきこの屋島という女はこの少女を改造するみたいなことを言っていた。
だが、こりゃ「隠喩」じゃなくて「直喩」じゃないか？・・・犯罪じゃないのか？
・・・いや、これはあくまで悪趣味な余興で、この少女はAV女優かなんかなのか？
しかしあの声、そしてこの血、とても演技とは思えない・・・・・
驚愕のあまり腰の抜けた状態にあった玉木は、そのせいか、かえってそんな冷静な思考をめぐらせていた。
彼が真に信じられないものを見たのはその後だった。電流を流された少女の姿が、変貌を遂げ始めたのだ。
皮膚の色が暗灰色になり、やがて着ている衣服がバラバラにはじけ飛んだ。
その口からは牙が生え、耳は尖り、両腕はコウモリの翼のようになっている。
少女は自分自身の肉体の変貌に気付き、狂乱の度合いを増した。
「いやぁぁぁ！何これ！こんなのいやぁ！戻して！元に戻して！お願い！」
だが少女の懇願も空しく変貌は進み、少女はとうとうコウモリと人間が合成されたような奇怪な生きものに「改造」されてしまった。
「改造」が終わる頃には、少女は抵抗する力が尽きたのか、口数も減り、四肢はぐったりと力を失い、その目はとろんと濁り始めた。
同時に、少女を拘束していた短大生風の女性もその姿を変じはじめ、やがて人間のようで明らかに人間でない、
人形のような奇怪な物体に変わっていった。
やがて少女の「改造」の完了を確認した屋島社長は、股間に挿入していたノズルを引き抜く。
少女を拘束していた人形のようなモノは今や怪人と化した少女をそっと持ちあげ、抱き寄せながら少女に詫びた。
「コノR-02108号、任務トハイエばんぱいあまりおん様ニ対等デアルカノ如キ態度デ接シ、度重ナル乱行ヲ加エテシマイマシタ。
深クオ詫ビ致シマス」
屋島社長もまた、奇妙に優しい声で少女に語りかける。
「『覚醒』お疲れ様、バンパイアマリオン。早速任務よ！」

