百貨店に勤めていた頃、仲の良い女子6人でバーベキューをしようという話で盛り上がり、
休日を合わせて4月の桜が散りかけの頃に●市にある青少年センターに行きました。
そこは電車からケーブルに乗り換えて徒歩5分の山頂から少し歩いたキャンプ場。
山頂には勝負の神様を祀る歴史ある神社があります。
その神社をぬけて少し歩いた場所は、
偉人として知られている学者の記念碑がありキャンプ場が見えてきます。
平日の休みなので、私たち以外は近隣の小学生が課外授業で来ていたのでした。
私たちは会社の人間関係や最近の話などしながら楽しくバーベキューが終わり、
キャンプ場で借りていた調理器具も事務所に返し身軽になったので、
あとは街中に出てお茶でもしよう、という話になりました。
行きはケーブルに乗って来たのですが、帰りは麓まで歩こうという話で事務所に地図をもらい帰る事に。
一人が事務員さんに
『ここから●駅まで歩くとだいたいどれくらいかかりますか?』
事務員さんは丁寧に地図を指差して、
『少し歩くとハイキングコースの矢印があるから、矢印に従って歩くと30〜40分くらいやね』
山を歩き慣れない女子6人。1時間位はかかるかな〜、と全員が考えていました。
事務員さんにお礼を言って、私たちはたわいないお喋りをしながらてくてくと歩きました。
道は山道を踏み馴らした道で歩くのはさほど苦にならなかったのです。
歩き始めて20分くらい経った頃、誰かが『あっ!』と声を出しました。
前をみると大きな木の下に真新しい花束が。
そのすぐ横に小さなお地蔵さんがあったのです。
お地蔵さんの倍はある花束の大きさにちょっと違和感を感じてました。
しかも、めったに人が通らない場所。
『お地蔵さんだ』
『あるねー』
直接花束の事は触れずにそのまま通り過ぎ。
山道は適度に日が差し込んで明るく、
ハイキングコースの矢印も2〜300メートル毎にあるので気にせず歩いていました。
私たちの歩く左側が山頂の神社の土地、
右側に小川が流れハイキングコースの立て看板も【●駅まで約1.5キロ】と書かれ、
そこには矢印まで書いていました。
1本道です。迷う訳がないのです。
『もうすぐ駅だって〜』
1.5キロならだいたい20分もあれば余裕で歩けます。
ところが、
『あっ!』
仲間の一人が声をあげました。
視線の先に先ほど見た大きな真新しい花束とその隣に小さなお地蔵さんがあったのです。
『よく見るね…』
いつもはムードメーカーの子の声が少し上擦っているのがわかっていたので、
【んな事あるかいっっ】
というツッコミを敢えて言いませんでした。
話をはぐらかし、みんなわざと先程の花束の事は一切触れずに話していましたが、
またしばらく歩いていると、あの大きな木と真新しい花束と小さなお地蔵さんが。
『―ねえ…私たちキャンプ場出たの何時だったっけ?』
私たちがキャンプ場を出たのは午後1時過ぎでした。
歩きながら一人が
『…今、もうすぐ4時だよ』
【―もしかして、遭難した!?】
嫌〜な空気が流れました。
まだ携帯が普及してない時代です。
おかしいじゃないですか。
だって、私たちは【1本道】しか歩いてないんですから。
私は、昔祖母に聞いたあるおまじないの言葉を思い出していました。
4度目が来たら言うおまじない。
―そして、 4度目は来ませんでした。
農作業風の背中にカゴを背負ったおじさんが歩いてきたのです。
『すみませ〜ん、あの、●駅に行くにはどうしたらいいですか?』
おじさんは【何を聞いてるんだ?】という顔をしましたが、
私たちが必死な顔だったようで、一同を見回すとニヤっと笑いました。
『―あんたら、タヌキにでも化かされたか?』
『タヌキ!?』
全員が聞き返しました。
『●の土地はな、昔っからそんな話多いねん』
おじさんが指差した方向にそれまで見えなかった家の屋根が見えました。
ダッシュしたのは言うまでもなく。
―それから、私たちが●駅に着いたのは6時過ぎ。
約5時間歩いていたのでした。
未だに、あの時の事がわかりません。
―そして、後日談。
この話を旦那さんの友人Oさんに話をした。
したらば、●市が地元のOさんがこんな怖いことをおっしゃった。
『その道…な、有名な心霊スポットの入り口やねんけど…
ところでそのおっさん、ホンマに生きてる人やったか?』
はた、と考えた。
おかしいのです。
山に詳しい方ならご存知でしょうが、
【軽装で夕方から山に入る人はいない】って事。
しかも、紺の厚手の着物地に白ズボンに足元はゲートル
(後で聞いたら、ひざまでの高紐ブーツの事)をはいて、
背中にはしょいカゴと鍔の広い麦わら帽、
首には手ぬぐい、腰紐に鎌を直にさしていたのです。
今から20年前、特徴を言ったら鼻で笑われました。
『いつの時代の人だ?』
と。
後日談、更に続きます。
