新聞社に広告が押し寄せているという。広告を出したい広告主と「紙面がない」という新聞社との間のいざこざも、数年ぶりに見られた。銀座や赤坂のバーも浮かれている。これは、安倍政権発足から瞬く間に2カ月過ぎた日本の風景だ。ある人は「まるで小泉時代の再来」と語った。
小泉元首相の在任期間は5年5カ月に及んだ。2006年9月末の退任時まで平均支持率64%を維持した。都心の再開発、規制緩和、円安により好況をもたらした指導者でもあった。小泉首相泰退任後、久しぶりにいい気分を味わっている日本人の雰囲気が、リアルに伝わってくる。
一方、ソウルの春は落ち着きがない。景気低迷はいつまで続くのか、見当も付かない。証券会社や資産運用会社の間では、いつ倒産するか分からないという恐怖感が漂っている。企業は為替レートの問題で輸出が振わず、すくみ上がっている。ここに北朝鮮による核の脅しまで加わり、韓国国民が感じる重圧は倍になった。
朴槿恵(パク・クンヘ)政権は、安倍政権より2カ月遅れで発足した。しかし両政権の船出の風景は、2カ月ずれているというだけにとどまらない。安倍政権は、野球でいえば一回で大量得点したようなものだ。いや、それどころか就任前から円安が進み、企業は政権交代に歓呼の声を上げた。市場がまず動いた。発足前から安倍政権に対する期待は高まった。ずっと大勢論の上に立ってきた朴槿恵大統領に対する期待の指数も、安倍首相に劣らなかった。
時を同じくして発足した両政権は、なぜ全く異なる風景を生み出したのか。朴大統領は大統領候補時代、福祉・雇用創出・経済民主化を前面に押し出した。いずれも韓国国民が支持する国政目標だ。名分を強調した目標重視型の公約だった。
安倍首相は選挙期間中「紙幣の印刷機をじゃんじゃん回して…」と語った。円安を進めると公言し、補正予算の編成を約束した。資金を増やし、財政支出を拡大させ、規制を緩和するという成長政策を「三本の矢」と命名した。福祉・雇用といった「的」を強調するのではなく、「矢」を際立たせた。