12 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:43:40

リカは自分に起きていることがほとんど信じられなかった。友達のはずのマリが突如自分を羽交い締めにし、
見知らぬ女性が妙な器具で自分を犯し始めたのだ。
しかも、処女ではなかったはずなのに、まるで処女喪失のような激痛と出血が伴った。
そして局部に高圧電流のようなものが流されたかと思うと、衣服が破け、
自分の肉体がコウモリのような気持ち悪い生きものに変容していく・・・・。
そのいちいちにリカは半狂乱になって抵抗したが、すべて無駄な努力だった。
やがて自分でも説明のつかない心理が働き、興奮状態が奇妙に沈静化され始めた。
そして、肉体の変形が完全に終わったと思える頃には、奇妙に平静で、何の感情も湧かない、
まるで木偶人形のような心理状態に落ち着いてしまったのである。
リカも、見知らぬ女性も、自分のことを「バンパイアマリオン」と呼ぶ。
言われてみると、初めて聞く名前ではない。・・・いや、自分が「舞島リカ」という名前の人間だと思いこんでいたことこそ、
何かの間違いではないのか。・・・それに舞島リカに、「釜石マリ」などという友達など、そもそもいなかったのではないだろうか？
「か・ま・い・し・ま・り」…「まいしまりか」のアナグラム…そんな人間など、最初からいなかった・・・
ここでわたしに謝り、わたしを優しく受け止めてくれているのは、諜報用プペロイド、R-02108号・・・プペロイド・・・・・？
でも、それって、一体、何だったのかしら・・・・？
リカの人工頭脳は未だ起動作業中で、完全な動作を開始してはいなかった。
自我の活動が抑制され、しかしヘルマリオンの命令も受信しない、奇妙な空白状態に、
今のリカ・・・いやバンパイアマリオンは置かれていたのだった。
うつろな目で何の目的もなく周囲を見回すバンパイアマリオン。
だが、その目が目の前に座る、腰を抜かし、目を丸くして自分を見つめる男性を捉えたとき、強烈な衝撃が彼女を貫いた。
「オ・イ・シ・ソ・ウ・・・・・・・」
そうつぶやいたバンパイアマリオンは、すっくと立ち上がり、玉木の方へとゆっくり歩き始めた。
そしてソルジャードールの強靱な腕で玉木の頭と肩を押さえると、その首筋に口を付け、鋭い二本の牙を突き立てた。
背後では擬態を解き、クロアゲハマリオンの正体を現した屋島綾香が、哄笑しながら宣言していた。
「下等動物、玉木よ！喜びなさい。お前はそこにいる、覚醒を果たしたバンパイアマリオンの配下、
『吸血人間』第一号となる栄誉に浴したのよ！はははははは」
愕然とし、立ち上がることはおろか身動き一つとれない玉木に、バンパイアマリオンと呼ばれた怪物が近づいてきた。
隣の美貴はいつの間にか気絶している。
やがて少女の柔らかく温かい唇が玉木の首筋に触れる。同時に、鋭い牙が喉の皮膚を貫き、大量の血液が噴出し、
それがすべて少女に吸い取られていくのを玉木は感じる。
吸血と共に強烈なエクスタシーが玉木の脳髄を直撃し、玉木はたてつづけに三回射精してしまった。
その意識は見る間に混濁し、玉木はまとまりのある思考が何一つできなくなった。
今や玉木の目には、吸血を終え、満足げに顔を上げたうつろな目をした怪物・・・
いや、少女・・・いや、バンパイアマリオン様の神々しいご尊顔しか目に入らない。
うっとりした顔でその顔とその美しい肢体に見とれる玉木の表情は、しかし奇妙に邪気がなく、全くの空虚に支配されているように見える。
――その空虚な心理状態は、今や彼の永遠の主となったバンパイアマリオン自身の空虚な心理の写し絵であった。
彼女の人工頭脳は未だ起動処理中で、彼女の脳に何らの指令も伝えないまま、ただその自由意志を抑制しているだけなのだ。
今の彼女の心を満たしているのは、満たされた吸血本能のけだるい余韻のみであった。
だが、主と僕の空虚な恍惚状態は間もなく終わりを告げた。人工頭脳の動作が始まり、
バンパイアマリオンには再びヘルマリオンの「糸」がつながった。彼女は再びヘルマリオンの支配下に復帰したのである。
バンパイアマリオンの顔に、ようやく邪悪で平板なソルジャードールらしい笑みが戻った。
同時に玉木の顔にも、それをさらに戯画化したような平板で邪悪な笑みが貼り付いた。その目は赤く充血し、口からは長い牙が生えている。
自分の「能力」、そして自分に専属プペロイドがいなかった理由を悟ったバンパイアマリオンは、
得意げな顔をクロアゲハマリオンにちらりと向けてから、うれしそうにかつて玉木と呼ばれた存在に命令した。
「吸血人間一号、そこの下等動物を捕獲し、わたしと共に基地に帰りなさい！」
吸血人間と化した玉木は気絶したままの美貴を抱きかかえて立ち上がり、やはりうれしそうに命令に応じた。
「はい！バンパイアマリオン様！」

13 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:44:45

【東京　千代田区丸の内】
「うわぁ～～～～～」「きゃぁ～～～～」
人々が逃げまどっていた。バンパイアマリオンが襲来したのである。
「フフフ。あなた、結構イケメンね・・・・気に入ったわ」
『丸ビル』の１階フロアでは20代後半のビジネスマンが捕まっていた。
「ぐはぁ・・・・」
彼はバンパイアマリオンに血を吸われ、全身を痙攣させていた。
「ばんぱいあまりおん様、アナタ様好ミノおすヲ確保シマシタ。」
30代前半ぐらいのビジネスマンを捕獲したR-02108号が『獲物』を引きずってきた。
R-02108号をはじめとする諜報用プペロイドが今回のバンパイアマリオンの作戦に参加している。
「あら、ありがとう、『マリ』。そこに転がしておいて。じっくりと血を吸ってあげるから。フフフ」
バンパイアマリオンはR-02108号に付けたニックネームを呼んで指示し、怯えている『獲物』を怪しげな笑みを浮かべて見つめていた。

【東光商事本社ビル】
丸ビルに隣接する東光商事本社ビルでも社員たちが避難を開始していた。
「きゃああああああああああああああああああ！」
避難しようとする社員が殺到した１階ホールで、悲鳴が上がった。本社ビルにもプペロイドが数体、姿を現したのである。
「ギギ・・・」
プペロイドに遭遇した社員たちが逃れようと引き返したが、後から来た社員たちとぶつかり、混乱状態になっていた。
１階の混乱を知った者たちが地下階へと急いだ。直結する地下鉄の駅や東京駅への連絡通路を使って逃げようとする。
「杉山君、もうすぐ関連会社のヘリが屋上に迎えに来るから、それまで荷物をまとめなさい。
下に行くより、ここにいた方が安全かもしれんな。」
「はい。」
この年配の男をはじめ、社内にいた数人の役員たちが、1階や地下から逃げようとしている中間管理職や若い男性社員・OLたちを尻目に
美人の秘書を連れて、とりあえず品川にあるもう一方の本社ビルに逃げようとしていた。
東光商事は丸の内と品川の本社2ビル体制をとっている。

