ついに日本で発売される「Surface RT」の可能性
ITmedia PC USER 3月9日(土)19時12分配信
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Surface RTは10.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載したWindows RTタブレット
本田雅一のクロスオーバーデジタル:
Windows 8の発表とともに、米ニューヨーク市マンハッタン・タイムズスクエアの仮説店舗で、Microsoftが初めての独自パーソナルコンピュータ「Surface RT」の深夜発売イベントを大々的に開催したのは、2012年10月下旬のことだ。
【仕様表、その他の写真――ついに日本で発売される「Surface RT」の可能性】
週末のタイムズスクエアで道路をせき止め、デジタルサイネージはWindows 8とSurfaceのプロモーション映像で埋め尽くされた。隣り合うビルのサイネージまでがつながる手の込んだ演出は、その場にいたすべての人たちに「すごい!」と思わせるに十分なインパクトを持っていた。そのときの様子は現地でリポートした通りだ。
長蛇の列が作られたタイムズスクエアの店舗は2012年いっぱいで閉じられ、現在はM&Mチョコレートのアンテナショップが同じ場所を占有している。当初は店頭在庫を売り切ってしまい、Microsoft直営店、インターネット直販ともに好調だったようだが、昨今は新たな話題を作れずにいた、というのが現実かもしれない。
しかし、こうしたビジネスの動向と製品そのものの評価は別の話だ。MicrosoftがSurface RTをいよいよ日本国内にも投入するとなれば、実際の使い勝手はどのようなものかと興味を持つ読者も少なくないと思う。
日本マイクロソフトは2013年3月1日にSurface RTを国内販売すると発表したが、それに先立つ2月25日からアップルストア銀座を出た目の前に広がる松屋銀座の壁いっぱいに、Surfaceの広告を描き出し、日本へのSurface RT投入をアピールしている。
ここでは3月15日の国内販売開始を控え、まだSurface RTをよく知らない読者向けに、製品そのもののレビューを改めてお届けしたい。
●なめてかかると、意外に高レスポンスなSurface RT
まず簡単にハードウェアの評価から始めよう。
筆者はSurface RTをニューヨークでの発売時に購入しており、その評価をもとにこのレビューを書いている。Surface RTにはオプションのキーボードカバーが2種類用意されているが、その両方を購入して使用した。キーレイアウトは英語だが、OSはあらかじめ日本語に対応しており、キーボードも日本語版とタッチや重さなどに違いはない。
筆者個人の印象はとてもいい。NVIDIA Tegra 3のCortex A9クアッドコア1.5GHzというスペックは、いまやスマートフォンとしても上位モデルなら珍しくはない。それどころか、これから登場してくる新しいスマートフォンには、絶対的なパフォーマンスで負けてしまうかもしれない。
つまり、「(処理能力という観点で)高性能か?」と問われれば「ノー」と言わざるを得ないのだが、Surface RTはユーザーの操作に対する反応が良好で、タッチパネル操作への画面書き換えなどの追従性はとてもいい。
これは、例えばQualcomm Snapdragon S4のKraitデュアルコア1.5GHzを搭載するSamsungのWindows RTタブレット「ATIVE Tab」でも同様だったことを考えると、Windows RTそのものに、操作に対する応答を最優先したチューニングが施されているのだろう。また、Microsoftは徹底してメモリ消費を減らすチューニングをしたとのことで、そうした面もSurface RTの印象を高めることにつながっているのかもしれない。
タブレットで「フル機能のWindowsが動作する」と言うと、重ったるい動きを想像するかもしれないが、同じWindowsタブレットならば、Windows 7時代のIntelプロセッサを用いた(絶対的なパフォーマンスでは勝る)タブレットのほうが、操作に対する応答性は悪かったぐらいだ。
2Gバイトの搭載メモリだが、プリインストールのアプリやWindowsストアからWindows 8/RT用アプリをダウンロードし、一般的なタブレット端末としての使い方をこなすうえで、性能不足を感じることはあまりない。
ただし、性能のチューニングや操作に対する応答の優先制御などを徹底追求した結果であり、絶対的な性能は決して高いわけではない。
●PC的性能を求めない新しい使い方の提案
例えば、大量のメールを一気にダウンロードする、といった際には動作が重くなる。通常、こうしたタブレットは直近のメールしか読み込まず、一度メール一覧を更新した後、バックグラウンドで少しずつメールを読み込んでいくが、Windows RTが標準装備するメールは、PC的に一気にメールを読み込もうとしてしまうようだ(オプションを設定して、同期するメール数に制限をかければ、大幅に改善はする)。また、カレンダーアプリのビュー切り替えの際も、カレンダーに登録しているアイテムが多い場合、表示が遅れるといったことがあった。
もっとも、これらはアプリの処理が工夫され、よりハードウェア性能に見合ったものに改良されていけば、大きな問題とはならないだろう。現時点では完全に解消はされていないものの、この数カ月でもかなり標準添付のアプリの性能は上がってきている。
