面白いほど名ゼリフを生み出す7大カテゴリーのまとめ このエントリーをはてなブックマークに追加

それいけライターズこんばんわ、きんどるどうでしょうリテラシーのお時間です。こちらのサイトではKindleでの出版を目指す方のために文章の書き方や、ノウハウを紹介していきます。
えー、そんなわけで「書かなきゃなーネタはいっぱいあるんだけどなー」ときんどるどうでしょう本体の更新に追われていたところ、戯曲家であり著者のこくぼしんじさんから
なら、わたしのノウハウを書きましょう!
という提案をいただき、今回「それいけライターズ!」と題してキャラクターづくりのノウハウを連載していただくことになりました。連載にあたりプロット読ませてもらったんですけどね、さすがプロのノウハウ「めっちゃためになるよこれ!」という内容なので、[あとで読む]などのタグをつけて保存を推奨するね!

「それゆけ!ライターズ」第一回 名ゼリフの正体

kokuboはじめまして!「きんどるどうでしょうリテラシー」に新しくライターとして参加した、こくぼしんじと申します。
ちょうど先日、「きんどるどうでしょう」さんに自著の戯曲をご紹介いただきまして。そのご縁と、むかし後輩ライターやシナリオライター志望者、マンガ家志望者にストーリーやキャラ作りを指導していた経験から……今度はこちらで、面白い電子書籍を書くための作劇ノウハウを連載することになりました。

本連載で取り扱うのは「物語系」「エンターテインメイント系」を書くノウハウ

とはいえ、もちろんですが、電子書籍にもいろいろあります。私が扱うのはそれらの中でも小説やラノベ、戯曲やシナリオといった「物語系」「エンターテインメント系」です。
したがって、
「自分の作品をもっと面白くしたい! でも、どう直せばいいのかわからない」
「既存の商業作品にも負けない魅力的なキャラクター、どうやって作るの?」
「いいセリフって、どうやったら書けるようになるの?」
「ぶっちゃけ、人を感動させるような物語って、どうやって書くの?」

物語を創作するにあたって、こういった悩みを抱えたことがある方にとって、今後の私の連載はかなり「目からウロコ」の内容になるんじゃないかと思います。
では、いってみましょうか!

「名ゼリフ」とは、いったい何なのか?

作家を志す人、特に小説やシナリオ、マンガといった「物語」を作りたい人であれば誰しも、こういうコトを考えてるんじゃないでしょうか。
「自分だけの名ゼリフ、決めゼリフを、作品にブチ込みたい!」
やっぱり、作品が多くの読者の間で語り継がれるのに、または時代を越えて残っていくのに、必要なのは「名ゼリフ」です。こればっかりは既存の商業出版物だろうと、セルフ出版でリリースする電子書籍であろうと同じじゃないかと。
例えばの話、名作映画『ルパン三世 カリオストロの城』のストーリーを、最初から最後までスラスラ説明できる人は少ないと思うんです。少なくとも、今いきなり「言ってみて!」と頼まれたら難しいはず。
でも、あの映画を一度でも観た人であれば、物語のラストシーンで発せられた、銭形警部の名ゼリフをきっと覚えているでしょう。
「いや、ヤツはとんでもないものを盗んでいきました」
「あなたの心です」

まあ、大事なのは名ゼリフの「例」を出すことではありません。あなた自身が、どうやったら、上のような名ゼリフを生めるようになるか、です。

名ゼリフの「定義」とは?

あなたがもし、自分の作品の中に「名ゼリフ」と言えるようなモノを書けていないなあと思うのであれば……その理由はすごく単純です。
「名ゼリフの定義」・・・つまり名ゼリフとは何か? という定義を知らないから。
そもそも名ゼリフの正体が見えていないのだから、オリジナルの名ゼリフを生み出すこともありません。あるいは、仮に生み出していたとしても、自分で気づいて作品の中に活かせない……単純明快な話ですよね。
ちなみに、書店でよく売られている『名ゼリフに学ぶなんちゃら』ですとか、あーいうところに紹介されている文学作品のセリフなどは、概して「名ゼリフ」ではありません。
むしろ、ああいった本のおかげで、実に多くの人たちが、名ゼリフとは何かについて誤解しています。今でもTwitterにはよくいますよね。自分で語ることがないから「by(有名人・著名人)」なんつって、他人の名ゼリフっぽいのを羅列してる人とか(笑)。
『なんか、人生を生きる上で含蓄のある小難しいセリフ?』
名ゼリフの定義や正体について、多くの作家志望者やシナリオライター志望者はそんな風に考えがちなのですが、ハッキリ言って違います。
名ゼリフの定義とは、
「一度でも聞いたら(読んだら)必ず脳裏に焼き付き、生涯忘れないセリフ」
これだけなんです。
スラムダンクだったら「安西先生……バスケがしたいです」
カイジなら「金は命より重い……!」
もう古すぎて誰も知らないでしょうけど、私の大好きなマンガ「特攻の拓」でしたら、「オウ! “バール”持ってこい!」(笑)。
こういう、1度その作品に触れたら必ず覚えてしまうセリフ。忘れられなくなってしまうセリフ。のちのち口癖になりかねないセリフ……こういうのが「名ゼリフ」なんです。
三段オチの最後に「バールって何だよ!」とか思った人もいるかと思いますけど。
別にウケ狙いで書いたワケじゃありません。名ゼリフに、文学性や小難しさなんて全く必要ないってコト。文学性の欠片もないセリフだって、立派な「名ゼリフ」足りえます。
大事なのは、読者や視聴者が自然に覚えてしまう言葉であるかどうか。
それだけです!!

