原発 世界各地の今の動向は3月10日 6時7分
東京電力福島第一原子力発電所の事故からまもなく2年です。
ドイツなどで脱原発への取り組みが続く一方で、エネルギー需要が高まっている中国などの新興国を中心に、今後、原発の新規建設が急増する見通しとなっています。
世界原子力協会のまとめによりますと、ことし1月の時点で運転が可能な世界の原子力発電所は、31の国と地域で合わせて435基あります。
このうち、アメリカが104基と世界最大の原発保有国となっていて、次いでフランスの58基、3番目に多いのが日本、さらにロシアの33基、韓国の23基と続いています。
また、2030年までに世界全体で建設が計画されている原発は、27の国で167基に上っています。
このうち最も多いのが中国で、51基の建設が計画されているなど、エネルギー需要が高まる新興国を中心に、今後、原発の建設が急増する見通しです。
原子力への依存度が世界的に高まっていくとみられるなか、福島第一原発の事故を教訓に、各国で一層の安全対策の強化が求められています。
韓国は
韓国国内には現在23基の原子力発電所があり、電力需要のおよそ31%を供給しています。
さらに、南部ウルサンなどで5基の原発を建設しているのに加え、2024年までにもう6基の原発を建設する計画で、合わせると今後10年余りで11基の原発を新規に建設する方針です。
また、韓国は原子力発電所の輸出にも力を入れていて、2009年にはUAE=アラブ首長国連邦から受注を取り付けました。
UAEの原発を巡っては、日本などとも激しい受注競争を繰り広げましたが、交渉の最終盤にイ・ミョンバク前大統領みずからUAEを訪れてトップセールスに当たるなど、国を挙げて原発産業の展開に取り組んでいます。
その一方で、韓国でも、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、市民からは原発の安全対策の強化を求める声が相次ぎました。
さらに、去年2月には、南部プサンにあるコリ原子力発電所1号機で、操作ミスなどから一時すべての電源が喪失するトラブルがあったほか、11月には5基の原発で合わせて5000個以上の部品の品質保証書が偽造されていたことも明らかになり、国民の間で原発の安全性を巡る議論が高まっています。
一方で、韓国の原子力政策を巡っては、使用済み核燃料の扱いが大きな課題となっています。
アメリカから核燃料のウランを輸入している韓国は、その再処理について、原子力協定を締結しているアメリカからの同意が得られていない状況です。
こうしたなかで、使用済み核燃料が国内の原発内部などに増え続けていて、3年後の2016年には一部の原発で燃料プールなどがいっぱいになると予想されており、韓国政府は、アメリカとの原子力協定の改定を目指すとともに、貯蔵施設の増設などに取り組むことにしています。
中国は
中国政府は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、新規の原発建設計画の承認手続きを一時凍結しましたが、すでに建設が進められていた原発についてはそのまま工事を進め、おととし8月には南部広東省で新たな原発が営業運転を始めています。
そして去年10月には原発の中長期的な建設方針などの新たな計画を決定し、新規の原発建設を再開する方針を示しました。
現在中国国内では試運転中のものを含め17基の原子炉が運転可能となっていて、28基が建設中となっています。
さらに、世界原子力協会によりますと、2030年までには51基の原発の建設が計画されるなど、中国政府は、経済発展によって増え続ける電力需要を積極的な原発の建設によって賄う方針です。
ただ、中国では、原発の事故やトラブルの情報についてきちんと公表されていないと、市民の間から不安視する声も出ており、原発安全に関わる情報について情報公開が求められています。
アメリカは
世界で最も多い104基の原発が稼働しているアメリカでは、2年前に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、事故の原因を分析するための調査チームを各地の原発に設けるなど、その教訓を生かそうと取り組んできました。
こうしたなか、各地の原発では、福島第一原発の事故のように複数の原子炉が同時に冷却できなくなってメルトダウンにつながるような事態を防ごうと、「フレックス」と呼ばれる新たな安全対策の導入を始めています。
具体的には、複数の原子炉の電源がすべて失われても、長時間にわたって水を注水し続けられるよう、ポンプ車や発電車を大幅に増やそうとしているほか、使用済み核燃料プールに水を直接供給できる新しい安全システムの整備を急いでいます。
アメリカは、こうした安全強化を図りながら、原発推進路線を堅持する方針で、2030年までに合わせて13基の原発の新設を計画しています。
しかし、使用済み核燃料の最終処分場となる予定だった西部ネバダ州の「ユッカマウンテン」の計画が白紙撤回され、ことし1月には、処分場の選定が2048年まで事実上先延ばしになるなど、増え続ける「核のゴミ」の扱いが課題となっています。
ヨーロッパ各国は
▽ドイツでは、福島第一原発の事故を重くみて、原子力政策の見直しを決め、おととし6月、国内に17基ある原子炉を2022年までにすべて廃止する方針を決めました。
ドイツでは2010年には原発の稼働期間を延長する決定を出していましたが、福島第一原発の事故による反原発の世論の高まりを受け、事故のあと、主要国で初めて脱原発にかじを切る形となりました。
▽スイスでも、国内に5基ある原子炉を2034年までにすべて廃止する方針を決め、ドイツに続いて脱原発を打ち出しました。
去年3月には、運転開始から40年が経過した原発の運転を停止するよう電力会社に命じる判決が言い渡され、脱原発の動きが加速しています。
▽イタリアでは、福島第1原発の事故の影響で、おととし6月、原発の是非を問う国民投票が行われました。
その結果、原発に反対する票が90%を超え、脱原発が決まりました。
▽一方、58基の原子炉を持ち、国内の電力の80%近くを原子力で賄う、原発大国のフランスでは、去年5月に発足したオランド政権が、2025年には総発電量に占める原子力の比率を50%にまで引き下げる公約を掲げ、まずは1977年に運転を開始した国内で最も古い原発を2016年までに閉鎖する方針を示しました。
しかし、ほかの原発の運転や建設はこれまでどおり進めるとしています。
▽北欧のフィンランドは、世界で初めて高レベル放射性廃棄物の処分場の建設に着手するなど、原子力を基本にしたエネルギー政策を推進し、新たな原発の建設も進めています。
▽総発電量のおよそ40%を原子力が占めるスウェーデンでも、10基ある原発は今後も維持される見通しです。
▽イギリスでは、おととし6月、政府が原発の安全性や規制に問題はないとして、これまでどおり原発を推進する方針を表明しました。
運転が可能な原発は現在16基あり、さらに4基の原発を建設する計画で、原子力がエネルギー政策の中核の一つとなっています。
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