14 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:45:31

「・・・・・わかりました。はい、では屋上で待たせていただきます。失礼します。」
一緒に常務を担当する先輩秘書、鈴川春美が内線電話を切り、美咲に確認した。
「杉山さん、あと７分ぐらいでヘリが来るわ。準備は大丈夫ね？」
「はい。」
慌しく春美は常務に内線で話をしていた。
美咲はノート型PCの電源を切り、まとめてあった必要最小限の荷物をもって、屋上へ急ごうとした。
バリーン！
突然、窓ガラスが割れる音がした。常務の個室の方からだ。
「どわぁ～～～～～」
常務の叫び声が聞こえた。
「どうなされました、常務！」
美咲は個室にノックもしないでドアを開け、飛び込んだ。
「あわわわわわわわ・・・ば、ばけ・・・・・・ばけ・・・・・・」
顔色が真っ青になった常務が口をパクパクさせていた。腰を抜かして、へたり込んで壁際で怯えている。
・・・・・・！！
美咲は自分の背後に、ただならぬ気配を感じた。
「あら？あなた、おいしそうね･･･フフフ」
振り向くと、口元を血で真っ赤にしたコウモリみたいな怪物が立っていた。
「いやぁ～～～！」
美咲が悲鳴を上げると同時に、『コウモリの怪物』は彼女の首筋に噛み付き、彼女の血を美味しそうに吸い始めた。
はぁ・・はぁ・・・はぁ・・・・
美咲は首筋を噛まれ痛みを感じるどころか、アノ時にも感じたことのない快感を味わっていた。
学生時代から付き合っている３歳上の弁護士の彼氏とのSEXなんか比じゃなかった。
・・・・・・ああ・・・なんて気持ちいいの・・・・・・凄いわ・・・・・・・・
美咲はかなり心地の良い夢を見ているかのようにうっとりとしていた。美咲は口からだらしなく涎を垂らし、時々、全身を痙攣させる。
下の口からもダラダラと愛液が股間から溢れ、下着を濡らし、ストッキングの内側からも伝って流れてくる。
・・・・気持ちいいです・・・・私は貴女様のシモベでございます・・・・
美咲の顔から生気が失われ、彼女は徐々に、やつれていった。
吸い終えたのだろうか、コウモリの化け物が彼女から離れると、彼女はバタッっと倒れこみ、今度はもがき苦しみだした。
「グェェェェ～～～」
彼女は床を、苦しみもがいて転げまわった。まるで麻薬の効果が切れた中毒者のように。
「フフフフフ・・・」
コウモリの化け物が冷ややかな笑いを浮かべて美咲を見つめていた。
「はわわわわわわわわ・・・・・・・・」
常務は恐怖のあまり動けなくなっていた。
「お、お願いだ・・・命だけは・・・・命だけは・・・・」
コウモリの化け物に懇願していた。化け物は無言で年配の男を見おろしている。
「キシャ～～～～～～！」
今まで床で、のたうち回って苦しんでいた美咲が奇声を発して立ち上がった。
彼女の目は真っ赤になり、口からは長い牙が生え、指先から鋭い爪が伸びている。
「ひ、ひ、ひぃ～～～～～～～」
常務は悲鳴を上げた。怯えきっている。
「あら？順応性が高いわね。もう、覚醒しちゃったんだ？じゃあ、あなたは吸血人間22号ね。
これから、あなたの飼い主はこのバンパイアマリオンよ。フフフ」
「キキキキキィ～～～～」
美咲は美人秘書の面影など全く残っていなかった。
「吸血人間22号！そいつの血を吸っちゃいなさい。」
「キシャ～～～～～～！かしこまりました！バンパイアマリオン様、不味そうですが、いただきます。」
「お、おい、や、やめろ！杉山君！ぎゃぁ～～～～～～～～～～～～～」
杉山美咲だった吸血人間は常務の首筋に噛み付き、思う存分、彼の血を吸った。
やがて常務は、そのまま生き血を一滴残らず吸い取られ絶命した。