名ゼリフの「7大カテゴリー」

本記事の最終ゴールは、言うまでもなく、あなたが自分で、オリジナルの名ゼリフを考えつけるようになること。とはいえ、その前に1つ押さえてほしいコトがあるんです。
名ゼリフって結局、どういう性格のセリフなのか?
下記に色んなタイプの名ゼリフを紹介するので、各セリフをよく眺めながら、ほぼ共通する特徴をつかんでみてください。
【その1.断定系】・・・この世の事象や真実をさも分かったかのように決め付けるセリフ。
出版業界で数年ごとに流行する、いわゆる「名ゼリフ本」「名言本」に掲載されるようなセリフは、ほとんどがこの「断定系」に該当します。ほとんどの人は、この「断定系」のみを名ゼリフと誤解しているフシがある……ということですね。
例:「カイジ」の利根川先生
『金は命より重い……!』
『大人は質問に答えたりしない』

【その2.決意系】・・・物語を前に動かす、主人公や主要キャラの力強い決意も、名ゼリフに仕立てやすいもの。
例:「ワンピース」のルフィ
『海賊王におれはなる!!』
例:「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジ
『僕は…僕は、エヴァンゲリオン初号機のパイロット、碇シンジです!!』

【その3.叫び、開き直り系】・・・いまの自分の立ち位置や持ち味を開き直り、「私、こういう人なんです」と開き直るセリフ。
うまく決まればキャラクターの特徴を1語で表すことができるため、名作であればあるほど、この種の名ゼリフが作品の序盤に必ず登場します。
例:「サラリーマン金太郎」の矢島金太郎
『サラリーマンをなめんじゃねーッ!』
例:「ゴルゴ13」のデューク東郷
『俺の背後に立つな』
『”利き腕”を人にあずけるほど、俺は”自信家”じゃない……』
『女とねる時は……おれの方から相手を選ぶことにしている…………』
※特にデューク東郷は、自分のポリシーを説明するだけで名ゼリフが生まれるという、設定の妙が光るキャラクターです。
例:「うる星やつら」の藤波竜之介
『オレは女だーッ!!』
例:「るろうに剣心」の斎藤一
『悪・即・斬』

【その4.罵倒系】・・・人を罵るときの激しい、あるいはキツイ表現。
「トラウマ」という言葉もあるように、人間って、嬉しい一言よりも、言われて傷つく一言の方が印象に残ってしまうんですよね……。よって、とりあえず何か名ゼリフを考えるというだけなら、発想の基本的なベクトルを、相手を喜ばせる方向でなく、相手を傷つける方向に向けた方が早い場合が多々あります。
例:映画「フルメタルジャケット」ハートマン軍曹
『口でクソ垂れる前と後ろにサーを付けろ』
『じじいのファックの方がまだ気合いが入ってる!』
『パパとママの愛情が足りなかったのか、貴様?』
例:「北斗の拳」(罵倒句の宝庫すぎて、誰が誰とか言えませんw)
『てめえらの血は何色だーッ!』
『汚物は消毒だーーーッ!』
『貴様には地獄すら生ぬるい!』
『あなたにそう想われていると知るだけで死にたくなります』
例:「機動戦士ガンダム」のギレン・ザビ
『敢えて言おう、カスであると!』

【その5.疑問・提言系】・・・気負いのない軽い一言が名ゼリフになる、数少ないパターンです。その多くは、状況を打開する新しい視点をもたらすセリフや、相手の発言に対する「切り返し」になります。
例:「ジョジョの奇妙な冒険」ディオ・ブランド-
『おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?』

【その6.あいさつ・奇声系】・・・こちらは意味も何もありません。ひたすら、意味よりも『語感』や『音』にこだわります。感覚的であるがゆえに、キャラとうまくマッチした場合は、理屈抜きの、圧倒的に強い印象を読者に残すケースが多いです。
例:「Dr.スランプ」
『んちゃ!』
『ほよ?』
『ばいちゃ!』
例:「ジョジョの奇妙な冒険」ディオ・ブランドー
『URRRYYYYYYY!』
『貧弱! 貧弱ゥ!』
『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄』
例:「北斗の拳」(これも豊富すぎて、もう誰とか言えませんwww)
『あたたたたたたたたたたた!』
『ひでぶ!』
『うわらば!』
『あべし!』
『ヒャッハー!』
『シャオーッ!(※アニメ版)』

【その7.方言系】・・・標準語で喋ったらごく何気ないセリフに過ぎないものの、方言や普段使わない言い回しを使ったおかげで、インパクトが劇的に強まったセリフです。
例:「うる星やつら」のラムちゃん
『うちはダーリンが好きだっちゃ』
例:「スケバン刑事」の麻宮サキ(2代目)
『おまんら、許さんぜよ!』

名ゼリフを考える際の極意は「言われた相手の立場を考えない」こと!

