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» 2007年12月21日 07時00分 UPDATE

女性システム管理者の憂鬱:ボーナスの行方を決めた1通のエラーメール (4/4)

[高橋美樹,ITmedia]
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ご褒美はPC

 そのとき、わたしの頭の中でハッとひらめいた。メーリングリストで各担当者に連絡をする際は、返信アドレスもメーリングリストになるようにと、メーラーにもう1つアカウントを追加するように言われていたのだ。

 メールを送信する際には、送信者リストから、個人アカウントか返信先をメーリングリストに設定した別のアカウントかのどちらかを選択するのだ。たぶん、Aさんはアカウントを切り替えるのを忘れて、返信先がメーリングリストのアカウントの方で、クルマ屋さんにメールを送ってしまったのだろう。いつも残業で遅くまで会社に残っているため、こういうプライベートのやり取りも会社でやるしかなかったのだろうが、それにしても、よりによってこのメーリングリストを使ってしまうとは。

 私情を一切挟まない仕事専用のメーリングリストで、その責任者がこの失態だ。メンバー同士が日ごろから軽い世間話を交わしている仲であれば、まだAさんも救われただろう。今後のAさんのバツの悪さを勝手に想像して同情していたわたしだが、次の瞬間、氷水をかけられたような悪寒が背中に走った。

 「もしわたしがこれをやってしまったら、どうなるのだろう……」

 そうだ、今回はミスを犯したのが親会社側の担当者だったために軽い注意程度で済むだろうが、運用を委託されている子会社側の人間がこれをやってしまったら、ただでは済まないだろう。

 そう考えると、わたしも常に大きなリスクを抱えていることに気がついた。今の仕事になってから、わたしは3つのメールアカウントを使い分けている。1つはAさんも使っていた管理用メーリングリストを返信先にしたもの、もう1つはユーザーに連絡をするための運用担当メーリングリストを返信先にしたもの、そしてもう1つが、個人アカウントを返信先にした一般的なアカウントだ。一応標準アカウントには個人アカウントを返信先にしたものを設定しているが、膨大な量のユーザーに連絡をとる際には、差込印刷などの自動送信機能を利用するためにも、運用メーリングリストを標準アカウントに設定する必要がある。

 今後、想定外の障害が起きたときには、管理用のメーリングリストを標準に設定することがないとも限らない。もし、そのような設定をしたことを忘れて、のほほんと友達に合コンのお誘いメールなんかを出してしまった日には、自分の会社ばかりか親会社にまで恥をさらすことになる。いつもメールのやり取りをしている悪友の顔が目に浮かぶ。あの私的な会話が他人の目に触れるだけでも恥ずかしいのに、仕事上でしか付き合いのない人たちに一斉に配信されるとしたら、こんな恐ろしいことはない。会社のメールを使っている限り、この危険から逃れることはできないのだ。

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 そのとき、わたしの気持ちは固まった。あのバッグもソファもいらない。今回のボーナスでプライベート用のPCを購入しよう――。苦渋の決断だった。

 そうなれば、当然、インターネットを開通するための工事費やプロバイター料金、プリンタ購入代も計算に入れなければならない。いろいろ見積もってみたところ、今回のボーナスはほとんど残らないことが判明した。半年間、頑張って頑張ってやっと手にする自分へのご褒美が、仕事道具のPC。これほどときめきのない大物買いは初めてだった。

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