2009-05-06 22:29:54
噛み合わせ6:頭蓋骨の歪みと側頭骨
テーマ:噛み合わせ今回は、頭蓋骨の歪みと側頭骨に関して。
側頭骨は、左右の耳の周りから頬骨の真ん中、頭の横の下のほうにある骨で、歯科領域では、顎関節がある骨です(上図を参照)。頭蓋骨が歪まなければ、側頭骨自体は関係ないのですが、歪むとしたら、顎関節自体の位置が変わってしまい大きな影響があります。
通常、顎関節を調べるときには、触診(触って調べる)、雑音(クリック、クレピタスなど動かしたときに出る音)、そしてレントゲン、CTスキャン、MRIなどですが、触診や雑音は従来どうりで問題ないのですが、レントゲン等で顎関節自体の状態を調べるときに、顎関節のみの形態や位置関係を調べるので、頭蓋骨が歪むなら問題があります。
関節の頭の部分は下顎についていて、噛み合わせが悪く、下顎の位置がズレると、当然関節の頭の位置も側頭骨にある関節のくぼみ(関節窩)に対してズレます。このとき、関節のズレは、関節窩を基準に評価します。ですが、側頭骨自体がズレていたら、正しい評価になりません。正確には、頭蓋骨の歪みによる側頭骨の状態(位置)を考慮して、下顎の位置と合わせて関節頭の位置を評価しなければなりません。さらに、関節の表面は全て軟骨なので、一定期間ズレているとすぐに変形します。それは今では3DCTスキャンで見ることができます。
また、顎関節症という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは少し気をつけないと。これは、顎関節の症状からの分類によりつけられた病名で、症状がその分類に当てはまると、”顎関節症”。症状がないと顎関節症ではない、ということになり、正確な病態を表していません。アメリカでは、AAOP(American Academy of Orofacial Pain)の定義によると、Tempolomandibular disorder:TMD(直訳では顎関節機能障害でしょうか?)として、咀嚼筋、顎関節、それらに関連する構造の臨床的な様々な問題の総称になっています。これはちょっとまとめすぎているようなきもするのですが。Craniomandibular disorder:CMD(直訳すると頭蓋下顎機能障害でしょうか?)という言葉があった(今もあるのですが......)のですが、TMDの類義語になってしまっています。僕は、個人的には、頭蓋骨が歪むなら(歪みます)、CMDとTMDは別だと思いますが。CMDの一部としてTMDがあると言うか、CMDなしにTMDはありえないというか....。世界的にも今でもCMDのリサーチが出ているのですけどね。ちょっと歴史的な問題もあるというか。話を戻しましょう。
顎関節が正常かどうか?は、日本人の噛み合わせから言うと、ほとんど正常な人はいないので(何とか許容していても)、正常な顎関節の人もほとんどいないのではないでしょうか。目だった自覚症状がなくても、口を開け閉めしたときに、ポキポキいったり、ゴリゴリしていたら正常ではありません。痛みはなかなか出ません。関節は表面が軟骨なので、血管神経が入っていないので、骨まで擦れるか、後方の血管の多い組織に炎症が出なければ、かなり磨り減っても痛みはでません。
以前は、顎関節自体の治療がありましたが、現在は世界的にもよっぽどひどい状態でなければ直接的な治療はしません。噛み合わせを直すことが優位です。噛み合せの治療に関節も含まれます。
また、下顎のズレが大きく、顎関節に問題がある患者さんに、耳の症状やめまいが多いと思います。これも明確に関連が証明されていませんが、顎関節のすぐ後ろに耳があり、例えば奥歯がないと関節が圧迫されるので、あるいは側頭骨自体がズレると、側頭骨の中に耳があるので、解剖学的に考えても影響あるでしょうね。噛み合わせを直すと、多くの患者さんの耳の症状がよくなっています。もちろん全てではないですけど。これも上顎骨と目や鼻の関係と同じでしょうね。
あと、あまり影響ないところでは、噛み合わせを変えると、メガネが合わなくなる患者さんが多いです。視力もそうですが、耳の位置が変化するので、メガネが曲がってしまいます。本当は、曲がった顔に(顔の歪み)メガネを合わせていたのですが。これも顔が歪む証拠のひとつかな、と。インプラントや、審美治療はメガネのように調整したり取り替えたりは、簡単にはできないですからねぇ......。
内容が多いですが、次回は頚椎との関係を解説します。これは大きなポイントです!
なかなか、歯自体の噛み合せの話にならないですね。