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休日を合わせて4月の桜が散りかけの頃に●市にある青少年センターに行きました。
そこは電車からケーブルに乗り換えて徒歩5分の山頂から少し歩いたキャンプ場。
山頂には勝負の神様を祀る歴史ある神社があります。
その神社をぬけて少し歩いた場所は、
偉人として知られている学者の記念碑がありキャンプ場が見えてきます。
平日の休みなので、私たち以外は近隣の小学生が課外授業で来ていたのでした。
私たちは会社の人間関係や最近の話などしながら楽しくバーベキューが終わり、
キャンプ場で借りていた調理器具も事務所に返し身軽になったので、
あとは街中に出てお茶でもしよう、という話になりました。
行きはケーブルに乗って来たのですが、帰りは麓まで歩こうという話で事務所に地図をもらい帰る事に。
一人が事務員さんに
『ここから●駅まで歩くとだいたいどれくらいかかりますか?』
事務員さんは丁寧に地図を指差して、
『少し歩くとハイキングコースの矢印があるから、矢印に従って歩くと30〜40分くらいやね』
山を歩き慣れない女子6人。1時間位はかかるかな〜、と全員が考えていました。
事務員さんにお礼を言って、私たちはたわいないお喋りをしながらてくてくと歩きました。
道は山道を踏み馴らした道で歩くのはさほど苦にならなかったのです。
歩き始めて20分くらい経った頃、誰かが『あっ!』と声を出しました。
前をみると大きな木の下に真新しい花束が。
そのすぐ横に小さなお地蔵さんがあったのです。
お地蔵さんの倍はある花束の大きさにちょっと違和感を感じてました。
しかも、めったに人が通らない場所。
『お地蔵さんだ』
『あるねー』
直接花束の事は触れずにそのまま通り過ぎ。
山道は適度に日が差し込んで明るく、
ハイキングコースの矢印も2〜300メートル毎にあるので気にせず歩いていました。
私たちの歩く左側が山頂の神社の土地、
右側に小川が流れハイキングコースの立て看板も【●駅まで約1.5キロ】と書かれ、
そこには矢印まで書いていました。
1本道です。迷う訳がないのです。
『もうすぐ駅だって〜』
1.5キロならだいたい20分もあれば余裕で歩けます。
ところが、
『あっ!』
仲間の一人が声をあげました。
視線の先に先ほど見た大きな真新しい花束とその隣に小さなお地蔵さんがあったのです。
『よく見るね…』
いつもはムードメーカーの子の声が少し上擦っているのがわかっていたので、
【んな事あるかいっっ】
というツッコミを敢えて言いませんでした。
話をはぐらかし、みんなわざと先程の花束の事は一切触れずに話していましたが、
またしばらく歩いていると、あの大きな木と真新しい花束と小さなお地蔵さんが。
『―ねえ…私たちキャンプ場出たの何時だったっけ?』
私たちがキャンプ場を出たのは午後1時過ぎでした。
歩きながら一人が
『…今、もうすぐ4時だよ』
【―もしかして、遭難した!?】
嫌〜な空気が流れました。
まだ携帯が普及してない時代です。
おかしいじゃないですか。
だって、私たちは【1本道】しか歩いてないんですから。
私は、昔祖母に聞いたあるおまじないの言葉を思い出していました。
4度目が来たら言うおまじない。
―そして、 4度目は来ませんでした。
農作業風の背中にカゴを背負ったおじさんが歩いてきたのです。
『すみませ〜ん、あの、●駅に行くにはどうしたらいいですか?』
おじさんは【何を聞いてるんだ?】という顔をしましたが、
私たちが必死な顔だったようで、一同を見回すとニヤっと笑いました。
『―あんたら、タヌキにでも化かされたか?』
『タヌキ!?』
全員が聞き返しました。
『●の土地はな、昔っからそんな話多いねん』
おじさんが指差した方向にそれまで見えなかった家の屋根が見えました。
ダッシュしたのは言うまでもなく。
―それから、私たちが●駅に着いたのは6時過ぎ。
約5時間歩いていたのでした。
未だに、あの時の事がわかりません。
―そして、後日談。
この話を旦那さんの友人Oさんに話をした。
したらば、●市が地元のOさんがこんな怖いことをおっしゃった。
『その道…な、有名な心霊スポットの入り口やねんけど…
ところでそのおっさん、ホンマに生きてる人やったか?』
はた、と考えた。
おかしいのです。
山に詳しい方ならご存知でしょうが、
【軽装で夕方から山に入る人はいない】って事。
しかも、紺の厚手の着物地に白ズボンに足元はゲートル
(後で聞いたら、ひざまでの高紐ブーツの事)をはいて、
背中にはしょいカゴと鍔の広い麦わら帽、
首には手ぬぐい、腰紐に鎌を直にさしていたのです。
今から20年前、特徴を言ったら鼻で笑われました。
『いつの時代の人だ?』
と。
後日談、更に続きます。
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