兄弟喧嘩

ドォン!!!



「「大佐!?」」
爆発音が執務室から聞こえ、ハボックとホ−クアイが扉を勢いよく開けた先、
広がった光景は半分部屋が破壊された状態であった。



「・・・何があったんだ?これ」
「私にもさっぱりでね」
「うおわっ!!そこに居たんすか、大佐」
扉のすぐ横に腕を組みながら立っている上官に、ハボックたちは無事を確認した。
「無意識に気配を消す癖どうにかしてくださいよ」
「癖だからな、直しようが無い」
「大佐、一体何があったんですか?」
「急に喧嘩を始めたんだよ」
「誰がですか?」


「鋼のが」


「「誰と?」」


「アルフォンス君と」



「「「・・・・・・・・・・・」」」





「エドワ−ド君ならともかくアルフォンス君まで破壊するとは珍しいですね」
「いつもなら大将が破壊するのを止める役だもんな」
「君達ね・・・・・」






ドオオォン!!!!(うお---?!・・・何だ?!・・・わぁ---!!!)





「「「・・・・・・・・・・・」」」



「とにかく、確保するのが先決だな」
「理由はその後でじっくり聞かせてもらいます、大佐」
「私にか?!」
「や、あの二人が喧嘩する原因って大佐以外無いんじゃないんすか?」
「・・・・・・本当に君達ねぇ・・・・・・・」
その場に頭を抱えて座り込みそうな衝動に駆られつつ、ロイは二人に指示を出した。
「ホ−クアイ中尉、軍部内に非難警告を!!ハボック少尉は私に付いて来い!!」
「はっ!!」
「俺も行くんすか?!」
「今回標的は二名だ。私一人では手に追えん」
にやりと笑う上官を見て、
(俺、無事にいられるかな・・・)
確保より自分の身を案ずるハボックであった。






所々に壊されながらもなんとか人一人通れるような崩れた廊下をロイとハボックは駆け進む。
「一応は被害が大きくならないように思っているんだな、二人とも」
「破壊しているだけで十分被害出てるんすけど」
「お?どうやら鋼のがアルフォンス君を追っているようだね」
「どうしてわかるんすか?」
「これを見たまえ」
そう言ってロイが指した壁には、二つの見たことも無い扉が出来上がっていた。
「・・・・・・なんすか?これ」
「こっちが鋼の作品、こっちがアルフォンス君作品だな。ふむ・・・アルフォンス君のは
なかなかセンスがいいな。このまま使っても良い位だ」
「使えませんって!!ここから先は外でしょう!!!ってかなんでコレを見て追う側と
追われる側がわかるんすか?!」
「練成するときの癖と練成された時間の経過でなんとなくわかる」
(・・・・・・・バケモンですか、あんた)
思わず口に出して突っ込みそうになって、慌ててハボックは心の中だけに押し止める。
ロイは、扉をそっと開けて外の様子をうかがった。
「いたぞ」
「本当っすか」
ロイに続いてハボックも一緒に外の様子を覗き込んだ。
そこには・・・


裏庭の噴水を挟んでエドワ−ドとアルフォンスが睨みあっていた。



「なにしてるんですかね」
「シッ!!何か会話しているようだ」



確保しに出て行こうとするハボックを止め、ロイは会話に耳を傾けた。





「だいたいねぇ!!!毎回毎回兄さんは我侭すぎるんだよ!!!」
「うるせぇ!!!いくら実の弟だろうが譲れないもんがあるんだよ!!!」
「それなら僕だって実の兄に譲れないものがあったって変じゃないでしょう?!」
「なにぃ?!」



「たまには僕だってロイ兄さんと会話したっていいじゃない!!!!!」





「・・・・・・・やぁっぱ原因は大佐っすか」
「やかましい」






「会話だけならまだしもお前ら許せねぇことしてただろ!!!」





「何したんすか?大佐」
「さぁ・・・思いつくものがさっぱりだ」






「ロイとお前キスしてたじゃねぇか!!!!!」






「・・・・・どこに?」
「頬に、だ・・・挨拶はそうだろう?」
「挨拶ねぇ・・・」






「いいじゃないそれくらい!!!兄さんはいっつもキスしてもらってんでしょ?」
「よくねぇ!!!」
「僕だってロイ兄さんにキスしてもらいたかったんだもん!!!」
「なんだってぇ!!!!!」






「拗れてますよ?」
「そのようだな」
「嬉しそうっすね」
「愛されてるなと思ってな」
「そう思うなら確保してください」
カチリと音がした方に目を向けると、銃を構えたホ−クアイがそこに佇んでいた。


「・・・兄弟はここにあった木に飛び移りながら降りたらしいが・・・」
「折れてますね。エドワ−ド君が反動で切り裂いたんでしょう」
「だから」
「大佐なら大丈夫でしょう」
「・・・・・・・・・はいはい」

