「震災取材ブログ」は特集「東日本大震災2年」に移転しました。地震、津波、原発事故の複合災害となった震災の被災地で日々取材を続けている記者たちの思いを、引き続きつづっていきます。
ウランの核分裂が発見されてから80年足らず。原子力のリスクはどう考えられていたのか。「E=mc2」という世界でも最も有名な公式を発見した物理学者のアインシュタインが、もし福島の現状を見たらどう感じただろうか。大学で物理学を専攻していた私は、福島の現状を取材しながらこうした疑問がわくことがあった。
アインシュタインは核分裂の発見が原子爆弾を生み出す危険性をいち早く感じ、ナチス・ドイツが原爆を製造する危険性を訴える手紙を当時の米ルーズベルト大統領に書いたことでも有名だ。原子力にかかわる数多くの言葉も残している。
「原子エネルギーの解放によって私たちの世代は先史時代の人類が火を発見してからこのかたもっとも革命的な力を世界にもたらした」
「私は原子エネルギーが長い間には大きな恵みとなるという見通しをもっていないので、さしあたり脅威であると言わなくてはなりません」
いずれも『アインシュタインは語る』(大月書店)から引用した。
これらは原爆について触れた言葉と思われるが、原子力の平和利用である原発についての考えと仮定しても理解はできる。避難生活を続ける福島県民を見たら、同じような言葉を漏らしていたかもしれない。
原子力を生んだ物理学では、エネルギーを無限に取り出せる永久機関が学問における究極目標の1つ。1990年代後半、東電の原子力担当役員を取材したとき、使用済み核燃料の問題など原発の限界を指摘したところ「聖書に書いてあるだろう」と激しく反論されたことがある。初めは「聖書」という意味が全く分からなかったが、詳しく聞いてみると1950年代に米国で書かれた原子力工学の教科書のことだった。その本には、核燃料リサイクルが夢の永久機関に近づくと紹介され、東電役員はこれを信じて発言していたのだ。
東電福島第1原発の事故後、多くの原子力学者が批判を受けたが、この教科書をいまだに信じ続ける学者は少なくない。原発事故から科学者は何を学んだのか。人類は原子力と共存していけるのか。福島の取材を通じ、この自問を今後も続けなければならないと強く感じている。(竹下敦宣)
東京電力、福島第1原子力発電所、ルーズベルト、アインシュタイン
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