千葉市若葉区みつわ台の住宅で平成９年２月８日、高校教師の内村民夫さん＝当時（６０）＝が刺殺された強盗殺人事件は、未解決のまま１６年が過ぎた。
妻の和代さん（７３）は、今も県警千葉東署に毎月通って捜査に進展がないかを尋ね、駅前で情報提供を求めてチラシ配りもする。「このまま続くのかな」という不安を抱えながらも「体が続く限り活動は続ける」と話す。
■幸せの時間の後に…
娘の修子（なおこ）さん（４６）が、内村さんと会ったのは事件前夜、９年２月７日が最後だった。１カ月後に定年退職を控えた内村さんは、自宅に修子さんと１歳の孫を迎えて食事を楽しんだ。修子さんからは、２人目の妊娠といううれしい知らせがもたらされた。
楽しいひとときを過ごし、帰るために車に乗り込んだ修子さんに向かい、内村さんは窓越しにハンドルを握るジェスチャーをして口を動かした。「運転気をつけろよ」。親子の最後の“会話”だった。
そして同８日午後８時５０分ごろ、和代さんが惨状を目の当たりにした。
外出先から帰宅すると玄関の鍵が開いており、明かりの消えた室内にはエアコンがついていた。何かおかしい。血まみれになった内村さんが庭に倒れていた。
■すれ違いざまに殺害？
県警によると、内村さんはサンダルを履き、助けを求めようとしたのか電話の子機を持っていた。そばに血の付いた包丁が落ちていた。室内に血痕が残っていたことから、自力で庭に出て、刺さっていた包丁を抜き力尽きたとみられる。
遺体に防御創はなく「すれ違いざまに顔も見ないまま殺害されたのではないか」と、当時の捜査関係者は推測する。
室内には物色されたあとがあり、浴室の格子が外れていたことから、犯人はそこから窃盗目的で侵入したとみられる。家中に２４センチの靴跡があった。
しかし、近所の人の目撃証言から侵入者は男であるということ以外に、はっきりしたことは分かっていない。
■時効撤廃に尽力
あれから１６年。最後の夕食をともにした孫は１７歳になった。修子さんは「息子の先を見せてあげたかった」と話す。だが、下を向いているばかりではない。 修子さんは「遺族の代表としての声を社会に届けたい」と、自分の体験を語りながら、中学生を対象とした命の大切さを教える教室を定期的に開いている。
和代さんらは、殺人罪の時効を撤廃するために、平成１２年から全国犯罪被害者の会（あすの会）の活動に加わった。２２年の国会での時効撤廃決議にも立ち会った。
一方で事件に関する有力な情報は集まらず、捜査は足踏みしたままだ。
今年２月１７日、ＪＲ千葉駅前で支援団体や同署員ら約４０人とともに、情報提供を呼びかけるビラ約４５００枚を配布する和代さんがいた。寒空の下、「何年経っても体が続く限りこの活動は続ける。犯人はいるわけだから」と力強く言い切った。
情報の提供先は千葉東署「千葉市若葉区みつわ台における強盗殺人事件捜査本部」（電）０４３・２３３・０１１０（代表）。