■感想など■

2009年10月13日

[異種姦-触手] 「再会」〜にくらしいあなたへ〜

■■【1】■■
 彼女が、実は15年前に別れたきりの「乳姉弟」の「義姉」だと、現領主シグフィス=フォルモファラスが気付いたのは、彼が“仮母”適正のために彼女の三代前まで遡る『血統書』を統合府から取り寄せたことによる。

 恥ずかしながら、彼はそれまで彼女が自分の「義姉」だとは、これっぽっちも気付かなかった。
 そもそも、彼女は『フォルモファラス家』に、既に一年前ほど前から身を置いていたのに……だ。
 地球統合府の「機関」から送られてきた“仮母”候補に、自分から強く望んで入った者がいた……とは聞いていたが、よもやそれが同じ乳で育ち、幼い自分の面倒を見て可愛がってくれた義姉だとは、たとえ自分と同じ立場の者がいたとしても、普通は考えないに違いない。

 思えば、この『城』に来た時から何か言いたげだった彼女の態度が、目に見えて硬化した事に気付いたのは、当時6人いた“仮母”候補に、それぞれシグフィスが「名前」を聞いてからだと記憶している。
 感情のわかりにくい人類の、しかも女性体ともなれば、『セグネット』族の彼には、その心の内を窺い知るのは不可能と言っていい。
 ただ、彼女が告げた「ティファ=ローニィ」という名前に引っかかりを感じた以外、特に問う事も無かった自分に、全く非が無かった……というわけではないのだと、彼だとて今になってみれば思いもする。

 それ以来、彼女からは笑みが消え、彼女の「主人」たるシグフィスには、現在に至るまで常に刺すような視線だけが向けられているのだ。
 かと思えば彼の死角(……と、彼女は思っているらしいが、哺乳類と違いシグフィス達『セグネット』の視界は、複眼の感知範囲を入れれば、ほぼ360度をカバーするため、そもそも「死角」というものが存在しない)から、何か、ひどく物言いたげ視線を向けてくるのだから、いくら鈍感なシグフィスとはいえ嫌でも気に留めてしまうというものだ。
 彼女を“仮母”の正式な候補にしたのは、それが原因……というわけでは決して無かったが、肉体面でも精神面でも、そして教養面でも思想面でも、さらには礼儀作法から『セグネット』の慣習の理解度に至るまで、適正としては全く問題の無い3人の最終候補者から結果的に彼女を選んだその理由に、「より興味をそそる存在だったから」という理由がカケラほども心に無かったと言えば、嘘になるかもしれない。
 そして“仮母”として確定し、彼女に意思確認をした後で取り寄せた、あくまで形式的な血統書に、かつてシグフィスの“仮母”であり乳母だった「セラン=ウィバ=ローニィ」の名が記されていた……というわけだ。

 シグフィスの種族『セグネット』と比べ、非常に“のっぺり”として凹凸の少ない人類の顔は、彼らには咄嗟に判別しにくいし、逆に昔は凹凸(おうとつ)が全く無かったのに今ではやたらと凸凹(デコボコ)した体のラインからは、昔の……まだ幼かった頃の面影を想像するのは難しかった。
 体長が全体的に伸びたのは過ぎた年月を考えれば良しとしても、頭部の毛髪が長く伸び、胸部の『乳房』(哺乳類型生物特有の、幼生体のための授乳器官だ)が巨大に膨らんで『臀部』(交尾の際に行う摩擦運動で、互いの体の衝突を和らげる緩衝材となる、脂肪層が厚く付いた腰の後部)が大きく張り出し、それを更に顕著にするかのように腹(ウエスト)が絞り込まれていては、その体型から、かつてとても幼かった義姉を想像しろという方が無理な話だろう。
 たとえ彼女……「ティファニア=リィド=ローニィ」が、地球人の尺度で言えば「眩しいくらいに美しい」としか言いようの無い女性だとしても、シグフィスには簡単には見分けはつかないのだ。

 『セグネット』族は、現在の地球に住む知的生命体の中でも、寿命が非常に長い部類に入るだろう。
 だが、成体までの成長は、とても早い。
 人間の約2倍の速さで成長し、地球公転での5周期(5年)に1回の脱皮を3回経ると、社会的責任を負い、権利を行使する立場としての自由を審議会より与えられ、一族の間で「成人」と認められる。
 15周期(歳)は、人類ではまだまだ“子供”の域を出ないが、『セグネット』の母星の公転周期は地球の約半分のため、母星年齢では30齢となる。肉体的にも生殖機能が十分に成熟して、晴れて交尾(子孫を残す権利)が許されるのだ。

 そして、シグフィスは一年前に3回目の脱皮を終え、交尾可能な30齢となっていた。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/32864491

この記事へのトラックバック

★足跡代わりにポチッとしてってくださいな★