フクロオオカミ、絶滅種再生の可能性
2013年03月10日
Photograph courtesy Smithsonian Institution Archives
オーストラリアのタスマニア島やニューギニア島に生息していたフクロオオカミ(1906年頃に撮影)。大型犬ほどの大きさの肉食有袋動物だが、背中の特徴的なしま模様からタスマニアタイガーとも呼ばれる。1930年代、タスマニア島の1頭を最後に絶滅種に指定された。生息地の減少や移入された犬も原因として否定できないが、追い詰めたのは人間の狩りだと多くの生物学者は考えている。
絶滅種を再生させる際は、現存する近縁種との遺伝子情報の比較が重要になるが、研究者のベン・ノバク(Ben Novak)氏によると、タスマニアタイガーは遺伝的差異が大きいため、再生が難しいという。最も近い種と考えられるタスマニアデビルとフクロアリクイは、どちらもかなり身体が小さい。
しかし研究者たちは諦めていない。2008年には、オーストラリア、メルボルン大学の生殖生物学者アンドリュー・パスク(Andrew Pask)氏が、100年前の4体の標本(成体の皮標本1体、幼体のアルコール漬け標本3体)からDNAを抽出。短い塩基配列を抜き出して目印となるマーカーを挿入し、マウスの胚に注入した結果、タスマニアタイガーの該当の遺伝子発現が確認されたという。
当時パスク氏は、英科学誌「New Scientist」に対し、「標本はどれもDNAの状態が非常に悪かったので、クローンを創出できるとは考えていなかった」と話している。2012年4月に同氏が公開したその後の調査結果からは、生前のタスマニアタイガーは、遺伝的多様性の低さに問題があったことがわかっている。
Brian Clark Howard for National Geographic News
「フクロオオカミ、絶滅種再生の可能性」(拡大写真付きの記事)
2013年03月10日
【関連コンテンツ】
・ケブカサイ、絶滅種再生の可能性
・マンモス復活? 絶滅種再生の可能性
・ゴリラのゲノム解読に成功
・先史時代の巨大“カンガルー”は人間に狩られて滅亡していた
・タスマニアデビル、繁殖時期の前倒しで奇病に対抗