「バンクーバー五輪の時よりも質がいいトリプルアクセルでした」
大阪で行なわれた四大陸選手権のショートプログラムで、浅田真央は2年ぶりの大技を成功すると自身のジャンプをこう分析した。
これは単なる喜びのコメントではない。現役女子唯一の大技を、成功どころか、さらに質を上げるという、孤高な戦いへの勝利宣言だった。
「バンクーバーの頃はジャンプを見失いかけて凄く悩んでいました。トリプルアクセルは、深くしゃがんで“待って”から跳んでいて、子供の頃のように軽々と跳んでいなかった」
ジャンプの崩れを感じながらも五輪で銀メダルを獲得すると、すぐにジャンプ改造に着手。基礎技術のコーチングに定評がある佐藤信夫コーチに師事し、時間をかけてゼロからやり直すことを決意した。
「最初の2年間は、先生の求めているスケートがわからず、わかっても体に前の癖が残っていてうまくいかなくて、我慢に我慢でした。どのタイミングが正しいのか確信できず、不安なままジャンプを跳んでいた」
半年間のオフ後、深く考えず新しいタイミングで跳べるように!
佐藤は基礎のスケーティングをまず安定させ、その土台が完成してからトリプルアクセルを築くという計画を立てる。しかし浅田は、タイミングを探して毎日跳び続け、悪いクセの上から新しいものを上塗りした。そこで昨季終了後に、佐藤から氷から離れることを薦められ、半信半疑で7月までレッスンを休んだ。
このオフが意外な効用を生む。
「オフの後、トリプルアクセルのクセが抜けて、新しいタイミングが体に入るようになったんです」
佐藤も「スケートから遠ざかった事で過去のことを忘れ、変な欲が無く素直に練習できている」という。
昨季までは、トリプルアクセルのことを考えると気持ちが固くなってしまい、力を使って跳んでいた。しかし、半年以上跳ばなかったことで、得意なダブルアクセルと同じタイミングで、深く考えずに軽く踏み切れるようになったのだ。タイミングさえ手に入れれば、あとは練習のみ。正月明けからは毎日練習した。
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