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【社会】

耐久性より増設優先 福島第一 急造タンク群 3年後破綻

2013年3月10日 07時03分

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 東京電力福島第一原発で、高濃度汚染水を処理した後の水をためるタンクが、増設のスピードを優先して溶接しなかったため耐久性が劣り、三年後には続々と大改修を迫られることが分かった。敷地内にタンクを増設する用地がなくなる時期とも重なる。処理水には除去が極めて難しい放射性物質も含まれ、このままでは、またも汚染水の海洋放出という事態を招きかねない。 (小野沢健太)

 処理水タンクは、帯状の鋼材をボルトでつなぎ合わせて円筒形にし、内側に止水材を施し、鋼材のつなぎ目はゴム製のパッキンを挟んで締め付ける構造。一千トン級の大容量タンクだが、一週間ほどで組み立てられる。溶接をして頑丈に造るより短期間で済むため、急増する汚染水処理をしのぐためには好都合だった。

 しかし、東電が「仮設タンク」と呼んでいたことが示す通り、長期の使用を想定していなかった。当初は二〇一一年度中におおむね汚染水処理は終わる予定だったが、現実にはタービン建屋地下に、今も一日四百トンの地下水が入り込み、原子炉から漏れ出す高濃度汚染水と混ざり、水量がどんどん増えている。

 処理した汚染水の一部は原子炉を冷やす水として再利用するが、使い切れない水は、次々とタンクを造ってためるしかない。処理水はセシウムこそ大幅に除去されているが、他の放射性物質が残る汚染水。漏れがないか、作業員が定期的にタンク群を見回ってボルトを締め直すが、無用の被ばくを招いているとも言える。

 タンクのパッキンなどの耐用年数は五年ほどで、一六年春ごろから改修が必要。そのころには、現時点で計画中のタンク用地も使い果たしている見通しで、新たな用地確保とタンク増設、改修を同時並行で進めなければいけなくなる。

 東電によると、すでにタンクは千基近くあり、このうち約二百七十基の改修が必要となる。

 準備中の新たな除染装置が稼働すれば、約六十種類の放射性物質は除去されるが、放射性トリチウムは残り、海への放出はできない。東電は一昨年四月、意図的に汚染水を海へ放出し、国際的な批判を浴びた。

 東電の担当者は「当初は急いでタンクを用意する必要があり、ボルトで組み上げるタンクを選んだ」と説明。最近になって東電は溶接したタンクを導入し始めたが、増える処理水に対応するので手いっぱいの状況だ。

 <放射性トリチウム> 原子炉内で発生する放射性物質の一つで、三重水素とも呼ばれる。水と非常に似た性質のため、現在、大量に処理する技術はない。福島第一にたまる処理水には、排出が認められる法定限度(1立方センチ当たり60ベクレル)の約38倍の約2300ベクレルのトリチウムが含まれている。新しい除染装置で処理してもトリチウムはそのまま残る。

(東京新聞)

 

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