15 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:46:38

吸血人間は人間の生き血を吸うが、彼らに血を吸われた人間は吸血人間にはならなかった。人間を吸血人間に変える能力は
バンパイアマリオンにしか備わってない。また、バンパイアマリオンが血を吸ったからといっても、彼女自身が必要ないと思えば
吸血人間にはならない。吸血人間に変える細胞刺激物質を彼女が牙から流し込むかどうかによって決まるのである。

秘書たちのデスクが並ぶ部屋にバンパイアマリオンが現れた。杉山美咲だった吸血人間22号を従えている。
「ぐわぁ～～～～！」
バンパイアマリオンは侵入するなり、中年の男性秘書室長を引き裂いて殺した。
「きゃぁ～～～～～！」
秘書たちから悲鳴が上がった。
「フフフ････一流企業の役員の方々はいい御身分ね。ヘリで逃げるだなんて。１階や地下はパニックだというのにね。
でも、無駄よ。平等に恐怖を与えてあげるわ。アハハハハハハハ」
Ｒ-02108号を先頭にして、ぞろぞろと１０体ほどの吸血人間たちが役員フロアに集まってきた。
捕虜となった役員や秘書達がフロア内のコモンスペースに固められていた。
ドドォ～～～ン！
大きな爆発音がした。人質達が一斉に窓の外を見ると、皇居と大手町のビル群の間くらいに大きな火の玉が見えた。
迎えに来るはずだったヘリが空中で爆発したのである。人質たちは火の玉の傍に大きな黒い蝶のようなものを同時に目撃した。
「あら、残念ね。ヘリが『仲間』に撃墜されたようね。アハハハハ」
人質たちは窓の外を見つめ呆然としていた。
「は、話し合いをしようじゃないか？私は副社長の門倉だ。目的はなんだ？場合によって、弊社は応じるが・・・・・」
副社長が交渉を試みようと、恐る恐る目の前にいるコウモリの化け物に話しかけた。
「あら、副社長さん。運悪くいらしたのね？でも、残念ねぇ・・・・私は下等動物と交渉しない主義なの。すぐに殺してあげるわ。
そうねぇ、目的は大量殺戮と素体の確保ってところね。例外的にイケメンや美しいメスは私の部下か『仲間』になってもらうわ。ウフフフフ」
とんでもないことを涼しそうな顔で、バンパイアマリオンは話した。
「お、おい・・・・冗談だろう？････金ならいくらでも払う・・・・・助けてくれ・・・・」
「うるせぇよ。オヤジ！」
バンパイアマリオンが副社長を蹴リ飛ばした。副社長は吹き飛び、窓を突き破って地上へ落ちていった。
「きゃぁ～～～～～！」
秘書達が悲鳴を上げた。
「ギギ・・・・・サア、ばんぱいあまりおん様、めすノ選別ヲ始メマショウ。」
Ｒ-02108号が、身を寄せ合って怯えている秘書達を見ながら言った。
「そうね、『マリ』。楽しみだわ。吸血人間22号、適当に選んで私の前に連れてきなさい！」
バンパイアマリオンが命令した。
「キキィ～！来い、お前。」
吸血人間22号が春美を捕また。
「な、なにするの！杉山さん、正気に戻って、お願い！」
美咲の力は信じられないくらい強く、春美は全く抵抗できぬまま引っ張り出された。
「あら、おいしそうね。フフフ･･････」
「いやぁ～～～～～～～～！
春美は美咲のように牙を首筋に突き立てられ、うっとりとした表情になっていた。

＜完＞

16 ：蟻蜂フリーク：2008/07/21(月) 00:52:21

以上です。お粗末さまでした。

例の騒動でお蔵入り寸前の作品でしたが、maledictさんの支援もあり、どうにか投下にこぎつけることが
できました。途中、maledictさんの手も加わり、かなりグレードアップした作品になりました。
もう一話、この作品の続きのようなものがありますので、完成次第、投下します＾＾

maledictさん、どうもありがとうございました。

吸血鬼アンソロジー「吸血鬼譚-crimson eyes-」／密林社

2012年末の冬コミでサークル「ふぇにどら!!」様が頒布したアンソロジーで、maledictは「吸血鬼マイウェイ」なる作品で参加させて頂きました。R18指定です。なお、全年齢向けの『吸血鬼譚-blue blood-』(http://www.amazon.co.jp/dp/B00AY1T2HW/)と二冊同時刊行です。

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