初回から、人としてかなり危ないコトを言ってますが(笑)。
結局、人の心に突き刺さる表現、人を動かす表現ってのは基本的に『断言』か『言いっ放し』であってしかるべきなんですよ。これは特に罵倒句に限りません。人を喜ばすセリフでも、笑わせるセリフでも一緒です。
こんな例を挙げるとよく分かります。
もしあなたが女性で、なおかつ、今付き合っている男性からプロポーズを待っている状態だとして……。その男性から発せられたプロポーズの言葉が、断定表現じゃなかったらどうなるでしょう?
「オレ、お前と結婚……したいかも、知れない……かなあ? どうだろう?」
こんな風に言われたら、結婚に向けて心が動きますかね? おそらく、腹が立つだけだと思うんですよ。
プロポーズの言葉、その言い回しは無限にあると思います。ただ、少なくともプロポーズであれば、「結婚してほしい」という意志がハッキリ乗った言葉じゃなきゃ、受ける側としてイヤじゃないですか?
名ゼリフを考える際のコツも同じです。
「周囲にツッコまれないかなあ?」
「苦情出るかなあ? 誤解されないかなあ?」
「バカにされないかな?」
そんなことを考えていたら、せっかく思いついた言葉も、名ゼリフに必要な「切れ味」を失ってしまいます。
日常生活で必要な「相手に対する思いやり」。これを一旦忘れてしまい、言いたいことを思い切り言ってみる! あるいは、ノートやテキストに堂々と書き付けてみる! これが、あなたオリジナルの名ゼリフを生むための「最初の訓練」です。

クイズ:「名ゼリフの7大カテゴリ」はウソ??

最後に、クイズコーナーとなります。クイズの内容は、記事上で列挙した名ゼリフの7大カテゴリーに私があえて入れなかった、「もう1つのカテゴリー」を探し当ててみる……というものです。
「本当は8大カテゴリーなので、残りの1つは自分で考えてみてね!」と。
あなたがこれまで感動した、あるいは記憶に残った、さまざまな名ゼリフを思い出してみて……もし、上のカテゴリーに含まれないものがあれば、きっと「それ」が答えです。
冗談抜きで、書き忘れていたのではなく「意図的に」入れていません。

なぜ、そんな(クイズのような)面倒なことをするのか?

そもそも作劇のノウハウというのは、「こうなんです」と書かれたものを読んだぐらいで身に入るほど、簡単なモンじゃありません。書かれた内容を理解し、自分でも試してみて、ダメ出しも受け、直しを繰り返しながら、ようやく頭から手先にまでインストールされていく……そういう類のモノです。
とはいえ、今のところ私が直接、読者さんのオリジナル作品を添削したり批評したりする、そういう時間は取れそうにありません。
加えて、面白い電子書籍のイメージすら固まっていないこの時期に、既存のノウハウでアマチュアの方の作品をひたすらこき下ろすのも、何だか自分的に「気持ち悪い」と思っていまして。なので、クイズ形式を採用し、読者さんに能動的に考えていただくことで、上に書いたノウハウや分類がより頭に入るようになれば……と考えました。
クイズの答えを思いついた方はぜひ、私のTwitterアカウント(@gactors)に向けて、回答をお寄せください。私へのフォローは、別にしてもしなくても結構です。
正しい答えは「○○系」となります。なので、140字の文字制限に十分入ると思います。また、○○系というカテゴリー名まで考えるのが面倒な方は、該当するであろう名ゼリフをそのままコピペして、私にツイートしてくださっても結構です。記事中にもヒントが隠されています。私が上の記事であえて言及を見送っている部分? これ以上言うと、答えになっちゃうのでやめましょう。
クイズの解答は、次回の講義の冒頭で公開します。
ではまた!

この記事を書いた人

本名:小久保真司(こくぼしんじ)
1974.10.12.うまれ。
東京・浅草というか山谷地区出身。現在は渋谷在住。早稲田中学・高校を経て、慶應義塾大学総合政策学部卒業。その後は某専門学校の声優科、勝田声優学院の事務員を経て漫画やゲームのシナリオライターに。2008年に友人の誘いで専門学校の講師となるが、ブログの記載内容を巡って学校側と喧嘩し、翌年に退職(笑)その後はがんばれ!アクターズを立ち上げ、自分で生徒を集めて指導に専念しています。
史上最弱の声優養成所『がんばれ!アクターズ』http://www.gactors.net/
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