観念するようにロイは扉の外に飛び出した。


「大佐!!!ここ3階・・・?!」


ハボックが驚きながら外に顔を出すと、


何事も無かったように軽々と地面に着地する上官の姿が目に映った。



「・・・・・・本当にバケモンっすね・・・・・」
「さ、執務室に戻りましょう」
「え?あのままでいいんすか?」
「兄の取り合いなんて弟同士がよくやることでしょう?」
「そりゃそうっすね」
そう言いながら優しい笑みをするホ−クアイとハボックの二人であった。





「「大佐?!」」
突然空から現れたロイに、驚愕した二人を彼は厳しい目で見つめた。
「全く・・・なにをしているんだね?二人とも」
「・・・・・・・済みません」
「・・・・・・・(むすぅ)」
ここでも対照的な態度の兄弟に、ロイは思わず吹き出した。
「ぷっ・・・・・しょうのない子達だね、まったく」
「ロイ・・・」
「ロイ兄さん・・・」
大佐からロイに戻った彼に安心したような二人にロイは優しく質問する。
「エド、アルにキスすることがそんなにいけないことなのかい?」
「だって!!」
「・・・・・家族として親しみを込めていても?」
「え?」
「そうだよ。大事な弟だからね、彼は」
にっこり微笑んでるロイにアルフォンスは嬉しそうに頬を掻いている。
「それに、そのうち義弟となるのに大事にしてはいけないのかな?」
「!?///////」
かあぁ!!!!と赤くなるエドワ−ドにロイとアルフォンスは計画が成功したような顔を向けた。

「!!!!!!お前ら、まさか!!!!!!」

「たまには俺に我侭言ってもいいんだからな?アル」
「わぁいvv大好きロイ兄さん」
「おい!!!お前ら!!!!」
「でもエドほどは勘弁してくれ」
「あそこまでロイ兄さん馬鹿じゃないよ・・・僕(笑)」
「そうだな」
「なにアルばっかり甘やかしてんだよ!!!ロイ!!!」
「そんなことないよ?兄さんにだって相当ロイ兄さん甘やかしてるよ」
「だあぁ!!!」
「俺も相当君達に甘えているけどな」


「「え?」」



「ついつい甘やかしちゃうんだよ」



ほんのり頬を染めたロイを兄弟は驚いた顔を見せ、そして嬉しそうに微笑んだ。










「さて、これを元に戻そうか?二人とも」
「「・・・・・・・・・・ハイ」」
目の前の崩壊された東方司令部の建物の前で途方にくれた兄弟が
すごすごと修復作業する姿を見ながら、ハボックは煙草を吹かしながらロイの傍に
近寄ってきた。
「オ−−−、直し始めましたか」
「ハボック、皆は」
「無事だったスペ−ス利用して作業していますよ」
「そうか」
「大佐、この資料だけ目を通して欲しいのですが」
「さすがホ−クアイ中尉。目を通すだけで良いものを持ってきたね」
「・・・そのように書類の内容をわかっているなら早急に机の上の仕事を片付けることを願います」
苦笑するロイにため息を付きながら、ホ−クアイはロイに書類の束を渡す。
「ま、今回は思わぬ休憩時間を貰えたからね。さっさと片付けるよ」
「休憩時間・・・・・・・っすか」
「大人しいもんだろう?あのくらいで済んだんだ」
「あのくらいって・・・・・・」
どう見ても半分崩壊していた建物を思い出し、ハボックは煙草を落としそうになる。


「周りの建物を含め半径2kmまで被害を出さなかったんだ。大人しいぞ?」
「・・・・・・・それ、誰がやった喧嘩ですか」
「私と姉の姉弟喧嘩」
「・・・・・・・・・絶対ここで姉弟喧嘩せんでください」
やっぱバケモンだ・・・と思い切実に頼みながら煙を出すハボックに苦笑しながらロイは
肩を叩いた。
「と、いうわけで私はこれから仕事に戻る。しっかり監視しておけよ?」
「えぇ?!俺だけっすか?!」
「私は大佐の監視役ですので」
「・・・・・・・だそうだ。書類が溜まっているのでね」
「・・・・・・・・・・・溜めたんでしょうが」
ボッ
「うわちっ!!!」
咥えていた煙草が灰に変わり、ハボックは驚愕な顔をロイに向けると、
にっこり笑った上官の顔がそこにあった。

「じゃ、あとを頼んだぞ?」
「ハイ・・・・・(いつ指を鳴らしたんだ?!)」

ホ−クアイと共に建物へと戻っていくその後姿をぼうっと見送りながら


(・・・・・・俺、これからも身が持つのかな・・・・・・・)



と、上官の隠された能力のあまりの高さを本日身をもって知ったハボックは
明日からのわが身を思わずにはいられなかった。

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あとがき

エドとアルの暴走を書きますねvvと約束したのに・・・したのにぃ!!
気が付いたら「大佐の能力お披露目」となっていった(笑)
ごめんなさい質流様・・・こんなんでリク、クリアしてますか?(してないしてない)
ハボは今回精神的ダメ−ジに持っていきました(笑)