全国で使われている中学理科の教科書を発行している大日本図書（東京都文京区）が、多数の内容訂正・変更があったにもかかわらず、使用している学校に訂正情報を通知していないことが分かった。訂正・変更は３学年分で２６９カ所に上るが、同社ホームページの掲載にとどめていた。文部科学省は訂正などの情報は教科書を使用する各校に速やかに通知することを求めており、同社は「丁寧に対応すべきだった。早急に伝える」と話している。【石丸整】

　◇計９０万冊　「３月にしようと」未通知

　教科書は「理科の世界」の１〜３年用の３種類。８５カ所（１年）▽９０カ所（２年）▽９４カ所（３年）の訂正と変更があった。各種類それぞれで約３０万冊発行され、約３割の中学生が使用している。

　同社によると、「変更」は約２５０カ所で、ほとんどが説明文の表現を変えて理解しやすくするなどだが、明らかな間違いの「訂正」は約２０カ所。植物の「側根（そっこん）」の振りがなを「そくこん」と表記▽神奈川県横須賀市にある断層の写真のタイトルを「三浦市」と誤記▽「立方メートル」と表記すべきところを「立方センチメートル」▽「０．００１ミリ」としたヒキガエルの精子のサイズを「０．０２ミリ」に訂正▽天体のイラストで日の入りを示す場所を間違えた−−など。教員から指摘があり、昨年７〜８月に文科相に訂正申請した。

　文科省は教科書検定の実施要項で、訂正などは速やかに各校・教育委員会へ通知するよう指示している。訂正が多数に上った理由について、同社編集部は、１２年度から中学校で新学習指導要領が全面実施された点を挙げ「記述が増えてチェック漏れが出た」と説明。訂正情報を各学校に通知していないことについては「３月に通知する予定だった」と話している。

　一方、文科省は１０年度の教科書検定で同社の教科書をチェックしており、同省教科書課は、中学校と高校の理科の教科書を同時に検定した点を挙げ「忙しくて見落とした」と反省している。

　中学理科の教科書で同社のシェアは３位。１位の啓林館、２位の東京書籍との３社で９割を占める。文科省によると、啓林館は訂正・変更が３３カ所（３学年分）で、東京書籍は同６１カ所（同）。ともに使用している学校には通知済みという。