MC関連のWEB作品感想 その1
9月に入って間もなくのことです。
厳しい残暑で真夏日となることを、朝の天気予報が告げたそんなある日のこと――。
某巨大掲示板群の某スレに私がポストした「びーろく氏、おくとぱす氏、てん氏の作品に感銘受けて書き始めた」という書き込みに対し、「よさを教えてくれよ。長文でこってりと」というレスを頂きました。
いや、上記の私のことばは嘘いつわりなく本当のことだけど、失礼ながら、お三方の作品に感想らしきものを書いたことが今まで一度もなかったことに気づかされました。
だから2ちゃん、好きなんだよな〜。
(ポストはごくごく稀に、しかもコテハンという掟破りの参加しかしていませんが……)
当然、かの地であれば、「マジレス、気持ち悪〜い」となる話ですが、
正々堂々と長文書く理由もできたし(笑
これはひとつ、襟を正して、感想を書いておくべきではないか。
それは同時に、私が「催眠エロ小説」に対して何を求めているのか、何を書きたいのかを、自分自身で確認することにも繋がるのではないだろうか。
そしてまたこれは、
《催眠に関する記憶》の続編ともなるワケで、「EGOゑぶろぐ」の記事としても、なかなかオイシイのではないか……。
ま、そんな風に考えた次第で、《催眠に関する記憶》2、特に上記お三方を中心にしたMC関連のWEB作品の感想でございます。(できるだけそうならないように配慮しますが、一部ネタばれ的要素もあるので、ご留意ください)
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時は21世紀になったばかり、この世界にはまだ
「催眠王」(催眠官能ビデオ)はもちろん
BLACKRAINBOWの「催眠術」(催眠術エロゲーム)も存在せず、ニューヨークのワールドトレーディングセンターがその二本のタワーを高く天に向かってそびえさせていた時代――。
インターネットでHな画像やHな小説を漁っていた私は、ある日ふと「催眠術」ということばで検索をかけた。
検索エンジンの画面にはいくつもの検索結果が羅列され、その中には「大人のための催眠術」というタイトルのサイトが混じっていた。
多分、私はすぐに“そこ”をクリックしたのだと思う。
躊躇う理由はなかった。
「催眠術で女性を意のままに操れたら・・?」
サイトのトップページに、そう書かれていた。
そして私は、数々の催眠H小説と出会うことになった。
「創作ルーム」に納められたものを、上から順番に読んでいった。
トップはサイト主催者のTMさんの作品だった。
そこには、サイト管理者の指向と方向性が、余すところなく綴られていたように思う。
私が訪れた時には、すでに何本もの作品が寄せられた後だったが、「催眠奴隷〜女子大生さやかの場合〜」がなければ、現在の「大人の催眠術」の広がりや、数々の作品群は存在しなかったか、あったとしてももう少しこじんまりしたものになっていたことだろう。これが、サイト開設時の一番最初の作品であったことは間違いない。ある意味、投稿者が作品を投稿する時の基準であると同時に、目標でもあったに違いないと思うのだ。
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今では創作ルーム作品も非常に増え、その中にはほぼ同じ時期に投稿を開始した盟友(と、勝手に決めてしまう)であるGWさんの作品など、色も味も違う傑作がたくさんある。
ただ私が最初に見た当時は、すでに多数の投稿作品が並んでいたとはいえ、まだ今ほどではなくて、TMさんの次に永慶さんが位置していたように思う。
「湖のトンネル」を読んだ時にはそのイメージの鮮烈さがいつまでも頭に残った。タイトルにもなっている「湖」とそこから続く「トンネル」というアイデアは、暗示文の美しさ・リアリティとともに、暗い別次元へと連れていかれるような催眠の怖さも表わしていて、今でも記憶に残っている。
「カフェーにて」は、大正時代後期の浅草を舞台にした作品で、凝った設定と文体が実に魅力的だ。さりげなく挿入されるフロイトの理論も、時代設定によくマッチしていて、物語を魅力的なものにすることに一役買っている。
フロイトが当時行っていた精神分析は、現代においてはそのままでは当てはまらない部分も多いように思う。だが、彼が臨床で催眠を用いた治療を行っていた当時は確かに有効だっただろう。また彼が定義した「無意識」「抑圧」「防衛」といった概念こそが、その後の心理学を生みだし発展させた基礎となっていることは間違いない。
ただ永慶さんは、それらの知識を前面に押し出したりはしない。当時の流行や風俗とあわせて、史実を元にした設定が嫌みにならない絶妙なバランスで配置されているのだ。フロイトの理論は、記憶にはないのに懐かしい気配や、見せ物小屋の妖しさ、そしてレトロなカフェを舞台にしたロマンティシズムと同様さりげなくちりばめられ、甘くてほろ苦い物語を語るための効果的なアイテムとして使われている。そこで描かれる催眠のテクニックに関するアイデアもまた、他では見たことのない斬新さとともに、物語の筋に完全にマッチした憎い演出となり、つい「なるほど〜」と唸りたくなるような独特の結末へ集約させているのだ。

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