新型出生前診断:4月にも臨床研究、約20機関が準備
毎日新聞 2013年03月09日 20時18分(最終更新 03月09日 23時10分)
日本産科婦人科学会(日産婦)は9日、妊婦の血液から高精度で胎児の染色体異常が分かる新型出生前診断について、実施指針を決定した。日本医学会内に設置した部会が医療機関を審査・認定し、早ければ4月から臨床研究として検査が始まる見通し。約20の病院などが申請準備を進めているという。
採血だけの簡単な検査が、中絶という重大な選択と結びつき、妊婦が混乱する恐れがある。指針は「簡便さを理由に広く普及すると、出生の排除や生命の否定につながりかねない」と指摘。「十分なカウンセリングのできる施設で限定的に行われるべきだ」として、実施施設に染色体異常の診療経験がある産婦人科医と小児科医が常駐することなどを求めた。
昨年12月に公表された原案は、対象妊婦の条件の一つとして「35歳以上」と明記していたが「目安であって、厳密に記載するのは現実的ではない」と「高齢妊娠」に変更した。
同日、日本医学会は日産婦と共同で声明を発表。実施は部会への結果報告を義務づける臨床研究として慎重に開始すべきだとした。また、全ての医師や医療機関、検査会社に対しても、指針を尊重するよう呼びかけた。
臨床研究を計画する医師らでつくる「NIPTコンソーシアム」によると、約20の大学病院などが現在、検査開始の準備を進めている。検査には、18万〜21万円程度かかる見込みで、病院名は今後、同コンソーシアムがホームページで公表する予定。【斎藤広子、久野華代】
◇具体対応が明記されず
玉井邦夫・日本ダウン症協会理事長の話 指針は、染色体異常についてカウンセラーが妊婦や家族にどう情報提供するかなど、具体的なことが明記されていない。今後論議してほしい。診断技術が進歩しすれば、近い将来、胎児の染色体異常だけでなく寿命、身体能力まで分かるようになるだろう。自分が望まない子なら妊娠をやめることもできるようになる。ダウン症の子どもを産むかどうかだけの判断に限られる問題ではない。そんな時代につながることを考えてほしい。