日本経済新聞

3月9日(土曜日)

日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
  • ヘルプ

コンテンツ一覧

クローズアップ

「アレキサンダー・ワン」生んだ民族大移動 NYファッション前線(前編)

(2/4ページ)
2013/3/9 6:30
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
リプリント
共有

■成功には実業的センスが不可欠

米国を足場に飛躍した
主なアジア系デザイナー
デザイナー/
ブランド名
系統出身地
1980年代
FOREVER21韓国系カリフォルニア
80年代後半から90年代
ビビアン・タム香港香港
アナ・スイ中国系ミシガン
ベラ・ワン中国系ニューヨーク
2000年代
フィリップ・リム中国系カリフォルニア
デレク・ラム中国系サンフランシスコ
タクーンタイ系ネブラスカ
ジェイソン・ウー台湾・カナダ台北
アレキサンダー・ワン
(バレンシアガ)
台湾系サンフランシスコ
フンベルト・レオン
(オープニングレセモニー・KENZO)
チベット系カリフォルニア
キャロル・リム
(オープニングレセモニー・KENZO)
韓国系カリフォルニア
ドゥー・リー韓国系ニュージャージー

 

 いくらモノがよくても、一定の量を売り上げないとブランドとしては定着しない。駆け出しのデザイナーが“メジャー”になるにはそうした「量の壁」があるが、母親が中国にニット工場を持っていたワンは“ハズレ”を恐れずに、作っては売り出すことができた。

 中国は世界中のブランドが生産拠点を置く国。ニットからスタートしたワンが他の素材に手を広げるたびに、新たな工場が必要となったが、母親が中国人脈ですぐに探してきてくれた。

 だからこそ「思わずうなる価格設定」(ニューヨーク在住のファッションジャーナリストの森光世さん)もできるのか。高級品を扱いつつ、バッグは革製でも10万円以下、80ドルでTシャツが買える「T by Alexsander Wang」も持つ。安くはないが、それほど無理しなくても手が届く価格に設定できるのは強い。

■親族の結束が武器

 ワンの成功について石井さんは「感覚が若い女性の気分とマッチしたこと」を挙げるが、その才能と同じくらい大きな要因として、台湾からサンフランシスコへ移民した母親ら親族の結束を重視する。

 「アーティストとデザイナーが決定的に違うのは、ファッションは産業だということ。経営ができる人がいないと成功できない」。そのビジネス部門にワンは心強い後ろ盾を得ていたわけだ。

 高級路線でブランドを築いたジェイソン・ウーも、資金力も経営能力もある盤石の親がいる。ウーの漢名は呉季剛で、台湾生まれ。親が台湾で貿易会社を営み、ウーをカナダ・バンクーバーの全寮制学校に送り込んだ。憂いなく才能を生かせる環境があった。

ショーの舞台裏。表舞台ではアジア系デザイナーが躍進する
画像の拡大

ショーの舞台裏。表舞台ではアジア系デザイナーが躍進する

 ワンやウーと違って、苦労の末にはい上がったというシンデレラ組も少なくないが、アジア系ならではのコミュニティーの強さを生かしている点では共通しているようだ。

 セレクトショップ「オープニングセレモニー」の共同創立者で、高田賢三が始めた「KENZO」のデザイナーを務めている韓国系のキャロル・リムとチベット系のフンベルト・レオンの2人は、バレンシアガのプレスをしている中華系の共通の友人によって、カルフォルニア大バークレー校で引き合わせられた。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 3ページ
  • 4ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
印刷
リプリント
共有

【PR】

【PR】

クローズアップ 一覧

アレキサンダー・ワン

「アレキサンダー・ワン」生んだ民族大移動 NYファッション前線(前編)

 アジア系デザイナーで初めてフランスのトップブランド「バレンシアガ」に登用されたアレキサンダー・ワン(29)。その才能を見いだしたのは日本出身の“スカウト”……。アジア系がファッションシーンのトップラ…続き (3/9)

「アルピジェラを作る女性たちと段ボール集めをする人々」(1978年ころ、制作者不明)Photo:Colin Peck Courtesy of arpillera collection,Kinderhilfe Chile/Bonn
貧困と政治的抑圧にもかかわらず、明るく希望にあふれたこの作品は、サンティアゴのポブラシオン(貧困地区)の日常を表現している

チリ抵抗の手芸
キュレーター ロベルタ・バシック

 真っ赤な太陽とカラフルな建物を縫い付けた1枚の壁掛け――。一見、とても愛らしいこのパッチワークは1970年代、…続き (3/5)

「私の人生のピークは70歳だった」

 生物学から医学、民俗学まで修める旺盛な好奇心で、人類史に新たな視点を提供してきたピュリツァー賞受賞者、ジャレド・ダイアモンドさん(75)は自身の全盛期は40代でも50代でもなく「70歳のときだった」…続き (3/1)

メニュー一覧

アート&エンタ
レビュー
くらし
ヘルス
味・旅
コラム
小説

【PR】

モバイルやメール等で電子版を、より快適に!

各種サービスの説明をご覧ください。

TwitterやFacebookでも日経電子版をご活用ください。

[PR]

【PR】

ページの先頭へ

日本経済新聞 電子版について

日本経済新聞社について