一般にスマートフォンやタブレットの情報ツールは、すべてのデータではなく、直近の必要な情報だけを端末内で処理し、残りはクラウドに置いておくというスタイルのアプリが多いが、Windows 8搭載PCと同じ標準アプリを備えるWindows RTは、通常のPCと同じだけの情報を処理するようデフォルトで設定されているため、やや印象面では不利といえるかもしれない。
しかし、そもそもWindows RTを搭載するコンピュータは、従来のPC的な高性能・大容量を求めない使い方を基本に設計されている。すなわち、iPadを代表格とする一般的なタブレットの使い方だ。
そうした意味において、Surface RTは十分な性能と画面解像度に見合うグラフィック性能を備えている。
もちろん、Windows RTと言えどもMicrosoftがWindows 8で提供するさまざまな機能(セキュリティ機能やネットワーク機能)を備えているので、企業ネットワークとの親和性も高く、特殊なドライバやプロトコルが必要でないならば、Windowsを置き換えられるプラットフォームとしての能力は持っている。プリインストールされる「Office 2013 RT」(Word、PowerPoint、Excel、OneNoteを含み商用利用が可能)と組み合わせ、ある程度は“お仕事パソコン”としても使えるだろう(Windows Active Directoryや仮想化、Outlookには非対応だが)。
しかし、Windows RTにはIntelプロセッサとの互換機能がないため、従来のWindows用アプリ(デスクトップアプリ)は動かすことができない。Windows 8とアプリは共有できるものの、それもWindowsストアから入手できるアプリ(Windowsストアアプリという)に限られる。つまり、これまで使ってきたWindows PCの代わりとして使うものではない。
●「PCのタブレット化」ではなく、「タブレットのスーパーセット」
こうした点について、MicrosoftはSurface RTを「タブレットのスーパーセット」なのだと話している。
Windowsストアアプリの充実に関しては、時間をかけなければ追いつくことはできない。現時点で十分とは言いがたいことも、Microsoftは承知している(最低限はそろっているとは思うが)。
しかし、Surface RTを実際に使ってみると、確かにそれはタブレットなのである。サスペンド/レジュームをほとんどタイムラグなしに実行でき、サスペンド中にも大きな電力の消費なくメールなどを受け取り、長時間のバッテリー駆動にも対応する。従来のPCで不便だった部分が、Surface RTでは解消されている(というよりも、一般的なタブレット同等になったと言うのが正しいだろうか)。
例えば省電力性能。31.5ワットアワーのバッテリーを背負うSurfaceは10.6型ワイド液晶ディスプレイで約675グラムと、9.7型スクエア液晶ディスプレイの「iPad」(第4世代のWi-Fiモデルで約652グラム)よりも軽量に仕上がっている。そのうえで、バッテリー駆動時間は最大約8時間を実現した。実際の使用感覚としても、iPadなどのタブレットと同等だと思う。
これだけならば、アプリがそろっているiPadのほうが便利だ。実際、アプリだけを使うなら、そのほうが幸せになれるだろう。しかし、軽量かつ省電力な道具、文房具としてのPCを考えるとき、iPadよりも制限が少なく、外部ストレージ(microSDカードスロットがあり、USB経由でも接続可能)が利用でき、PCに近い使い勝手ができる製品としての価値はある。
従来のPCユーザー的な観点から言うと、Windows RTには制限がとても多く、いわゆる“Windows PC”らしい使い方を想定していると、少々面食らうだろう。Windows RTを使いこなすには、まず「これはWindows“PCではない”」ことを受け入れ、他のタブレットにはできない使い方もできる、PCに近いタブレットと考えを切り替えることから始めることを勧める。
そこの部分を納得できるなら、Surface RTはなかなかよい仕上がりの製品である。ただし、彼らにとっても予想外だったのは、Intelの新型Atomプロセッサ「Atom Z2760」(開発コード名:Clover Trail)の性能がよかったことだろう。
Clover TrailはWindows 8が動作するため、従来のWindows用アプリも当然ながら動作する。そのうえ、ARMプロセッサと同レベルの省電力で薄型軽量なタブレットを開発できてしまう。
また、今後の懸念としては、サードパーティーのアプリがWindows 8(多くはIntel Coreアーキテクチャで高性能)に合わせて設計される可能性があることだろう。現時点において、圧倒的にマイノリティのWindows RTの性能に、どこまで合わせて開発してくれるかは、まだまだ未知数だ。
結論を言うならば、Windows RTとSurface RTが示す可能性は大きい。
既存のデスクトップアプリとの互換性はないものの、Windowsのほぼフル機能を利用可能なコンピュータが、タブレットと同じぐらいの気軽さで使える。Microsoftも、自身がイメージする未来のパーソナルコンピューティングを、ハードウェアとソフトウェア、それに連動するサービスまでを含めて設計、演出して消費者に届けることで、新たな製品分野を確立させたいと必死だ。
現時点では、まだ道半ばの印象が強いものの、Windowsが仕事で必須という人にとって、これ以上に手軽なコンピュータが存在しないことも確かである。今後の進化の中で、徐々に不満が解消されていくことを望みたい。
[本田雅一,ITmedia]
最終更新:3月9日(土)19時12分
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